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54話 やっぱり生が好き!?

「挽肉にしてやんよ!

 今日は楽しい挽肉祭りじゃぁ!!」

「ブヒヒヒ!

 たかが4人で何が出来るブヒ!

 女は傷つけずに捕獲するブヒ!」

「ハッ!

 させるかよ!

 嬢ちゃんの護衛任されておいて失敗なんぞした日にゃ、ジローにどんな嫌がらせされるか分ったもんじゃないからな!」


 オークキングの命令にフィリアを捉えるべく動き出すオーク達。

 そのオークの前にパンダロンが立ちふさがる。

 闘気と獣化によって爆発的に上昇したパンダロンの身体能力。

 大剣を振るいオークを蹂躙していく。

 流石にBランク冒険者なだけあって実力は確かな様だ。


「相変わらずスリムパンダな獣化がキモイけど、中々やるじゃない!

 これなら私は魔法に集中出来そうね」


 結構な毒舌を吐きながらも、パンダロンの奮闘振りに関心した様子を見せるフィリア。

 そして自らもオークをなぎ払うべく、精神を集中させる。

 フィリアが掌をかざすと20程の魔法陣が現れ、それと同時に20匹程のオーク達の目の前にも、直径に30cm程の魔法陣が現れる。

 オーク達は眼前に突如現れた魔法陣を何とか振り払おうとするも、その手は魔方陣をすり抜けてしまう。


「アハハハ!

 無駄よ。

 それは照準。

 獲物を逃がさない為のね。

 それじゃ、死になさい」


 無慈悲な宣告と共に、閃光がフィリアの掌の先にある魔法陣からオーク達に貼り付けられた対となるそれぞれの魔法陣目掛けて迸る。

 その魔法陣の先に存在するオークの頭部をも、小気味良い炸裂音と共に吹き飛ばす。

 後に残るは、脳漿を貫かれ、時間差で倒れ伏すオーク達の亡骸であった。


「多少は魔力を取り戻したみたいだけど、今の体で引き出せる魔力出力は本来の10%以下ってところかしら。

 まだまだ先は長そうでうんざりするわ」


 面倒臭そうにため息を吐くフィリアであった。


「手ごわい奴等だブヒ!

 四天王も出る…… ブヒ!?」


 予想外の苦戦に、側近であるハイオークに命令を出そうとしたオークキング。

 だが、その視界の先には、側近であるハイオーク4匹を、たった二人で圧倒する次郎衛門とアイリィの姿があった。


「オラ!

 もいっちょ葬乱ホームラン

 クハハハ!

 大した事ないな!

 この分じゃ、あっさり挽肉祭りも終わっちまいそうだな!」


 ハイオークの棍棒を避け、お返しとばかりにピコハンを振るい、その巨体を容易く吹き飛ばす次郎衛門。

 吹き飛ばされたハイオークは即座に立ち上がる。

 だが、致命傷とまではいかないものの、そのダメージは決して小さいものではなさそうだ。

 たった一人でハイオーク3匹を相手取り、互角以上どころか優勢に戦闘を進める次郎衛門の存在は、最上位種であるオークキングをして強敵と認めざるを得ないものであった。

 これはマズイと、慌ててオークキングが参戦しようとしたその時。


「ブヒィィイィィィ!!!」


 アイリィと対峙していた筈のハイオークの絶叫が響き渡ったのだ。

 何事だと視線を向けるオークキング。

 そこには驚愕の光景があった。

 幼い子供に貼り付かれたハイオークが食われていたのだ。

 生のままである。

 生きたままである。

 丸かじりなのである。

 ハイオークも必死にアイリィを引き剥がそうとしたり、叩き落そうとしているのだが、それらの行動はアイリィに然したる痛痒も感じさせることはなかった。

 結果としてハイオークは、成す術なくアイリィに丸かじりされているのである。


「アイリィたん。

 豚肉は生で食べちゃいけません!

 お腹壊しちゃうぞ!」


 何だか微妙にずれた注意をする次郎衛門。

 確かに豚肉は生で食べると、食中毒の危険がある。

 だが、アイリィは人の姿をとってはいるが、ドラゴンなので別に生で食べても大丈夫な気はする。

 でもまぁ、論点はそこなのかよ! と思わなくもない。


「パパ。アイリィ平気だよ?」

「パパもアイリィたんには、自由に育って欲しいって常々思っているけどね?

 でも、流石に魔物を生きたまま丸かじりってのは、ちょいとフリーダムに過ぎやしないかい?」


 確かに、娘が魔物を生きたまま喰らっている光景は見たくないと思うのは親としては当然の事で、次郎衛門の言い分は至極真っ当なものだ。

 だが、普段は次郎衛門の言う事を素直に聞くアイリィが珍しく駄々をこねる。


「パパ! アイリィはやっぱり生が好きなの」


 幼女の口から飛び出す爆弾発言。


「ゴハァアァァ!

 アイリィたん!

 女の子がそんな発言しちゃダメ!」


 アイリィの誤解を招きそうな発言に吐血しながらも、何とかアイリィを叱りつける次郎衛門。

 だが、吐血だけでなく鼻血も出しているのは一体何故なのだろう。

 ちなみに、次郎衛門はこの間もハイオーク3匹を片手間に相手していたりする。

 戦いながらも、説教したり、吐血したり、鼻血だしたりと、器用な男である。


「いやっ!

 アイリィ生がいいっ!

 生がいいのっ!」

「分った!

 分ったから!

 そいつは喰って良いから!

 連呼しないでぇ!

 パパ、変な気分になっちゃう!」


 駄々を捏ねるアイリィに押し切られて諦める次郎衛門。

 押し切られた理由がまた情けない事この上ない。

 相手は幼女である。

 それ以前に養女でもある。

 そんな子供相手に一帯どんな気分になるというのだろうか。

 人として、そして親として、どうなのだと小一時間程問い詰めてみたくもある。


「何時か、フィリアたんに言わせたい言葉第三位をアイリィたんの口から聞く事になるとはな……

 アイリィたんを誑かしたオーク共よ。

 その罪はお前等の命で償わせてやる!」

 

 次郎衛門はハイオーク達に怒涛の勢いで迫り打ちのめしていく。

 だが、後一歩で戦闘不能に追い込めるといった時。

 次郎衛門に炎の矢が降り注ぐ。

 放ったのは側近の劣勢を受けて参戦したオークキングだ。


「おわ!?

 魔法?

 クソ!

 神の爺め!

 オークキングが魔法を使うなら、鑑定の説明文に載せとけってんだ!」

「これを避けるとは中々やるブヒ。

 我が四天王を圧倒するだけの事はあるブヒ」


 こうしてオーク討伐戦はオークキングの参戦により、最終局面を迎える事になるのであった。

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