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38話 先っぽだけ! 先っぽだけで良いから!?

 昇格審査の後日、当然の如く支部長に呼び出される次郎衛門。


「お前という奴は、問題を起こさずにいることは出来んのか?

 本部や王宮からの苦情処理やらのストレスでハゲそうだわ!」


 次郎衛門の顔を見るなり愚痴を言い始める支部長。

 冒険者ギルドの各支部の長というものは、基本的に実績、人望、組織の長としての能力に長けたものが就く。

 王国でも屈指の大都市であるラスクの支部長ともなれば、一般的な冒険者達からしてみれば、遥か雲の上の存在といえよう。

 それがである。

 次郎衛門と顔を合わせる度に、支部長から滲み出る中間管理職の悲哀さが濃くなっていっているっぽい。

 哀れなおっさんである。

 

「支部長ならハゲでも似合いそうだから良いんじゃないか?

 んで、結局俺は昇格出来るのか?

 愚痴を言うために態々呼び出したんじゃないんだろ?」


 そんな支部長の愚痴も何処吹く風のなんのその。

 全く気にした様子もない次郎衛門。

 こんな奴の管理をしなきゃいけないとか、最早、大都市の支部長というポジションは、罰ゲーム級の貧乏くじ成り下がったと言っても過言ではない。


「ハゲが似合うとか、そう言う事は言っておらん!

 高々髪の毛如きでワシの魅力が衰える事などないわ!

 ……まぁ、良い。

 ワシとしては不本意だが、お前達のランクは一気にCまで昇格だ」

「俺としては良いけど、いきなりCランクとか問題はないのか?」 

「問題大有りだわ!

 だが、たった一人で、二百人からの部隊を蹂躙出来る者が、Dランクだなんて勿体無いからな。

 無理やりだったが、ねじ込んでやったわ!」

「ほむ。支部長ってば、意外と話が分かるじゃん!」

 

 支部長の言葉を聞き、己に対する高評価にご機嫌な次郎衛門。

 まぁ、支部長の言葉は建前である。

 下手な案件に次郎衛門を投入したら、高確率で大惨事になる事請け合いだ。

 どれくらいの高確率かと言えば、宝くじの連番を買ったら、末等が当たるくらい感覚だと言えばイメージしやすいだろうか。

 宝くじの場合は、300円当たるだけだが、次郎衛門の場合は、一等と前後賞合わせて10億円といった感じ。

 勿論、賞金ではなく損害額だから始末に終えない。

 何とも嫌な大当たりである。

 ならば、強引にでもさっさと昇格させてしまえ! というのが支部長の本音だったりする。

 

「この後、サラにでもカードの更新をして貰え。

 用件はそれだけだ。

 さっさと帰れ!」


 これ以上、次郎衛門と関わるのはごめんだと言わんばかりの支部長。

 自分で呼び出した癖に酷い言い草である。

 まぁ、支部長の気持ちも分からなくもないが。 

 それはそうと、どうやら次郎衛門のフリーダムっぷりは、早くも王国中に知れ渡りつつあるらしい。

 普通なら犯罪者として捕まっても可笑しくはない。

 だが、その圧倒的なポテンシャルは魅力的でもある。

 それ故に今回の飛び級での昇格が決定されたようだ。

 



 ◆◆◆◆


「サラちゃーん。

 カードの更新って頼める?」


 サラにカードの更新を頼みながらも、さり気なくサラの犬耳や尻尾に視線を向ける次郎衛門。

 その目は完全に獲物を狙うハンターのそれだ。

 隙あらばモフる気満々である。

 まぁ、この男の場合、隙がなくてもモフりそうであるが。


「では、カードはお預かりしますね。

 あとそんな目で見つめても触らせませんからね?」


 触らせませんとか言ってる割には、それ程嫌そうな表情でもない。

 ひょっとしたら、意外と脈ありなのかも知れない。


「んじゃ、先っぽだけ!

 先っぽだけで良いからお願い!」

 

 サラの表情を見て、押せば何とかなるんじゃないかと懇願してみる次郎衛門。

 良い年こいて土下座までしそうな勢いである。


「何で態々いやらしい言い方するんですか。

 仕方ないですね……

 ホントにちょっとだけですよ?」


 そう言うと次郎衛門へと頭を差し出すサラ。

 どうやら犬耳ならモフってもOKであるらしい。

 獣人は耳や尻尾は、家族並みに親しいものしか触らせないという。

 それを触らせてくれるという事は、冗談抜きで本当に脈があるのかも知れない。

 今までの次郎衛門の行動の何処にそんな要素があったのか、謎ではあるが。



「おお!

