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48話 スベスベレッグ!?

 無事に村へと入ることが出来た次郎衛門達。

 そのまま宿屋へと直行する。


「ここが宿屋かぁ。

 一階が酒場で、二階が宿になってるってのはファンタジー世界っぽくて良いよな」

「ファンタジー世界ってのは何の事だか分らんが、田舎の宿屋は大抵酒場と宿屋を兼任しているぞ。

 何せ旅人自体が少ないからな。

 宿屋だけじゃ、やっていけないのさ」


 キラキラと目を輝かせている次郎衛門にパンダロンが解説している。

 解説を付け加えるならば、危険な旅をしてきた旅人がある程度は身の安全を確保できるとなれば、酒でも呑んで多少羽目を外したいと思う事が多いというのも酒場と宿が一緒になっている理由だろう。


「それもそうか。

 とりあえず部屋とろうぜ。

 お姉さん、空いてる部屋あるかい?」

「いらっしゃーい。

 四名様ですね。

 二人部屋が二つならありますよ」


 ニコニコと二十台半ば程のお姉さんが受け答えしてくれる。

 そんなお姉さんに個室は空いてないのか聞いてみるが、元々旅人が多くはないので部屋に余裕はないとの事である。

 ここで問題になってくるのが、部屋割りだ。


「おっさんは外で寝るとして、俺とフィリアたんで一部屋。

 残りの一部屋がアイリィたんかな?」

「何で俺が外なんだよ!」

「パンダロンが外ってのには依存ないけど、何でジローと私が同じ部屋になるのよ!」

「パパと一緒が良い!」

 

 次郎衛門の偏りまくった提案に一斉に文句を言う3人。


「愛し合う二人が、床を共にするのは当然だろう?

 それにアイリィたんも、そろそろ一人でも眠れるようになった方が良いだろうし」


 部屋割りの理由を次郎衛門なりに述べてはいる。

 そんな次郎衛門にフィリアが口を開く。


「誰と誰が愛し合ってるって?

 勝手な事言ってるんじゃないわよ!」

「そりゃ俺とフィリアたんに決まってるだろう?」

「決まってないわよ!

 あんたが今まで私にしてきた事で、好かれる様な要素がどこにあったって言うのよ!」

「そりゃ、いっぱいあるっしょ? 例えば……」


 次郎衛門の脳裏にフィリアとの思い出が鮮やかに蘇り始める。

 魔法の練習中にお尻を触った事。

 黒くて禍々しいものを無理やりねじ込んだ事。

 特性スパイスで汗まみれで濡れ濡れにした事。

 毎日の様に夜這いを企んだり、盗撮を試みたりなど鮮明に思い出される。

 そして気が付く。

 愛を育むどころかセクハラ紛いというか、セクハラしかしてなかった事に。

 

「なかった……」


 現実に打ちのめされ崩れ落ちる次郎衛門。


「ほら、見なさい。

 私がアイリィの面倒みてあげるから、諦めてパンダロンと同じ部屋で我慢しときなさい!」


 足元に崩れ落ちた次郎衛門に、フィリアが勝ち誇った様に言い放ち、ついでとばかりに次郎衛門踏みつける。

 相変わらず女神とは思えない鬼畜っぷりである。

 一部の人には御褒美かもしれないが、次郎衛門には……

 あ、ちょっと嬉しそうなので、次郎衛門もどうやら一部の人に入っているっぽい。

 暫くは味わうかの様に踏みつけられていた次郎衛門。

 しかし突然反撃に出始める。

 ゲシゲシと踏みつけられながらもフィリアの軸足にしがみ付きだしたのだ。


「この変態が!

 離れなさいよ!

 顔をスリスリすんな!

 いやあああ!

 鼻息が当たって何か気持ち悪い!」 

「うひひひひ!

 誰が放すか!

 フィリアたんのすべすべレッグを堪能し尽くしてくれるわ!」


 態々大げさにフィリアの足元に崩れ落ちたのはこの状況が狙いだったらしい。

 しかも足触りを堪能するだけでなく、ちゃっかりスカートの中も覗いてる辺り安定のゲスっぷりである。

 普段ならこの辺でフィリアの魔法が炸裂するのだが、今回は密着しているので魔法は使えず、更に次郎衛門の楽しそうな様子を見てアイリィまでしがみ付き始める始末である。


「ちょっと! アイリィも、止めなさいって!」

「フィリアの足スベスベ~」


 美女の足にしがみ付く男と幼女の姿。

 その光景は田舎の村の宿屋を、程よい混沌に染めあげていた。

 宿屋のお姉さんもかなり困った様子なのだが、迂闊に刺激して自分まで毒牙に掛かってしまうのが怖いらしい。

 成り行きを見守っているばかりである。

 ちなみにパンダロンは次郎衛門達をちょっと羨ましそう眺めているが、流石に参加はしない様である。

 まぁ、パンダロンが参加すれば、恐らく彼は死ぬ事になるので、その選択は正解といえるだろう。

 このまま混沌な状況は、まだまだ続くかと思われたのだが、宿屋兼酒場に一人の少女が訪れた事によって漸く展開が進む事になる。


「こちらに、ラスクの街から来た冒険者の方が居!?

 ひぃぃ!!」


 どうやらこの少女は次郎衛門達に何かしらの用事があった様だ。

 だが、目の前で繰り広げられている状況に、最後まで言葉を紡ぐ事が出来ずに悲鳴を上げた。

 扉を開けたら、目の前に美女の足にしがみ付く人相極悪な男と幼女の図である。

 少女のこのリアクションも、当然であると言えよう。

 悲鳴に反応した次郎衛門とアイリィ。

 二人はフィリアの足にしがみ付いたままの体勢で、少女へと視線を移す。


「……」

「……」

「……」


 じっと見つめあう三人。

 まあ、そのうちの一人である少女、は意味不明な光景にフリーズしているだけなのだが。


 暫く無言で少女の様子を見ていた次郎衛門とアイリィ。


 だが。


 這いつくばった姿勢のままに。

 次郎衛門とアイリィは、カサカサという擬音の聞こえて来そうな動きで一気に少女へと迫る!

 その動きは日本の家庭で忌み嫌われるGと呼ばれる昆虫を彷彿させる。

 そして、今度は少女にしがみ付きだしたのである。


「きゃぁあぁぁ!!」


 響き渡る少女の悲鳴。

 見知らぬ男と幼女が、カサカサと這い寄って来るという恐怖に、少女は割とあっさりと、意識を手放すのであった。


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