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47話 ロイドとの再会って、誰だそれ!?

「痛たたた。

 気絶してる人間を引きずって運ぶとか、お前鬼畜すぎるだろ!

 ああ!? レザーメイルが擦り傷だらけになってるじゃねーか!

 これ、高いんだぞ!」


 足を持って引きずられるという方法で雑に運ばれていたパンダロン。

 涙目で次郎衛門に愚痴っている。


「運んでやっただけでも、感謝して欲しい位なんだけどなぁ。

 そんな事より道ってこれであってるのかな?」

「道も分らずに進んでたのかよ!

 非常識な奴だとは思っていたが、どこまで非常識なんだよ!」

「おいおい。俺とフィリアたんは、この世界での生活暦数ヶ月だし、アイリィたんに至っては、まだ生後3ヶ月位なんだぞ?

 土地勘なんて有る訳ないだろう?」


 このおっさん何言ってんの? 的な、可哀そうな子を見る目で、パンダロンを見る次郎衛門達。

 次郎衛門やフィリアは兎も角、愛らしい幼女のアイリィにまで、そんな目で見られるパンダロン。


「やめろぉ! 

 俺をそんな目で見るんじゃねぇ!!

 もう…… やめてくれ……

 道は暫く……このままだ……」


 必死に抵抗の言葉を吐き出していたパンダロンだったが、アイリィからの無遺言のプレッシャーに屈したっぽい。

 諦めて素直に道案内し始めるパンダロンなのであった。



「む? 

 これは人の気配かな?

 おっさん、この先およそ5km位のところに、村か何かあるか?」


 異変に気付きパンダロンへと問いかける次郎衛門。


「ああ。この峠を越えたら、小さな村が見えてきても良い頃だが……

 ジローは5kmも先の人の気配が分るのか?」


 パンダロンは驚きと共に次郎衛門に問い返す。


「今は感覚をフルに研ぎ澄ませたら、最大10km位まで索敵可能だぞ。

 最初は精々1kmが限界だったんだが、魔物倒せば倒すほど索敵範囲が広くなっていってる感じだ」

「お前らは本当に化物だな」

「私をジローやアイリィと同じ括りにするなって言ってるでしょうが! 今度こそ蹴り潰すわよ!」


 自分まで化物扱いされたフィリアが不本意だと反論をする。


「いや、あんたも充分化物だと思うがな……

 これでも俺は、冒険者の最高峰であるAランクに手が届きかけているんだぞ?

 それを不意打ちとは言え、一撃KO出来るやつが化物じゃなかったら一体なんだって言うってんだよ」

「女神よ!

 こんなに美しい私が化物だなんて有り得ないわ!

 女神として崇め奉りなさいよ!」

「ジローも大概だと思うが、このお嬢ちゃんも負けず劣らず大概な思考回路してるよな」


 フィリアは実際に女神である。

 言ってる事は間違ってはいない。

 だが、そんな事は知らないパンダロンは非常に疲れた様子で呟く。

 それでも何とか気を取り直し、再び口を開くパンダロン。


「確か、あの村には宿もあった筈だ。

 今日はそこで宿をとろうと思うんだが……

 どうだ?」

「そうだな。

 特に期限がある訳でもないし、わざわざ強行軍して野営する必要もない。

 それで良いんじゃないか?」

「そうね。さっさと宿を取って休みましょう」


 パンダロンの至極真っ当な提案は、すんなりと受け入れられたのであった。


 村は丸太を組んだ頑丈な柵で囲まれていた。

 その入り口には見張りと思わしき冒険者風の3名の男が立っている。

 次郎衛門達をあからさまに警戒をしていた様子だったが、パンダロンの姿があるのを確認すると、明らかにホッとした様子になった。

 どうやら見張りの男達とパンダロンは顔見知りっぽい。


「パンダロンさんじゃないですか!

 こんな田舎の村に何の用で来たので?」

「任務でな。ジロー達の付き添いみたいなものだ」

「ジロー?

