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72話 お手軽だな!?

 無事に自宅へと帰り着いた次郎衛門達。


「お帰りなさいって、何だか凄く大所帯になってますね」

「ただいま。

 メル、幽霊ちゃん。

 こいつ等は従業員だな、ってか、こんなに一気に増えると思ってなかったから従業員寮の事は全く考えてなかったわ。

 どうしたもんかな」


 出迎えてくれたメルや幽霊ちゃんに挨拶をすると同時に従業員達の紹介する次郎衛門。

 だが、ここに来て従業員達の住む処がまだ確保出来ていない事に気が付いたっぽい。

 流石に自分の都合で連れて来ておいて、彼等の寝床がないと言うのは傍若無人な次郎衛門でも申し訳なく思うらしい。


「あら、私達ならば庭にテントでも構いませんわよ?

 スケルトン時代にはずっとジメジメしているカビくさい坑道で生活してましたから。

 あ、でもお風呂は屋敷の物を使っても構いませんわよね?」

「お、おう。

 あ、でもお前等の体は元が植物だからな。

 風呂入るのは構わんが、キチンと乾かさないと腐ったりカビたりすると思うから気を付けろよ」

「カビ!?

 そ、それは嫌ですわね。

 気を付けますわ」

「そうしてくれ。

 んじゃ、テント代渡すから従業員達はさっそくテント買って寝床作ってくれな」


 従業員達はテント代を受け取ると、テントを買い出し組と敷地内の整地組とに別れてテキパキと行動しだす。この様子なら放って置いても、勝手に自分達で上手い事やりそうである。


「んじゃ、俺はもう一つの方の問題に取り組んでみるか」

「問題って何よ?」

「これだよ。これ」

 

 次郎衛門の問題という言葉に、フィリアが反応する。

 そんなフィリアに対して、アイテムボックスから金属生命体の核を取り出して見せる次郎衛門。

 要するに、金属生命体を復活させてやろうって事らしい。


「俺達は工房に籠るから、何かあったら呼びに来てくれ」


 次郎衛門はメルにそう告げると工房へと向かう。


「さて、金属生命体よ。

 俺の声が聞こえるか?

 聞こえたのなら返事してくれ」

(聞こえます。マイマスター)

「俺との会話は普通に出来るみたいだな。ってか、マスター?」

(私はマスターに命を救われたのです。故に私は絶対服従を誓おうと決めたのです)

「いや、その理屈はおかしいだろ?

 大体お前を殺そうとしたのも俺なんだぞ!?」

「そうよ!

 どうせ服従を誓うなら、そんなゲスな男じゃなく私に誓いなさいよ!」


 確かに次郎衛門は金属生命体の命を助けたのかも知れない。

 しかしである。

 殺そうとしたのもまた次郎衛門なのである。

 次郎衛門によるマッチポンプとも言える訳で、こんなので絶対服従を誓われた日にはニコポナデポも真っ青なチョロインと言わざるを得ない。


(勿論フィリア様にも全霊をもって仕えます。

 こうしてマスター達とコミュニケーションを行えている今だからこそ。

 私は痛感しています。

 この星に落ちてから今までの私は暗い洞窟に引きこもり、ただ生命を維持してしていただけだったのだと。

 私は感謝しているのです。

 再び生きる機会を与えてくれた事を)

「だからお礼に仕えるってか?」

(その通りです)

「ま、お前がそうしたいってのなら、好きにすれば良いんじゃね」


 結局、次郎衛門は金属生命体の主張を受け入れる。

 よくよく考えてみなくても、世間には金属生命体は次郎衛門が作り出したと言う事にするのだ。

 実は都合の良い展開だったと思い至った為らしい。


(しかし仕えると言ったものの、この状態では意志疎通の出来る金の玉、略して金玉でしかありません)

「うぉぃ!

 いきなり下ネタぶっ込んでくるんじゃねーよ!

 お前ってもっとお堅いキャラだと思ってたわ!

 金属だけに!」


 今時酔っぱらったおっさんでも言わないような金属生命体の下ネタに意表を突かれた感のあった次郎衛門であるが、咄嗟にちょっと上手い事を言って返している辺り、女子力ならぬおっさん力では負けてなさそうである。


(時にユーモアを交える事で円滑にコミュニケーションを図れるのではないかと思ったのですが。どうやら失敗だったようですね。HAHAHA!) 

「お前、初めて会話した頃と比べてめっちゃ流暢に喋るようになったな……

 それで復活する方法ってあったりするのか?」

(あの時は会話自体が久しぶりでしたからね。

 液状化した私のボディもあるなら大気中に漂う魔力を吸収し続ければ、100年程で復活出来るかと思われます)

「それって、俺は寿命で確実に死んでるんじゃね?」

「寿命は大丈夫だと思うわよ。

 前にも言ったと思うけど、この世界の人間は魔力が多い程長生きするから。

 あんたの魔力なら200年以上は生きるんじゃないかしら?」

「まじで?」

「本気と書いてマジよ」


 どこぞの烈風隊の言う通り、この世界の人間は魔力が多い程長生きする。

 長生きすると言ってもAランクの魔力でも150歳位で死ぬっぽいので、一般人にはほとんど関係のない話だったりする。

 だが、次郎衛門に関しては魔力が桁違いだ。

 フィリアの見立てによれば、次郎衛門の寿命は最低200年、まだまだ成長限界が来ていないっぽいので、恐らくまだ寿命は延びるだろうと言う事らしい。

 つくづく人の範疇から外れまくった男である。


「っと、話題がずれたな。

 ボディってこれだろ?

 こうやって見てみると何か経験値がっぽりなモンスターっぽいよな」


 次郎衛門は何やらブツブツと呟きながら金たらいにデロデロとしたボディだった物を注ぎ込む。

 そしてその中に核も放り込む。


(やはり魔力が足りませんね。

 マスター、申し訳ないのですが、魔力ポーションを持っていたら掛けて欲しいのです)

「ああ。あるぞ? ってかポーションで魔力補充出来るのかよ!

 お手軽だな!

 何で100年掛かるとか言ったんだよ!」


 確かに金属生命体も生物である以上、ポーションが効いても可笑しくはないのだが、見た目が生物っぽくないので次郎衛門も失念していたらしい。


(おお。旨い…… 五臓六腑に染み渡る……)

「それは良かったな!

 どうみてもお前には五臓六腑は見当たらないけどな!」


 何だかんだと文句を言いつつも売ればそれなりの金額になる貴重な魔力ポーションを惜しみなく追加していく。

 どれだけ魔力ポーションを注ぎ込んだのか把握すら出来なくなった頃、漸くその時が訪れた。

 金属生命体は核を覆うようにウネウネと動きだし変形していく。

 そして数十秒後。

 金属生命体は、次郎衛門そっくりに変形したのであった。

 

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