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2話 運命の出会い!?

「魔法の存在する世界?

 ゲームやラノベにあるような、ファンタジー的な世界ってこと?」


 突然の引越しへの提案に、思わず聞き返す次郎衛門。


「そうじゃよ。

 ファンタジー的なというよりも、ファンタジーそのものな世界じゃ。

 ゲームやアニメでは、テンプレのギルドもあるし、そこに加入するのもそう難しい話ではない。

 まあ、魔物や盗賊といったものも存在するし、ひょっとしたら国家規模の戦争も起きるかも知れん。

 命の危険は当然あるが、お主は地球でも命を危険に晒しながら生活しておる。

 そういった意味では、今までと大差はないじゃろう。

 テンプレと言えば、魔王も存在したりするんじゃが、当代の魔王は平和主義者なのでその辺も大丈夫じゃ。

 移住する事自体が目的じゃから、特に何かを成して欲しいという訳でもない。

 自由に生きてくれれば、それで良いぞい」


 どうじゃ、楽しそうじゃろ?と、言わんばかりの顔で語る神。

 少年の心を持つ者にとっては、確かに魅力的な提案ではある。

 だが、ここで素直に頷く次郎衛門ではない。


「ふむ。確かに興味はあるけど……

 しかし、ギルドに加入するのが難しくないってのは、どういう事?

 身元の不確かな俺が、そう簡単にそういった組織に加入できるとは思えないんだけど?」


 旨い話ばかりの展開に、やや疑いの眼差しで問いかける次郎衛門。

 己の人生が懸かっているのだ。

 次郎衛門のこの反応は当然と言えるだろう。

 そんな次郎衛門の言葉に、神は心得たように口を開く。


「実は転移ってのは結構あるのじゃよ。

 大きな国では10年に1人くらいの頻度で現れるからのう。

 その大半はお主とは違い、偶発的に転移してしまった者じゃ。

 そんな訳で、今までに一度もギルド登録したことのない者なら、比較的簡単に加入出来るのじゃよ。」


 まあ、地球の行方不明者全部が転移していたのなら、10年に1人程度で済む話ではないだろうが、実際には全員が転移している訳でもないのだろう。

 更に付け加えるならば、世界というものは無数にあり、転移する者も複数の世界から来ているので、地球からの転移者は数千年に1人くらいの確率だったりする。


「もし、移住したとして、元の世界、つまりこの世界での俺の扱いはどうなるんだ?

 やはり行方不明者扱いに?

 それに移住先の知識が何もないまま、というのも困るんだけど。

 せめて、会話と読み書きくらいが出来るようになるまでのサポートと、あちらの世界での当座の資金は必須だよなぁ」


 次郎衛門の周囲の人間は、結構アバウトな性格な人間ばかりだ。

 おそらく自分がが居なくなっても、あまり問題ない気もしないでもない。

 だが、流石に行方不明だと迷惑が掛かる。

 それになるべく迷惑も掛けたくはないようだ。

 異世界への移住自体は興味もあるし、下手に移住をごねると、強制的に移住させられる可能性もある。

 そんな中で、少しでも楽に生活出来るように、且つ、欲張り過ぎない程度に、さり気なく支援を要求する次郎衛門。


「移住すると同時に、お主が存在したという記憶は元の世界の人々から消す事になるじゃろう。

 お主のやらかした数々の問題を丸ごとなかった事に出来るし、その方が楽じゃからのう。

 会話や、読み書きに関しては、ワシが翻訳能力を与えるから大丈夫じゃよ。

 知識に関しては、確かにワシ等の都合によって移住を強いるわけじゃから、あちらの常識を知らぬ故に、お主に苦労させるのも心苦しいのう。

 それに何のフォローもなく放り出したら、お主が何かしでかしそうでちょっと怖くもあるの。

 ふむ…… ならば、ワシの娘であるフィリアをサポート役兼監視役として就けるとしようかの。

 資金もある程度は持たせるつもりじゃ。」

「げ。見張りがつくのかよ…ってか娘?」


 監視役という言葉に、次郎衛門はげんなりした様子を見せるが、聞き捨てならない単語にはきっちりと反応出来たらしい。

 神はともかく、あの女神様の娘でもあるなら…… と、期待感に満ちた表情で神を見る次郎衛門。


「そうじゃ、ワシに似て超可愛い娘じゃぞい」


 そう言うと、神はまたブツブツと何かを唱える。

 すると閃光と共に、今度はスタイルの良い二十歳前後くらいに見える金髪美人が姿をあらわした。

 当然のように次郎衛門のテンションも一気に跳ね上がりる。

 喜び勇んでフィリアと思われる女性に詰め寄る次郎衛門。

 だが――――


「あ、触らないでね? 気持ち悪いから」


 あっさりと次郎衛門の心を抉ってくる辺り、フィリアは結構きつい性格をしているっぽい。

 一瞬傷ついた表情を見せた次郎衛門だったが、すぐに立ち直りフィリアに言い放つ。


「だが、それが良い!」


 そんな次郎衛門の姿には、どこかの歌舞伎者の幻影が、重なって見えたとか見えなかったとか。

 ぶっちゃけ神もフィリアもドン引きである。

 そんな次郎衛門とフィリアの様子を見ていた神。

 神は若干不安気な様子ながらフィリアに話し掛ける。


「フィリアよ、話は聞こえておったじゃろ?

 サポート役兼お目付け役として、鈴木次郎衛門と一緒に行ってくれぬか?」

「あまり気が進まないけど、仕方ないわね。

 こんな人を自由にさせていたら、何をしでかすか分からないもんね」


 父である神に渋々な態度であるが、了承の意を伝えるフィリア。

 

「次郎衛門、これから宜しくね。

 私が監視するからには、今までの生活みたいに、好き放題はさせないわよ。

 覚悟しとく事ね」


 と、フィリアは極上の笑みを浮べたのであった。




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