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65話 突貫!?

「私達が金属生命体に殺されたのは、この先ですわ」

「そうか。

 いよいよ本命の登場って訳だな。

 お前達は、一度奴に殺されてるんだろ?

 無理に着いて来なくても良かったんだぞ?」


 エリザベート達を気遣う次郎衛門。

 これは別に優しさから来た言葉という訳ではない。

 単純に以前に完敗している彼等では、居ても大した役には立たないだろうという判断から来る言葉だ。


「そうも行きませんわ。

 何せここで貴方が死んでしまわれたら、折角私達の心に灯った希望の灯が消えてしまいますもの」

「そっか。

 まぁ、そこまで言うのならこれ以上は言わんけど、どうやら金属生命体のサイズがお前達から聞いたのと随分と違うみたいなんだよな。

 お前達が戦った時って確か3mくらいだったんだろ?」

「ええ。それくらいだった筈ですわ」

「うーむ。随分育ったみたいだなぁ。

 何処までが体なのかハッキリと分らんが、多分全長で20mくらいはあるぞ?」

「私達が行っても足手纏いにしかなりませんわね!

 私達は御武運をここでお祈りしておきますわ!」


 次郎衛門の育って20mくらいある発言に、神速の反応で前言を撤回するエリザベート達。

 既に綺麗に整列し、敬礼のポーズで見送る気満々である。

 まぁ、相手が3m時ですら歯が立たなかったというのに、6倍に成長しちゃってますとか言われてしまった彼等の気持ちも分らないでもない。

 だが、それにしても清々しいまでの手の平の返しっぷりである。


「俺もここで待機って訳には……

 いかないんだろうな」

「俺達は別に構わんけど立場上、無理なのか。

 おっさんよりも強い筈のこいつ等がこの様子って事は、居ても役には立たなさそうだけどな。

 死なれると寝覚め悪いから死ぬなよ?」


 既に一歩も動く気のないエリザベート達を羨ましそうに見つめながら呟くパンダロン。

 そんなパンダロンを、ちょっと憐れみを込めた目で見ながらも激励する次郎衛門。


「それじゃ、気を取り直して鉱山の主の姿を拝みにいきますか!」


 エリザベート達に見送られながら進む次郎衛門達なのだった。


 

 エリザベート達と別れて10分ほど歩いた頃だろうか。

 急に坑道が広くなり始める。

 坑道はその後も広がり続け、やがて広大な空間が開けた。

 直径50~60m程の半円形の空間。

 どうやら、ここが坑道の最奥であり、同時に金属生命体の住処であるらしい。

 その中心部分には。

 鈍く輝く巨大な人型のような物体。

 どうやら、この存在こそが、鉱山の主。

 金属生命体で間違いなさそうだ。


「あれで間違いなさそうだな。

 フィリアたん鑑定を頼む」

 

 次郎衛門に頼まれ、フィリアが鑑定魔法を掛ける。

 その鑑定結果がこれである。



 金属生命体


 ランクS


 ドルアーク王国の鉱山に突如現れた謎の生命体。

 見えているのは外郭部分。

 中心部には本体が居る。

 中心部に近づく程に、高純度の希少金属になっている。

 鈍重そうな見た目とは裏腹に、侮れない身体能力を持っている。

 特に防御力と攻撃力は破格の一言に尽きる。

 本体は遥か天空より不慮の事故によってこの星に落下した高い知能を持つ金属生命体。

 宇宙人ともいえる存在。

 その構成はナノマシンの集合体に近いんじゃよ。

 今回はマジでリスキーな相手なのじゃ。

 気をつけるんじゃぞい!



「遂に宇宙人まで出てきちゃったのか。

 ファンタジーな世界じゃなかったのかよ。

 何処の誰にとは言わないが、ファンタジーって言っとけば何をしても許されると思ってそうな気配あるよな」

「あんたがそれを言うなって思うのは私だけなのかしら?」


 一体誰に対して言ってるのかさっぱり分らないが、次郎衛門の言っている事は理解出来なくもない。

 だが、既に出しちゃったものは今更どうにもならないので諦めて欲しい。

 そしてフィリアの意見は恐らく登場人物の全ての心の声を代弁している。

 この意見に関しては頷くしかなさそうである。


「とりま、やりますか!

 おっさんは獣化して離れた位置で待機だな。

 フィリアたんは魔法で攻撃。

 アイリィたんはフィリアたんを守ってやってくれ。

 俺は全力でぶん殴ってみる。

 何か意見はあるか?」

「ないわ。

 精々死なない様に気を付けなさい」

「ああ。任せとけ!

 んじゃ、いざ開戦だ!」


 開戦の掛け声共にピコハンを手に金属生命体に向かって疾走する次郎衛門。

 同時にフィリアがオーク戦で見せた閃光魔法を撃ち込む。

 金属生命体も奇襲には気が付いた様ではあるが、その巨体では回避しようがなく閃光の直撃を受ける。

 だが、オークを一瞬で葬った閃光はほんのちょっぴりだけ金属生命体の表面を削る事しか出来なかった。


「ホントに堅いわね。

 人間じゃ、歯が立たないのも分るわね」


 不愉快そうに吐き捨てるフィリア。

 次郎衛門が異常な成長を遂げているのと同様にフィリアも成長している。

 既に魔力だけに関してならA+下手したらSに届こうかという高みにまで達しているのだ。

 そのフィリアの攻撃が大して効かない。

 Sランク任務というのは伊達ではないといったところだろうか。

 だが、フィリアの攻撃が稼いだほんの僅かな時間は無駄ではない。

 次郎衛門は一気に金属生命体に近接。

 隙だらけの足に思いっきりピコハンを叩きつけるべく振りかぶる。


「先ずは一発目突貫!

 うおりゃぁ!」

  

 次郎衛門の裂帛の気合と共に繰り出された一撃。

 激しい金属音を掻き鳴らし、金属生命体に幾条かの小さな亀裂を作った。

 だがしかし。

 金属生命体は巨大な腕を振り下ろして鉄槌のような反撃を繰り出す。

 次郎衛門はそれを読んでいた。

 危なげなくバックステップで回避する。


「げ…… まじかよ。

 本気でぶん殴っても、あれっぽっちしかダメージないのか。

 でもまぁ、全く効かないって訳でもないのか。

 それなら手数で押すまでだ!」


 そう言い放つとヒットアンドアウェイを繰り返しながら、ダメージを与えた足へと攻撃を蓄積させていく。

 フィリアも閃光魔法で次郎衛門を上手くフォロー。

 単純で地味な作業に見えるが、金属生命体の攻撃力は一撃で地面を粉砕する程だ。

 直撃すれば、次郎衛門とて無事では済まないかもしれないと思わせるに充分な威力を誇っている。

 そんなプレッシャーの中で、淡々と確実に金属生命体にダメージを蓄積させていく様は次郎衛門。

 それは力任せだけのの男ではなく、己の命を危険に晒しながらも、幾多の戦場を渡り歩いてきた超一流の戦士である事を物語っていた。


「これでどうだ!」


 ギャキーン!!


 次郎衛門の気合と共に放たれた攻撃。

 その攻撃が遂に金属生命体の左足を砕く。

 片足を失った金属生命体。

 バランスを崩し轟音と共に倒れ込むのであった。


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