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43話 ゲコリアス、強くなる!?

 次郎衛門達が強化合宿授業という体裁の山篭りを始めてから、既に2週間が経っていた。

 メンバーは次郎衛門、ゲコリアス、そして、その取り巻き達4人である。

 取り巻き達が参加したのは意外ではあったが、取り巻き達とゲコリアスはそれなりに絆を育んでいたっぽい。

 本当に意外である。

 フィリアやアイリィも最初は居たのだが、ゲコリアス達との差があり過ぎた為、暇を持て余し、今はラスクの街へ戻って二人で依頼を受けているようだ。



 本当に強くなり始めている。



 それがここ2週間の特訓に対するゲコリアス達の感想だ。

 他の取り巻き達は兎も角として、ゲコリアスは魔物を倒してもほとんどステータスが上がる事は無い筈なのである。

 それ故に自らに才能が無いと自暴自棄な生活を送って居たと言うのに、何故だかは分らないが、確かにステータスが上がっている実感があるのだ。

 毎日気を失う程に扱かれているのに、朝目覚めてみれば前日の疲れなど一切無く力が漲っている。

 ぶよぶよとしていた体もかなり引締まり、まるで本当に別人として生まれ変わっているのではないかと思う程には、劇的に成長していた。

 毎日倒れるまで特訓。

 次郎衛門が用意した特製の食事を摂る。

 たっぷりと睡眠をとる。

 ただそれだけの事で、本当に強くなれるのかと最初は半信半疑だったゲコリアス達も成長を実感した事で、次郎衛門に対する態度は最早崇拝に変化していると言っても過言ではない。

 そしてあっという間に一ヶ月が過ぎ去る。

 辺境伯へ修行の成果を見せる為に山篭りを終了し、彼等はラスクの街へと帰還したのであった。



 ◆◆◆◆

 

 次郎衛門達の帰還。

 そのニュースは辺境伯からの使いによりフィリア達の知る所になった。

 そしてパパ大好きっ娘のアイリィがごねる。

 今すぐに会いたいと。

 アイリィこの状態では、とても依頼どころではないと、辺境伯邸にアイリィと共に向かうフィリア。

 辺境伯邸では、どうやら中庭にてゲコリアス達の特訓の成果を確かめてるっぽかった。

 メイドさんに案内して貰いフィリア達が中庭に入る。

 すると上機嫌な辺境伯の声が聞こえてくる。


「流石はジロー殿だ!

 ゲコリアスがここまで見違える程に逞しくなるとは!」

「父上、今まで申し訳ありませんでした。

 この不肖ゲコリアス。

 これからはこの街の為に粉骨砕身励む所存でございます」

「ふむ。技術面ではまだまだな面もある。

 だが、僅か一ヶ月でこれ程鍛え上げるとは。

 やはりジロー殿に任せて正解だったようだな」

「ふふふ。辺境伯は御機嫌みたいね。

 ……それでゲコリアスは何処にいるのよ?」


 ゲコリアスを探し周囲を見回すフィリア。

 だが、周囲にそれらしき人物は居ない。

 居るのは金髪長身のイケメンである。


「フィリアさん。

 私ならここに居ますよ。

 痩せて引き締まったので、パッと見では別人に見えるかも知れませんね」


 照れくさそうに笑うイケメン。

 どうやらこの金髪長身のイケメンがゲコリアスであるらしい。

 フィリアの記憶が確かであるならば。

 ゲコリアスは金髪でこそあるものの。

 デブで。

 チビで。

 ブサイクだった筈である。

 たった今ゲコリアスと名乗ったイケメンは、どう見ても身長180cm以上はあるし、顔立ちも整っている。

 単純に痩せて引き締まっただけで、全身の骨格まで変化してしまう何て事は有り得ない。

 だが、フィリアには有り得ない事を極自然に呼吸を行うかのように巻き起こす存在に心当たりがあった。

 天性のトラブルメーカー。

 鈴木次郎衛門その人である。


「ジローこっちに来なさい!!」

「お? フィリアたんどうかしたのか?」

「あんたゲコリアスに何したのよ?」

「何って山篭りだろう?

 それ以外に何があるって言うんだ?」

 

 フィリアが次郎衛門を中庭の隅に引きずっていき、周囲に聞かれないように次郎衛門に問い詰める。

 だが、次郎衛門は何の事を言っているのか分らないといった感じですっ呆ける。


「白々しい嘘吐いてんじゃないわよ!

 百歩譲って痩せて引き締まったとしても!

 背が20cm以上伸びてるし、顔立ちも目茶目茶整ってるじゃないの!

 地球で整形したとしても、あれ程劇的にビフォアーアフター何かし…… な…… い?」


 凄まじい剣幕で次郎衛門にツッコミを入れていたフィリアだったが、途中でこの世界では有り得ない何かに気付き、驚愕の表情でゲコリアスを指差した。


「ア、ア、ア…… アンテナ生えてるう!?

