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28話 親竜登場!?

「アイリィってのはどうだろう?」

「急にまともな名前になったわね。

ま、ジローにしては悪くないんじゃない?」

「適当に考えたら、片っ端から却下したじゃんよ。

 さて、後は本人が気に入るかが問題だな。

 おーい、おじょうちゃんの名前アイリィにしようと思うんだけど良いか?」


 次郎衛門が問いかけると、幼女はキョトンとした顔で次郎衛門の方を見た。


「アイリィ?」


 自分を指差し、小首を傾げながら次郎衛門に問いかける幼女。


「ああ。嫌じゃないならそう呼ばせてくれよ。

 俺はこれ以上は思いつかんから、これがNGだってのなら、自分で考えてくれると助かるんだけど」

「アイリィで良い! アイリィが良い!」


 それだけ言うと、次郎衛門の膝の中にスポっと納まる幼女改めアイリィ。


「可愛いから嬉しいけど、何だか尋常じゃない懐かれ方だなぁ。

 所謂ところの刷り込みってやつかな?」

「それもあるし、ジローが馬鹿みたいに魔力吸わせたから親だと勘違いしても仕方ないわね。多分人型なのも、ジローの魔力のせいなんじゃないかしら?

 何で私に似てるのかは謎ね」

「ううむ。不可抗力とは言え、悪い事しちまったかなぁ。

 親竜が激怒しちゃったらどうしよう?」

「その時は諦めて死になさい。

 でも、私が逃げ切る位の時間は稼ぎなさいよ」


 どうやら、フィリアは次郎衛門の事は切り捨てて自分だけ助かるつもりらしい。

 普通のファンタジー物の物語ならば、ヒロインは口では酷い事を言いながらも、いざと言う時には、主人公や仲間を助けるものだが、フィリアの場合は本当に見捨てそうな気がしなくもない。

 次郎衛門が普通(テンプレ)の主人公であったなら、フィリアの態度も違っていたのかも知れないという事を考えると、切り捨てられても仕方ないかな、という気もするが。


 その時。


「「!?」」


 次郎衛門とフィリアは、同時に同じ方向を凝視する。

 大きな魔力を持つ何かが急速に近づいてきているのだ。

 まだ、かなりの距離があるというのに、はっきりとその存在を認識出来るのだ。

 そしてその存在は、敵意を隠しもしていない。

 いや、敵意などという生温い物ではない。

 殺意、或いは憎悪、そういった類の物だ。

 

 


「この魔力は…… やっぱドラゴンだろうな。

 アイリィたんを、無事に引渡せると良いんだが」

「死にたくなかったら、きっちり交渉することね。

 ま、問答無用で襲ってくる可能性も高いでしょうけど」

「俺をファイアブレスで丸焼きにしても旨くは無いだろうけどね。

 って、はやっ!

 もう到着するのか。

 奇襲だけは受けないように注意しないとなぁ」


 次郎衛門の言葉が言い終わるかどうか。

 激しい烈風が吹き荒れる。

 それは、全速で飛翔する戦闘機が通り過ぎた時を連想させた。

 その風が徐々に弱まると、そこには巨大なレッドドラゴンが凄まじい咆哮と共に現れたのであった。


「グルアアアアアアアア!

 我が子を奪い去った愚か者共が!

 大人しく我が子を出せ!

 さすれば、貴様等の命だけで許してやろう!

 出さぬと言うのなら、この国の人間共の全てを焼き尽くしてくれるわ!」


 地上に降り立ったレッドドラゴン。

 凄まじい怒気と共に次郎衛門達を睥睨する。

 どうやら相当に御立腹のようである。

 まぁ、我が子を誘拐されて怒らない親は居ないだろうから当然ではある。


「おーい。ドラゴンさんや。

 ちょいと落ち着きなさいって。

 子を返すのは構わないってか、望む所なんだが、俺達を殺すってのは簡便して欲しいんだけど。

 大体、卵を保護して孵化まで見守ったのは俺達なんだぜ?

