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5話 ギルドへ行こう!?

「いやー、済まないね。

 最近森に怪しい人物が居るとの目撃報告が多くてね。

 そんなピリピリしてる時に、不審者そのものな、ジローラモ君が来たもんだから、つい…… ね」


 少しだけ申し訳なさそうに謝る守衛。

 さりげなく次郎衛門の名前を間違ってる辺り、あまり反省はしていないのかも知れないが。


「次郎衛門だっての!

 誰がナンパなイタリア人だ!

 大体ついってなんだよ」


 なんとか必死に誤解を解いた次郎衛門だったが、異世界にまできて不審者扱いされたのがちょっとショックだったらしい。

 若干ふてくされ気味だ。


「ジロー…… モン君の淀んだ目を見たら、思わず犯人はコイツだ!

 って確信してしまったんだ。一体何の犯人かは謎だがね。ハッハッハ!」


 あまり反省してないどころか、全く反していないっぽい。

 まぁ、地球というか、日本でも今時こんな名前の者はいない。

 異世界では、尚更馴染みがない筈なので、守衛が上手く覚えられなくても仕方ないという面はあるのかも知れないが。


「誰が淀んだ目だっての!

 ハァ…… もう良いよ。

 名前も言いづらいならジローと呼んでくれ」


 疲れた表情で言う次郎衛門。

 隣では、そんな次郎衛門を見てフィリアが笑い転げている。


「そうか、助かるよ、ジロー君。

 それで君達は転移者のようだが、これからどうするつもりなんだい?」

「とりあえず冒険者ギルドってのに、加入してみようと思う。

 身分証明も欲しいし、いつまでも無収入って訳にもいかないしな」

「そうね。ジロー、さっさと登録に向かいましょ」

「フィリアたんは、今まで次郎衛門て呼んでくれてたじゃん。今まで通り次郎衛門って呼んでくれよ」


 次郎衛門は意外と自分の名前に愛着があるらしい。


「うっさいわね。ずっと呼びづらいって思ってたのよ。

 これからあんたの呼び方はジローで決定よ。」


 次郎衛門の愛着など一蹴するフィリアだった。

 ゴーイングマイウェイな女神である。


「ハッハッハ。中々息の合ってるコンビのようだね。

 それは冒険者としても、とても重要な事だよ。

 これは期待しても良いかもしれないね」

「まあ、夫婦だからな」

「夫婦じゃないわよ! いい加減にしないと殺すわよ!」

「フィリアお…… グフ……」


 次郎衛門が更に何か言おうとした瞬間。

 フィリアの拳が次郎衛門のボディに突き刺さった。


「フィリアお? おって何?

 アンタ今何言おうとしたの? ほんとに死にたいの?」

 

 顔は笑っているが、フィリアの目がやばい。

 上手く言葉に出来ないがまじやばい。

 お子様なら泣いてるかも知れない。

 

「ごめ…… ん…… ガフ……」


 それだけ言うと力尽きてぐったりする次郎衛門。

 そんな次郎衛門を引きずってギルドに向かうフィリア。


「ジロー君も私と同じく尻に敷かれるタイプなのかね」


 次郎衛門達を見送りつつも、家庭で、嫁に頭の上がらない己の現状を、次郎衛門の姿と重ねあわせる守衛なのであった。



 ◆◆◆◆


 冒険者ギルドの敷地はかなり広く、建物も立派で頑丈なものだった。

 辺境の街という事もあって、有事に対応できるようにする為だったり、冒険者達の訓練用の施設が併設されていたりするからである。

 まあ、この辺はテンプレ通りといえる。

 次郎衛門とフィリアが、ギルドに入っていくと、昼過ぎという時間帯のせいなのか、元々冒険者の数が少ないのかは分からないが、閑散とした様子で、受付嬢もカウンターに1人いるだけだった。

 そんな受付嬢を見て、次郎衛門の表情が驚愕に染まる。

 そして何やら小刻みに震えだす。

 唐突に腹痛にでも襲われたのだろうか?

 いや、違う。

 何故なら、その表情は歓喜に打ち震えていたのだ。


「お……おおおおおおお」


 どっかの超野菜の人ばりに呻きだし、なんだか金色のオーラも見えそうだ。


「あ…… この馬鹿!

 そこの受付の娘!

 早く逃げなさい!

 餌食になるわよ!!」


 フィリアが事の次第に気がつき警告を飛ばす。

 だが、もう遅い。

 次郎衛門という名の黒髪の獣。

 その獣は既に受付嬢をその射程に収めていたのだ。


「うひゃっほーい!

 ケモミミじゃぁぁぁ!

 もふもふ天国じゃぁぁ!!」


 なでる。

 ナデル。

 撫でる。

 ただ只管に。

 無心に撫で続ける次郎衛門。

 次郎衛門が、フィリアに殴られ理性を取り戻した時。

 目の前には恐怖に怯えケモミミをペタンと伏せ、尻尾を丸めて泣きじゃくる受付嬢の姿があった。

 ちなみに犬の獣人らしい。


「あー。そのー。ごめん!

 俺の世界って獣人って居なかったからさ。

 憧れの獣人見たら舞い上がっちゃってさ」


 フィリアによって、床に正座させれながら、謝る次郎衛門。

 でもその内心は、そんな怯えた姿も可愛いな。

 などと、考えてたりもゲス野郎である。


「あんたって本当にゲスね。死ねば良いのに」


 汚物を見るような目で次郎衛門を見るフィリア。

 そのフィリアの影で、怯えた様子で次郎衛門の様子を伺う受付嬢。


「ジローラモさん達って転移者の方なんでよね?

 もう良いです。かなり怖かったですけど、転移者の人は偶にそういう行動取る人もいるって話しですし……

 でも、もうしないでくださいよ?」


 まだ怯えた表情をしているというのに、何とか笑顔を作って許してくれるこの娘はかなり良い娘であるに違いない。

 まぁ、ちゃっかり次郎衛門の名前は間違っているが。


「申し訳ない…… 後、名前言いづらいならジローって呼んでくれ」


 本当に反省したのかは謎であるが、表面上は神妙な顔で言う次郎衛門。

 まぁ、この男の事だから、そこまで反省してないと思う。

 

「はい。分かりました。

 申し送れましたが受付嬢のサラと申します。

 それでジローさん達は、今日は冒険者ギルドに、どのような御用なのでしょうか?」


 流石はプロの受付嬢。

 心をサクッと切り替えると、完璧な営業スマイルで、次郎衛門に問いかけるサラなのであった。



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