 ジロー!?

 あんたホントに一体何を仕出かしてちゃってるのよ!?」


 何と、ゲコリアスの頭部からラジコンに付いてるようなアンテナが生えていたのである。

 思わず叫び、次郎衛門の胸倉を掴みガクガクと振り回すフィリア。

 だが、次郎衛門は頭を激しく揺さぶられながらも特に悪びれた様子もなく口を開く。


「ありゃ、フィリアたんにはバレちゃったか。

 種を明かすとさ。

 あのアンテナは超強力な催眠電波を出していてな。

 それで本人を含めて、周囲の人間にはゲコリアス達の容姿の変化に対して気が付けないようになってるんだよ」

「あ、あんたって奴は!

 それって人体改造じゃない!

 そんな事して許されると思って……」


 そこまで捲くし立てたフィリアは、次郎衛門の台詞に決して聞き流してはいけないワードがあったのに気がいた。

 そう、次郎衛門はゲコリアス達と言ったのだ。

 それは詰まる所。

 ゲコリアスの取り巻き達4人も、同様に人体改造されているという事に他ならない。

 慌てて取り巻き達の姿を探すフィリア。

 そして愕然と凍りつく。

 一目見て、見覚えの無いそれ。

 だが、それが取り巻き達の成れの果てだと理解してしまったからだ。


「ちょ!?

 何よあれ!

 あれじゃ完全に等身大のブリキの人形じゃない!

 せめてゲコリアス位のクオリティを保ちなさいよ!!!」


 フィリアの言うとおり取り、巻き達の姿は昭和の時代によく作られていたブリキ製のロボット人形そのものだったのだ。

 今ならプレミアムが付いて、結構な値段で取引されてそうなイメージだ。

 ゲコリアスが金髪碧眼の長身イケメンというハイクオリティさから比べると、取り巻き達の扱いは余りに酷い。


「いやぁ、ゲコリアスで張り切りすぎちゃってさ。

 全員分の材料が足りなくなっちゃった。

 てへっ」

「てへっじゃないわよ!

 勝手にこんな事したのが公になったら、タダじゃ済まないのよ!」

「勝手にじゃないぞ?

 俺はゲコリアスにちゃんと言ったぞ。

 今までのゲコリアスとは別人になれるって」


 烈火の如く怒鳴り散らすフィリアに次郎衛門落ち着いた様子で答えた。

 確かに、次郎衛門はそう発言していた。

 ゲコリアスも同意してはいたが、まさか本当に体を造り変えられるとは思っていなかっただろう。

 というか、作り変えられた事に本人も気付いていないのだが。


「そんな屁理屈が通る訳ないでしょうが!」

「まぁ、落ち着け。

 あのアンテナから出ている催眠電波は、それこそ神級の精神耐性でもなきゃ抵抗出来んからバレやしないって。

 それに皆が喜んでるんだぜ?

 辺境伯は息子が立派になって嬉しい。

 ゲコリアス達は強くなれて嬉しい。

 ライナ先生は問題児から開放されて嬉しい。

 俺は依頼料をがっぽり稼げてうれしい。正にwin-winの関係じゃん」


 満面の笑みで言い放つ次郎衛門。

 そこには罪悪感の欠片もないっぽい。

 ちなみにゲコリアス達に関しては、win-winと言うよりはウィーン、ウィーンと言った方が正解かも知れない。


「そうかも知れないけど!」


 徐々に次郎衛門に説得されていくフィリア。

 だが、女神としての矜持が。

 人体改造という神をも恐れぬ所業に忌避感を持たせて居るのかも知れない。

 まだ、納得は出来ていないようだ。


「なぁ、フィリアたん。

 フィリアたんさえ黙っていてくれれば、何も問題ないんだ。

 俺とフィリアたんは一蓮托生なんだし?

 ここで全部ぶちまけたら、フィリアたんも一生追われ続ける生活になるんだぜ?」

「う…… そ、それは……」

「そんな生活は嫌だろう?

 フィリアたんは何も見なかったし、気付かなかった。

 それで良いじゃねぇか。

 これからも俺と冒険者を続けて、面白可笑しく暮らしていこうぜ?

 な?」


 この後も延々と説得を続けられた女神フィリア

 結局、次郎衛門の真綿で首を絞めるような説得の前に堕ちることになる。

 次郎衛門は無事? に指名依頼を完了し、満足気に笑う。

 

 そしてゲコリアス達は今までの行いを反省し、自警団を結成する。

 スラムの治安の安定化や、街の掃除等を積極的に行う様にもなる。

 やがて彼等は、街の住民達から徐々に信頼を得るようになっていくのであった。



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