 あああ!?

 テメエ、一体何しに来やがった!」


 親しげな雰囲気でパンダロンと会話をしていた見張りだったが、次郎衛門の名前が出た途端に喧嘩腰で怒鳴りだした。


「何しに来やがったって、初対面の相手に随分な言い草だなぁ」


 何でいきなりキレられたんだろう? っといった様子の次郎衛門。

 そんな次郎衛門の態度に、我慢できないと言わんばかりの剣幕で、見張りの男が怒りの形相で口を開く。


「誰が初対面だ!

 俺はロイドだ!

 俺達にした事を忘れたとは言わさねぇぞ!」

「ロイドって誰だそれ?

 全く心当たりがないんだけど」

「あれだけの事をしといて全く覚えてないだと!?」

「覚えてないなぁ。俺あんた達に何かしたっけ? 人違いじゃないの?」

「ほ、本当に覚えてないのか?」


 次郎衛門の態度に、徐々に声の張りがなくなり、弱々しくなっていく見張りの男。

 見ていて何だか可哀想になってくる。


「……」

「え? 何て言ったんだ?」


 見張りの男がぼそりと何事かを口の中で呟いた。

 だが、はっきり喋った訳ではない。

 次郎衛門の聴力でもハッキリと聞こえなかったらしい。

 聞き返す次郎衛門。

 そんな次郎衛門の様子に、見張りの男の目からは、大量の涙があふれ出た。


「あんまりだぁ!

 うわぁぁあぁぁぁん!!」

「うお!? ちょっと待て!

 一体何だってんだ!?」

 

 いい年した大の大人が大号泣である。

 流石の次郎衛門も、ビクっと思わず後ずさり、若干おろおろしている。

 そんな次郎衛門を見かねたパンダロンが口を挟んだ。


「お前、本当に覚えてないのか? 

 こいつ等はお前が決闘でフルボッコにした連中だろうが」

「はて、決闘とな?

 決闘っていうとサラちゃんに振られたのに、諦めきれない連中に止めをさしたあれかな?」

「そう、それだ」

「!!!???

 ムキ男!

 ムキ男達じゃないか!」


 そう、見張りの男達は以前サラに盛大に振られ、その後に何故か次郎衛門と決闘し、フルボッコされた3人組だったのだ。

 やっと次郎衛門に思い出して貰えたムキ男。

 涙を拭い嬉しそうに喋りだす。


「やっと思い出したか。

 良かった! って全然良くねぇよ!

 誰がムキ男だ!

 ロイドだって言ってんだろうが!」

「そう、それだよ。

 お前ロイドって名前だったの?

 それなら何であの時、ムキ男だなんて名乗ったんだ?」

「俺は一度たりとも名乗ってねえよ!

 お前が勝手に呼び出したんだろうが!

 お前の所為でサラに振られるわ。

 決闘で大火傷負うわ。

 散々だったんだぞ!

 ばーか!

 ばーか!

 お前なんか村に入れてやらねぇ!

 野宿でもして風邪でも引いてろや!」


 ムキ男達がサラに振られたのは、次郎衛門の責任ではないし、ムキ男が大火傷したのはお互いが納得済みである決闘の上での事だ。

 この件に関しえは珍しく次郎衛門は悪くはない。

 完全にムキ男の逆恨みである。

 ちなみムキ男達はサラに振られて顔を会わせ辛くなり、そんな時にこの村の用心棒的な立ち居地の依頼があった為、彼らはこれ幸いにその依頼を受けたのである。


「ロイド、それ位にしとけ。

 振られたのも、決闘で負けて怪我したのも、全部自己責任だろう。

 それよりさっさと村に入れてくれ」

「ぐ…… 分ったよ。

 おい、ジロー!

 村で問題を起こすんじゃねぇぞ!」


 ムキ男達との思わぬ再会があった次郎衛門達だったが、パンダロンの取り成しで無事に村に入る事が出来たのであった。

 



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