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57話 オーク肉祭り開催!?

 ムキ男に強制的に貸しを作ったり、宿屋のお姉さんのフラグが立ったり、折れたり、気を失ったりと、色々あったものの、村の集会所で宴会が始まった。

 オークの群れの件は、やはり村人達も不安に思っていたらしい。

 多くの村人が討伐成功に喜び、この宴に料理や酒を持ち込み、参加しているようである。

 礼を言うべく入れ替わり立ち代りで次郎衛門へと声を掛けてくる。


「ジローラモさん。本当にありがとうございました。

 これで安心して眠れるようになります」

「そりゃ、良かったな。

 でも、一言言っておくぞ?

 俺は次郎衛門だ!

 何でこの世界の人間は、俺の事をナンパなイタリア人呼ばわりしてくるんだよ!」


 既に次郎衛門は、この世界の住人に自分の正式な名前を覚えさせる事を諦めていたのだが、どうしても村の英雄の本名を知りたいという村人達の希望でフルネームを教えたのだ。

 案の定、上手く覚えて貰えずにこのザマである。

 そんな次郎衛門に、どうでも良いといった風情で声を掛けるフィリア。


「グチグチ細かい男ね。

 レイザーラモンでも、良かろうもんでも、大して変わらないじゃないの」

「いや、変わるよ!?

 もんって部分しか合ってないじゃん!

 特に最後の良かろうもんって博多弁だろ?

 何でファンタジー世界で博多弁なんだよ!

 人名ですらないじゃねぇか!」

「五月蝿いわねぇ。

 ギャーギャー喚いてばかりいると、折角の料理が冷めるわよ。

 あら?

 このお肉、獲りたてなのに美味しいわね」


 次郎衛門の必死の抗議もあっさりと聞き流すフィリア。

 オーク肉のステーキを上品に切り分けながら食べている。

 フィリアの言う獲りたて肉とは、勿論オーク肉の事である。

 本来、肉と言うものは、ある程度熟成させた方が旨みが増す。

 今回は流石に熟成する時間はなかったので、そのまま焼いてみたのだが、思いのほか美味しいという有り難い誤算が起きているようだ。


「納得行かねぇが、とりま、食うか。

 確かに美味い。

 こりゃ、オークキングの肉が楽しみになってきたな!」


 納得行かないとか愚痴ってた割には、意外とあっさり御機嫌になる男である。

 そんな次郎衛門の隣ではアイリィが、やはりニコニコと御機嫌な笑顔で、もりもりと肉を食べ続けており、パンダロンは村の男衆と一緒になって酒を呑みまくっていた。


「ハイオークの肉も、独特の歯応えだけど美味いなぁ。

 焼いた肉って言うよりは、噛めば噛むほど味が出るビーフジャーキーとかスルメって感じだけど。

 それじゃ、本日のメインディッシュ!

 オークキングのステーキいっただきまーす!」


 期待に満ちた表情で一気に噛り付く次郎衛門。

 だが―――――

 噛り付いたまま、その動きが停止した。

 ファンタジー作品で、魔物を食べる場合。

 大抵は高位の魔物である程、美味いというのが定番だったりする。

 しかし、この世界では違ったりする。

 つまり何が言いたいのかと言うと。


「何だこれ!?

 すんげーかったいぞ!

 極上のタイヤ食ってる気分だわ」


 ぶっちゃけ超堅いのである。

 活躍出来なかった競走馬の末路を一度位は聞いた事があるだろうか?

 活躍出来なかった競走馬は食用にされてしまうのだが、元々食用に飼育された馬と比べて筋肉が発達している。

 更に脂身もなく堅くて不味いらしい。

 それと同じ理屈だ。

 通常のオークなら、柔らかくて美味い肉なのだが、オークキングの異常に発達した筋肉は尋常じゃなく堅い。

 常人が噛み切るには、難易度が高いので、普通の食用には向かないのだ。

 だが、栄養価は桁違いに高い。

 乾燥させた後に、磨り潰し粉末にしてスープに入れたり、滋養強壮の薬として飲んだりするのが正しい用法なのである。

 だが、そんなオークキングの肉ですら、もっしゃもっしゃ食べるアイリィ。

 ご機嫌である。


「アイリィたんってば、この肉を普通に食えるとかすげーな。

 こういうとこ見てると、やっぱドラゴンなんだなぁって思うよなぁ」


 オークキングの肉を食べるのは諦め、アイリィの食べっぷりに感心しながら呟く次郎衛門。


「そいえばジロー。

 村長あの様子だと、多分、オークの素材拾いに行ったわよ?」


 どうやらフィリアも報告した時の村長の様子をしっかりと観察していた様だ。


「だろうねぇ。

 多分、この宴も俺達の目を逸らす意味もあるんだろうな。

 まぁ、無意味だけど」

「ハァ…… 

 あんたって、ホントに悪知恵だけは働くわね。

 幾ら探しても、オークの素材なんて見つからないのに」

「クハハハ!

