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74話 ラスクの街のクリスマス!?前編

クリスマスの話が読んでみたい! エロそうな人妻からリクエストがあったので書いてみました。

思ったよりも長くなってしまったので3話に分けました。

「え、この世界にも、クリスマスってあるの?」


 クリスマスも差し迫った冬のある日。

 何時もの様に次郎衛門、フィリア、メルの3人で夕食後のくつろぎタイム中にクリスマスの事が話題に出たのである。

 ちなみにアイリィはお腹いっぱいで既にソファでうたた寝している。

 ピコや幽霊ちゃんはメイド的な立場なのでこの時間は夕食の片付けをしてたりする。


「ありますよ。

 今年一年を無事に過ごせた事を神様に感謝する日です。

 家族や恋人などと過ごすのが一般的だと思います。

 ジローさんの居た世界のクリスマスはどんな感じなんですか?」

「元々はとある宗教の開祖の生誕を祝う日で、やってる事はこっちの世界と殆ど同じだったな」


 メルの質問に答える次郎衛門。


「だったって事は、今は違うんですか?」

「その昔、黒須三太っていう男がいたらしいんだ。

 ああ。苗字と名がこっちとは逆だからこっちの世界風にいうのなら、サンタ・クロスだな。

 その男がクリスマスイヴに恋人に振られたんだな。

 その理由がまた酷くてさ。

 太すぎる眉毛はやっぱ無理ってな事らしい。

 そんな目に遭った三太は、翌日のクリスマスの日に世の幸せそうなリア充カップルを襲撃しまくったんだよな。

 でもさ。

 その行動が非リア充達の共感を呼んだんだ!

 共に立ち上がる者が続出してさ。

 自分達の行為を聖戦と呼び、リア充達を駆逐していったんだ。

 だが、リア充達もやられっ放しじゃなかった。

 愛しい恋人との幸せを守る為に、悲壮なまでの決意で徹底抗戦を選んだんだ。

 だがしかし。

 リア充を妬む非リア充達の怨念をも言うべきパワー。

 その絶望的なまでのパワーの前に一人また一人と力尽き―――――

 痛!!!」


 何だか急に壮大なストーリーの物語を語りだした次郎衛門の頭をフィリアが思いっきり引っぱたいたのだ。


「メルに嘘教えてるんじゃないわよ!

 黒須三太なんて男の話は聞いた事もないわ!」

「う、嘘だったんですか!?

 思わず真剣に聞き入っちゃったじゃないですか!」

「語るのに2時間くらいは掛かる壮大なストーリーを頑張って考えたのに台無しじゃん!

 フィリアたんの意地悪!」


 話を真に受けていたメルが非難がましい目で次郎衛門を睨む。

 だが、次郎衛門はそんな視線を気にする素振りは全く無い。

 折角考えた法螺話を最後まで語れなかった事に悔しさを滲ませていた。

 語るのに2時間も掛かるような話を、ほんの数十秒で終わらせられてしまったら悔しい気持ちも分らないでもないが、聞いたとしても全く役に立つ事はなさそうなので、フィリアの判断は正しかったりする。


「見も蓋もない事を言うと、俺の生まれたところのクリスマスはあれだな。

 彼氏彼女が互いにプレゼント贈りあって、盛り上がって、乳くりあって、ってそんな感じだな。

 どうせこっちの世界も建前はともかく、実態は似たようなもんなんだろ?」

 

 本当に見も蓋もない言い方である。

 間違ってると言い切れないし、正しいとも断言出来ない。

 いや、ここ最近は傾向は独身成人の7割近くが一人で過ごすらしいのでどちらかと言えば間違っているのかもしれない。


「ちょっとロマンティックな言い方して下さいよ!」

「俺ほどロマンに溢れた男もそうは居ないぞ?

 ファンタジーというロマンを求めて、異世界にやってきたくらいだしな!」


 確かに異世界に渡るという行為は、冒険心に富んだロマン溢れる行為と言えなくもない。

 だが、この男の口から聞かされると、途端に胡散臭く感じるのは気のせいなのだろうか。

 否。

 気のせいではない。


「はいはい。

 分りましたよ。

 でも、彼氏かぁ……

 憧れるな~

 クリスマスまでには欲しかったけど、今年は無理そうですね」

「え?

 まじで?

 大胆発言だな。

 いや、こっちの世界では普通なのか?」

「そうですかね?

 私くらいの年頃の女の子なら、そんなに変でもないと思いますよ?

 早いと16~17歳位で結婚しちゃう人も居ますからね」


 メルの彼氏欲しい発言に驚愕の表情でうろたえる次郎衛門。

 普段の次郎衛門からは全く想像出来ないが初心さに関してはひょっとしたらフィリアといい勝負なのかも知れない。

 そんな次郎衛門に別にそれ程変な事ではないと告げるメル。


「そうなのか。

 俺で良ければ、今年と言わず今すぐにでも協力する事に(やぶさ)かでもないんだが」

「え?