 感謝される覚えはあっても、殺される覚えはないんだが」

「黙れ! 

 この期に及んで命乞いなど見苦しいわ!!

 子を出さぬというのなら、先ずは貴様等を八つ裂きにした後に、我自らが、探し出すまでだ!」


 次郎衛門は簡単に事の経緯を説明してみるが、怒り荒れ狂っているドラゴンは問答無用とばかりに襲い掛かって来たのである。

 次郎衛門だけではなく、探している筈の、我が子すら巻き込んで殺しそうな勢いである。


「うわっと!

 この子はお前の子じゃないのか?

 子供までも殺す気か!」


 ドラゴンはアイリィが自分の子だとは気が付いていないっぽい。

 アイリィ諸共、次郎衛門とフィリアを殺すつもりらしい。


「あったまに来た!

 フィリアたん! 

 ちょいとアイリィたんの事を頼む!

 あの分らず屋をぶっ飛ばしてやる!!」

「あ、馬鹿! あんたは今、アイリィに魔力吸われて空っぽでしょうが!」


 アイリィをフィリアに預けると、単身ドラゴンに立ち向かう次郎衛門。

 ドラゴンの爪を避け。

 尻尾を避け。

 牙を避け。

 そして有りっ丈の力でドラゴンの横っ面を殴りつける! 

 だが、その一撃はドラゴンの顔を微かに揺らす程度に留まる。

 ドラゴンは反撃の一撃を即座に繰り出す。

 反撃を紙一重のタイミングで回避する次郎衛門。

 一旦間合いを取り悔しげに呟く。


「クソ!

 やっぱ闘気が不十分か……

 さっぱり力が入らねぇ!」

「チョコマカと鬱陶しい人間めが!

 さっさと死ぬが良い!」


 ドラゴンは憎々しげに言い放つとレッドドラゴンの最強の攻撃たるファイアーブレスを放つ為に息を吸い込み始める。


 その時である。

 アイリィが、フィリアの手を振りほどき、飛び出したのだ。


「パパを苛めるなぁぁぁぁ!」


 アイリィは全力で、ドラゴンへ体当たりをぶちかます。

 その勢い、破壊力、正に核弾頭の如し。


「何だと!? グアァァアァァァァ!!!」


 アイリィの小さな体の一体何処にそんなパワーがあるのかと思う程に、強力な一撃はドラゴンの不意を突き、どてっ腹に炸裂した。

 その一撃は、ドラゴンの鱗を砕き、その巨体を容易く吹き飛ばす。

 そのたった一撃で、ドラゴンは白目を剥き完全に戦闘不能になった。

 アイリィ恐るべし。

 だが、アイリィの怒りは納まらない。

 ピクピクと痙攣しているレッドドラゴンに追い討ちを掛け始めたのだ。

 パッと見は可愛く、ポコポコという擬音が聞こえそうな感じのパンチを繰り出すアイリィ。 

 だが、実際に聞こえる音は『ガキン、ゴキン』といった感じであり、あっさりと頑強なレッドドラゴンの鱗を砕きダメージを与えていく。

 このままでは、レッドドラゴンは助けに来た我が子に撲殺されそうな気配である。

 このドラゴンも、結構憐れかもしれない。


「俺は結構決死の覚悟で戦ってたんだけどなぁ……

 ハッ!?

 アイリィたんストップ!

 それ以上殴ったら死んじゃう!」


 アイリィの圧倒的な攻撃力で、既に一方的な蹂躙になっている状況を呆気に取られていた次郎衛門達であったが、我に返ると慌てて止めに入る。

 だが、アイリィは止まらない。

 滅茶苦茶怒っているようである。

 

「こいつパパを苛めた! 許さない!」

「いやいやいや!?

 多分、アイリィたんが、タイムリーにフルボッコにしてる方が、本当のパパだから!

 可哀そう過ぎて涙出てくるから、止めてあげてぇ!!」


 結局、アイリィが落ち着き、攻撃の手を止めるまでには、まだ暫く時間が掛かるのであった。



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