 言ってみるもんだなぁ

 んじゃ、遠慮なく!」


 次郎衛門は何時ぞやと似たような台詞を吐きながら、おもむろにサラの決して豊かではない胸の先端部分をキュっと摘み上げる。

 所謂ところのB地区という部位である。

 じっくりと味わうかの様に、指先で転がし始める次郎衛門。

 衣類の上からでも正確に摘める辺りに、次郎衛門の女体に対する並々ならぬ情熱が伺える。

 ひょっとしたら、その有り余る情熱故に先端部分を見極める事が出来る心眼の様なものを開眼しているのかも知れない。

 一方、耳や尻尾を撫でられると思っていたサラ。

 予想だにしなかった次郎衛門の行動に完全にフリーズ状態に陥る。 


「…………!!!?

 きゃぁあぁぁ!?

 い、いきなり何するんですか!?」


 数瞬の間の後に、やっと再起動を果たし悲鳴を上げるサラ。

 顔は羞恥心に真っ赤に染まり、尻尾もピンと逆立っている。 


「え……

 先っぽだけなら、触らせてくれるって言ったよね?」

「耳とか尻尾の話ですよ!

 何で胸の話になってるんですか!

 公衆の面前で胸触らせるとかどんな恥女ですか!」

「クハハ! ごめんごめん。

 サラちゃんってば、可愛いからつい悪戯したくなっちゃうんだよな。

 でも、サラちゃんのお陰で二週間はこのネタでイケる気がするよ」

「か、可愛いとか言っても誤魔化されませんよ!

 本当に怒ってるんですからね!」

「ホントごめんって。

 それよりカードの更新って時間掛かりそう?」


 あからさまに話題を変えた次郎衛門。

 いや、変えたと言うよりは元に戻したと言うべきか。

 だが、根が真面目なサラはまだ怒りの残滓を残しながらも律儀に応えちゃう辺りに彼女の善良さが伺える。


「ハァ…… 三十分位は掛かりますよ」

「それじゃ、その間にでも、この幸せな感触を忘れないうちにトイレでイッてくるとしますかね!」

「ちょ!? ダメダメダメですよ!

 トイレで何するつもりなんですか!?」

「え!? 何するつもりって?

 トイレでする事なんて決まってるっしょ。

 サラちゃんは一体ナニを想像しちゃったのかな?」

「え、あう…… ナニってそれはその……」


 顔を真っ赤にして口篭るサラ。

 まだ少女と言える年齢であるが、それなりに知識はあるらしい。

 次郎衛門が相手では、その知識は完全に裏目に出てしまっているが。

 更に意地の悪い笑顔で追い討ちを掛けていく次郎衛門。


「ほーら?

 一体ナニを想像しちゃったのかな?

 その可愛いお口で言ってご『バキィ!』ぁ痛!」


 次郎衛門が頭を擦りながら振り返ると呆れた顔したフィリアがいた。


「ちょっと目を離した隙にセクハラしてんじゃないわよ。

 ホントにあんたって禄な事をしないわね」

「うわぁぁぁん。フィリアさぁぁぁぁん!」

「サラもジローの言う事なんて真に受けてないでさっさと仕事してきなさい!

 ジローも更新終わるまで依頼の掲示板見にくわよ!」


 泣きべそを掻きながら縋りついてくるサラをサクッと引き剥がし、これ以上は、次郎衛門を好き放題させはしないと睨みを利かすフィリア。


「ぐすっ……

 わがりましたぁ。

 しばらぐおまちぐださい……」

「フィリアたんは厳しいねぇ。

 もうちょっと優しくして上げれば良いのに」

「今までセクハラしてた奴に言われたくはないわ。

 元はと言えばあんたが悪いんでしょうが。」

「クハハ。違いない。

 それじゃ、依頼でも見に行くか」


 悪びれた様子もなく笑う次郎衛門。

 待ち時間を有効に使うべく、掲示板に向かうのであった。 

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