 そ、それってどういう意味…… 」


 今年は諦めたよう雰囲気のメルに次郎衛門がいきなり告白にも取る事が出来る衝撃発言を繰り出す。

 同時に一緒に話に加わっていたフィリアから一瞬だけピシっと音が聞こえた気がするが、次郎衛門は気にした様子も無い。


「どういう意味も何もそのままの意味だ。

 嫌か?」


 次郎衛門はツカツカとメルの元へ歩み寄る。

 そしてメルへとそっと手を伸ばす。

 メルはビクリと体を震わせ顔を真っ赤にして慌てだした。

 そして直ぐ傍のフィリアからは表面上は平静を保っている風ではあるが、尋常じゃないプレッシャーが放たれている。

 だが、マイペースな次郎衛門は気にしてなさそうだし、早くもピンクな思考に染まっているメルにも届いてないっぽい。

 普通こういう展開になった場合、周囲の人間は邪魔をするか、気を利かせて立ち去ったりするのだろうが、フィリアの無駄に高いプライドと年頃の女性としての好奇心が絶妙な組み合わさり方をした結果、フィリアは動くに動けなくなってしまいプレッシャーのみを延々と吐き出し続けるマーライオンになってしまったようだ。


「あの、その、嫌とかじゃなくてですね。

 わ、私にも心の準備が」


 とか何とかメルは言っているものの、既にちゃっかり目を閉じちゃったりしてキスする体勢に入っている辺り、心の準備は早さには定評のある暴飲暴食亭の出前よりも早い速度で完了したらしい。

 そして次郎衛門はメルに熱い口づけを交わ―――――さずにスカートを捲り上げ、パンツに手を掛ける。


「ちょ!?

 ジローさん!?

 普通は先ずキスだと思います!

 そっちはまだ心の準備も体の準備も出来てません!

 今日はシャワーも浴びてないですし!?」


 余りにも予想外の次郎衛門の凶行にテンパって妙な事を口走っちゃうメル。

 ひょっとしてシャワーを浴びてたら、次郎衛門の凶行も受け入れちゃったりするのではなかろうかと思わなくもないが、必死にパンツを死守しているところから察するに、自分で何を言っているのか自覚はしてないのだろう。

 ここで遂にマーライオンが介入の切っ掛けを掴む。

 次郎衛門の後頭部を引っ叩く。


「私の目の前で従業員をレイプしようとするだなんて良い度胸ね?

 死ぬ覚悟は出来てるのかしら?」

「いやいやいや!?

 何でレイパー扱いされてんの!?

 訳わからんぞ?」

「ハァ!? クリスマスまでに彼氏欲しかったて話だったでしょうが!

 キスくらいならともかく、力づくでパンツ引きずり降ろすとかあり得ないでしょうが!」

「え? クリ○○ス舐めて欲しいって言ったのかと思ったわ」

「ちょ!?

 どんな聞き間違いなんですか!

 ジローさんの欲望丸出し過ぎますよ!」 

「チッ。年頃の女の子なら普通とか言うから、異世界すげーなって思ったのにがっかりだわ」


 前言撤回。


 次郎衛門は全然初心ではなかった様だ。

 むしろ欲望全開のゲスであった。

 何をどうしたらそんな聞き間違いを起こすのかと、小一時間程説教せねばならないくらいゲスだった。


「大体そんなにエッチな事したいんだったら、ピコさんの所に行けば良いじゃないですか。

 普段からジローさんになら抱かれても良いって公言してるんですし」

「ピコって見た目だけは美少女だが、実際の性別謎なんだよ。

 しかも体が超硬いんだぞ?

 アイツの霊峰富士は乳首どころか乳房までカッチカチだし、武田さんとこの信玄君もびっくりなくらい動かざる事山の如しだっちゅーの!

 エロい事しても100%気持ち良くないって断言出来るわ!」


 流石の次郎衛門もナ○ック星人並みに性別が謎なピコは性的な対象にはならないらしい。


「でもまぁ、こっちにもクリスマスがあるんならさ。

 当日は皆でケーキでも食べてパーティーでもしようぜ」

「ごめんなさい。

 クリスマスは従業員の皆さんと暴飲暴食亭でパーティーする予定なんですよ」


 次郎衛門が折角クリスマスがあるのだからと、パーティーの開催を提案してみるがメルはあっさりと断る。


「……え?

 従業員とパーティーって俺誘われてないんだけど?」

「誘ってないですもん」

「あれ?

 俺一応経営者だよね?

 なんでハブられてんの?

 事と次第によっちゃ泣くよ?

 号泣しちゃうよ?」


 何故か経営者だけが、招待されていないという驚愕の事実。

 次郎衛門は混乱気味で既に若干涙目だ。

  

「ジローさんはフィリアさんと2人で過ごすと思ってお邪魔じゃないように外で過ごそうって事になったんですよ」

「ああ、はいはいはい!

 そういう事ね!

 OKOK!

 そういった気遣いは大歓迎だ!

 それじゃ、フィリアたん」

「却下よ」

「いや、まだ何も言ってないじゃん」

「ジローと二人きりだなんてどんな罰ゲームなのよ。

 それに私とアイリィは、サラと一緒に孤児院でやるパーティーに誘われてるのよ」

「……え?

 俺……

 誘われてないよ?」

「あっそ。

 ちなみにパンダロンはメアリーと過ごすでしょうし、辺境伯は自分の派閥の貴族共を招いて盛大にパーティーするらしいわよ。

 誰にも誘って貰えなかったなんて、実はあんたって嫌われてるんじゃない? 

 精々一人寂しくクリボッチを堪能しとけば?」

「お、俺が嫌われ…… てる?

 そ、そんな馬鹿な……」


 自分だけがクリスマスに予定がないという現実を突き付けられた次郎衛門。

 覚束ない足取りで屋敷から出ていった。

 そして帰宅する事はなかった。

 翌日、帰宅しなかった次郎衛門を心配し探しに出たアイリィも姿を消し、2人の消息は絶ったのであった。


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