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34話 次郎衛門領主に呼び出しを受ける!?

今回はちょっとシリアス風味です。

 本日はギルドに呼び出された次郎衛門達。


「呼び出しって、やっぱアイリィたんを連れ帰った件かな?」

「普通に考えたらそうでしょうね。

 王国や貴族から何らかのアクションがあってもおかしくはないわ」

「悪い事した訳じゃないし大丈夫っしょ。

 いざとなったらアイリィたんをけしかければ何とかなるっしょ」

「パパ苛めるのはアイリィ許さない!」


 等と、今日の呼び出しについて話し合う3人。

いざとなった時には、娘のアイリィに全てを薙倒させて解決しようとするとか、親としてどうなんだと思わなくもない。

そんな会話をしながらギルドホールに入ると、馴染みの職員であるサラの姿を見つける次郎衛門。


「サラちゃんやっほーい。

 今日も良いケモり具合だね」

「おはようございます。

 ジローさん、フィリアさん、今日はアイリィちゃんも一緒なんですね」

「まぁね。それで、パンダのおっさんから支部長が呼んでるって聞いたんだけどさ」

「案内しますので、付いて来てください」


 そう言って歩き出すサラに3人は付いて行く。

 3階より上の階は基本的に一般の冒険者が入る事はない。

 次郎衛門はソワソワと周りを見学したりしている。

 そして最上階の部屋の前でサラは扉をノックした。


「支部長。ジローさん達をお連れしました」

「おう。入れ」

 

 中から男性の声で返事が聞こえ、部屋に入るように促してきた。


「それでは、私はここまでですので、ジローさん達は中に入ってください。

 くれぐれも失礼のないようにお願いしますね」

「ほーい了解。サラちゃんありがとーん」


 サラに礼を言い次郎衛門達が部屋の中に入る。

 そこには2人の男性が居た。

 その2人は初めて見る顔だった。


「よく来てくれた。

 ワシがこのギルドの支部長を務めているガイアスだ。

 そしてこちらがこの辺り一帯を治めているラスク辺境伯だ」

「グロリアス・ラスクだ」

「鈴木次郎衛門です。

 ジローと呼んで下さい。

 隣に居るのが相棒のフィリア、そして娘のアイリィです」

 