 勝手に勘違いした村長の自業自得だろう。

 そろそろ帰って来るんじゃないか?

 っと、噂をすればって奴だな」 


 村長が、


「ジローさん!

 あんた本当にオーク200匹も倒したのか?」

   

 次郎衛門達の元に村長や村長と一緒にオークの死体を捜しに行った連中がやってきて次郎衛門に問いただす。

 村長達には好意的な雰囲気は微塵もない。


「倒したぞ。正確にはオークキング1匹、ハイオーク4匹、普通のオーク188匹だな」

「嘘を吐くな!

 我々は本当に安全になったのかを確認する為に、現場に行ってきたんだ。

 確かに戦った跡らしものはあったが、オークの死体なんて1匹もなかったぞ! オークの数を実際より多く報告して報酬を水増し請求するつもりだろ! この詐欺師共め!」

「安全を確認ね。

 ものは言いようだな。

 討伐の証拠に持ってきた耳は村長も確認しただろう?

 言い掛かりはやめてくれよ」


 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす村長。

 対して次郎衛門はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。


「五月蝿い!

 大体、目撃は村の者もしているが、オークの群れはロイド達しか見ていなかったんだ。

 お前等グルだったんだろう!?

 だからオークの耳も予め準備出来たんだ!

 そうに決まっている!」


 何事かと集まってくる村人には目もくれず怒鳴り続ける村長。

 次郎衛門は相変わらずニヤけたまま口を開く。


「大体、何で現場にオークの死体が無かったらダメなんだ?」

「お前が言ったんだろう!

 全部持って来れなかったと!」

「確かに全部持ってくることは出来そうになかった。

 だから―――――」


 其処まで言うと、一旦言葉を切る次郎衛門。

 そんな次郎衛門の様子に思わずゴクリと唾を飲み込み、次の言葉を待ってしまう村長達及びに村人達。

 場を完全に支配した事を確認した次郎衛門は、一呼吸置き、再び口を開く。


「肉の部分は食ったんだよ」

「へ!?」

「だから、うちの育ち盛りが全部食ったんだよ」


 そう、次郎衛門は全部を回収すると事は出来なかったとは言ったが、素材を置いてきたとは一言も言っていない。

 もしも、村長が持ちきれなかった分はどうしたかと次郎衛門に聞いていれば、素直に食ったと答えただろう。

 だが、其処で村長は欲をかいた。

 聞いたら後で取りにいくと言われる可能性を恐れて、次郎衛門達が宴に参加している間にこっそりと先に素材を確保してしまおうと有りもしない素材をこそこそと獲りに行ったのである。


「クハ!

 クハハハ!

 流石の俺もびっくりだったぞ!

 150匹以上食っちまったのを見せつけられた時は!」

「お肉は別腹!

 全然苦しゅうない!」


 そんな次郎衛門の言葉に胸を張り、自慢げに答えるアイリィ。

 苦しゅうないの使い方が間違っている気もするが、何だか愛らしいし、そこは御愛嬌というものだろう。

 ちなみに、胸を張ったところでその膨らみが強調される事はない。

 幼女なのでペタンコである。


「食った肉以外の素材は、全部俺とフィリアたんのアイテムボックスに保管してあるぞ。

 …… さて、村長。

 一度ならず、二度までも、俺達を、いや、冒険者を馬鹿にしてくれたな。

 しかも、今回は俺達だけじゃなく、ロイド達まで詐欺師扱いしてたよな?」

「いや、その、これは……」


 もはや、言い訳すら出てこない村長。

 そんな村長に村人達が追い討ちを掛け始める。

 

「村長! 二度目とはどういうことだ!?」

「村を救う為に命がけで戦ってくれた人を詐欺師扱いしただと!」


 結局、メルの件も村人全員に知れ渡る事になる。

 村長は村人からの信頼を失い、村長職を追われる事になったのであった。


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