 次郎衛門にしては珍しく少し丁寧な挨拶をした。

 挨拶をしながら2人の様子を伺ってみるのだが、その身に纏う雰囲気が2人が只者ではない事を物語っていた。

 支部長と名乗った初老の男は恐らく幹部であるパンダロンよりも強いだろう。

 辺境伯の方も歴戦の武人といった佇まいをしている。

 さて、どうなる事やらと、思案していた次郎衛門に支部長と名乗った初老の男の方が口を開く。


「用件は薄々感づいて居るかも知れんが、そこのアイリィという娘も無関係ではない話でな。

 確認したいのだが、その娘が竜族の姫君という事で間違いないか?」


 支部長は次郎衛門に問いかける。

 その視線はどんな些細な嘘も見逃さないと、暗に語っているようだった。


「ええ、そうですよ。とは言っても俺もアポロから聞いただけなんで、本当に姫なのかは知りませんけどね」

「ふむ。王城に現れた竜族の男もアポロと名乗っていたらしい。

 竜族の姫君という話が真実かどうかは兎も角として、お前さんは嘘は吐いてない様だな」

「そこから先は私が話そう。

 ジロー、実は王都の貴族が竜族の姫君を差し出せと騒いでいるのだ。

 奴等の言い分としてはこうだ。

「Eランクの冒険者に竜族の姫君を任せて何かあったら国が滅びる、国で厳重に保護するべきだ!」 とね」


 そこまで言って次郎衛門の様子を探る辺境伯。

 そんな辺境伯に対して何の迷いもなく次郎衛門は力強い口調で言い放つ。


「お断りです。己を父と慕ってくれる娘を手放すという選択肢は俺には無い」

「王都に現れたアポロと名乗った竜族の男は間違いなくSランクだそうだ。

 もし姫君に何かあったらそんな化物に狙われる事になるんだぞ?」


 次郎衛門の迷いのない返答に驚いたらしい辺境伯。


「王都の連中の言い分はとりあえず分かりました。

 それで辺境伯の意見はどうなんですか?」

「王都の貴族共の言いなりになるのは好かんが、この街の住民を危険に晒す訳にもいかんからな。

 やはり王都で保護して貰った方が良いだろう」


 どうやら辺境伯もアイリィを厄介払いしたいようだ。

 一人の少女と己の街の住民とでは、やはり街の住民の安全を優先するのは領主としては当然といえる。

 そういった意味では辺境伯の判断は間違ってはいないだろう。


「俺はアポロに直に託されたんだ。

 アイリィを手放した時点でアポロは俺を殺しに来るだろうさ。

 それに保護とは言ってるものの、実際の所は体の良い人質、下手したら実験体扱いになることは分かりきっている。

 アポロはこういう事態にならん様に詰まらん手出しをするなと釘を刺した筈なんだが、王都の連中はそんな事も理解出来ない程馬鹿なのかい?

 それならいっそ他の国に移動するって手もあるか」


 あっさりと何時もの口調に戻る次郎衛門。

 更には挑発までし始める始末である。

 どうやら、ちょっと怒っているらしい。


「ジロー、言葉を慎め!

 そして今の言葉を取り消せ!!」

「正気か?

 ドラゴンを伴っての他国に亡命など認める訳にはいかん。

 国家間のバランスが大きく崩れる事になりかねんのでな。

 取り消さないのであれば―――――

 この場で切り捨てる!」


 支部長は怒りを込めて叱責し、辺境伯は剣に手を掛ける。

 並みの冒険者なら縮み上がしまいそうな殺気だ。

 その殺気を次郎衛門へと向けたその時である。


「おじちゃん達パパを苛めてるの?」


 今までじっと大人しくしていたアイリィが不意に問いかけた。

 唐突なその問いかけに咄嗟に言葉が出ない支部長と辺境伯。

 当然だ。

 幼いとは言え、相手は竜族、ドラゴンなのだ。

 そんな二人に再びアイリィは問いかける。


「パパを苛めてるの?」


 それと同時。

 アイリィから圧倒的な敵意が支部長と辺境伯に放たれる。

 解き放たれた桁違いの魔力。

 桁違いのプレッシャーが。

 ギルドホール、否、ラスクの街全体に吹き荒れる。

 至近距離で正真正銘Sランクの圧倒的な敵意を受けた二人は辛うじて意識を保つのが精一杯だ。


「さて、言葉を慎むべきだったのはどっちだったのか、理解は出来たかい?」


 次郎衛門が悠然と佇みながら二人に問いかける。


「ジロー! 貴様どういうつもりだ!」

「この国に居る限り。

 アイリィは狙われ続けるんだろう?

 そしてあんたらは他国に行く事もダメだという。

 ならばこの国を滅ぼすのが手っ取り早いと思ってね。

 手始めにこの街かな?」

「な…… この異常者め!

 この場で切り殺してくれる!」


 辺境伯はアイリィのプレッシャーの中、気力を奮い起こす。

 その剣は正に疾風迅雷、一瞬の内に次郎衛門の体を切り捨て――――

 

――――られずに体をすり抜けた。


「何ィ!?」

「クハハ。無駄無駄ぁ!

 空間魔法ってつくづく便利だよなぁ」


 どうやら次郎衛門は自分が得意とする空間転移を使った攻撃の応用で、自分の周囲に空間転移魔法を張り巡らせ、辺境伯の斬撃を無効化しているっぽい。

 こうなると物理的な攻撃で次郎衛門へとダメージを与えるのは不可能と言っても良いだろう。


「化物め……」


 渾身の攻撃が無効化され思わず吐き捨てる辺境伯。

 その時、街中から悲鳴が上がる。


 その直後。

 パンダロンが部屋に飛び込んでくる。

 そして信じられない報告をするのであった。

 

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