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26話 木っ端微塵!?

「おい、そこのゴブリン諸君。俺の言葉が分るか?」


 何だか偉そうな態度で、ゴブリン達へと話し掛ける次郎衛門。

 まぁ、相手が雑魚の代名詞という事で、ちょっと気が大きくなっているのかも知れない。


「何者だゴブ? 我等の言葉が解るとは珍しい餌だゴブ」


 雑魚の代名詞に速攻で餌呼ばわりされる次郎衛門。

 ゴブリンは人系の種族が好物というだけはある。


「なぁ、フィリアたん。

 何か奴等ってゴブゴブ言ってるけど、必死にキャラ作りでもしてんのかな?」

「多分、御父様の加護のせいじゃないかしら?

 ジローの異世界移住に関しては、無駄なところに力を入れてるみたいだし」


 どうやらゴブリン語っぽい雰囲気を出す為に、神の加護がそれっぽい翻訳を行っているらしい。

 本当に無駄な拘りであるとしか言い様がない。

 鑑定にちょっかい出してきたり、アイテムに変な加護を付けたり、翻訳を無駄に拘ったりと、神の爺さん、実は結構ヒマなのかも知れない。


「何だそれ…… ハア…… 気が抜けるな。

 ところでゴブリン共よ。

 お前等の運んでる卵は、どこで手に入れたか教えてくれないか?」

「これは直ぐ近くで拾ったんだゴブ!

 これだけデカイ卵なら仲間全員が腹いっぱい食えるゴブ!

 ついでにお前も旨そうだからマルカジリだゴブ!!」


 そう言い放つと、次郎衛門の周囲を取り囲むゴブリン達。

 食欲全開である。


「おいおい。そう言う場合は俺じゃなくて、一応ヒロインである筈のフィリアたんを狙うもんだろう?

 そこを華麗に助けて「きゃージロー素敵ー抱いてー」ってな、展開を希望するんだが」


 その言葉を聞いたゴブリン達。

 フィリアに舐めまわす様な視線送る。

 品定めするかの様にじっくりと眺め、そして口を開く。


「こんな不味そうなメス見た事がないゴブ!」

「餌としての価値も抱く価値も無いゴブ!」

「ブスは見逃してやるからさっさと視界から失せろゴブ!」

「ペッ!」

「ぐふッ……」


  一瞬にして、女としてのプライドが木っ端微塵に砕け散るフィリア。

 あまりものショックに、吐きかけられた唾ですら避ける事が出来ない有様だ。

 それもその筈、鑑定結果が正しいのならば、ゴブリン共は紛れも無く本物のブサイクであり、女ならば幼女から老女まで何でも来い! という広大なストライクゾーンを誇る超一流のメージャーリーガーでもあるのだ。

 そんなブサイクなメジャーリーガー達から抱く価値もないと唾を吐き掛けられたフィリアは吐血しながら崩れ落ちる。


「フィ、フィリアたん?

 あいつ等ゴブリンは所詮モンスターで美的センスが違うんだよ!

 だから気にするな! ってダメだ……

 完全に聞こえてない……」


 流石の次郎衛門も、何とかフォローしようと必死だ。

 そして次郎衛門のフォローは正しい。

 確かに次郎衛門の言う通り、ゴブリンの美的センスは人系の種族と違うのだ。

 しかし。

 フィリアには全く届かない。

 それでも、フィリアに必死に声を掛け続ける次郎衛門。

 そして次郎衛門は気付く。

 地面に這いつくばったフィリアの下には、吐血以外にも小さな染みが出来ている事に。


 その正体はフィリアの血涙である。


 これだけでも、フィリアの受けたダメージの大きさが伺い知れる。

 そしてフィリアは這いつくばったまま小刻みに震え始め、マンドラゴラ? を凌ぐほどのどす黒いオーラを噴出しはじめる。

 所謂ところの闇落ちである。


「フィリアたん!?

 ちょっと拙いって!!

 それ女の子がして良い顔じゃないって!!」


 次郎衛門は恐れ戦くが、必死にフィリアを正気に戻そうと声を振り絞る。

 だが、フィリアは完全にダークサイドに落ちていた。

 次郎衛門の呼びかけは届かず。

 何やら、独り言をブツブツと言い始めたのである。


「何で私ばかりこんな目に……

 英雄を導く美しい女神になりたかったのに……

 ジローと関わってからこんな事ばかり……

 ニクイ……

 全てがガニクイ……

 ナマいキナ ごブリンドモも モテもテナ サラモ サラニナノシタをノバすジローモ……

 スベテホロボしテクレル!!!」


 四つん這いで触手状にうねる、どす黒いオーラに取り込まれたフィリア。

 女神というよりは……

 もののけっぽい映画に出てくるタタリ神である。

 フィリア改め、タタリ神ここに爆誕であった。


「鎮まりたまへ!! って言っても鎮まる訳ないよなぁ。

 ってかフィリアたんすんげー怖いな。

 これが恐怖って感情か…… とか言ってみたり?

 とりま、卵だけでも何とか死守しないと……」


 などと、次郎衛門が思案していると、タタリ神が立ち上がりゴブリン共に攻撃を始める。

 その攻撃方法といえば、炎の魔法による無差別攻撃だ。

 そして、今回の炎の色は、赤でも白でもなく黒い。

 はっきり言って禍々しい事この上ない。

 更にその威力は洒落にならない。 


「ゴ、ゴブー!?」

「ブスがヒステリー起こしたゴブー!」

「ブステリーだゴブ!」

「ちょ!? フィリアたん落ち着けって! あっちぃ!!」

「死ネしネシネシねシネシネェエぇェエェェェ!」


 タタリ神は火に油を注ぎ続けるゴブリン目掛けて、火炎弾を叩き込み容赦なく次郎衛門ごとゴブリン共を焼き尽くしていく。

 いや、先ほどの台詞から判断するに、次郎衛門もきっちりと狙っているのかも知れないが。

 次郎衛門は闘気を展開しているので死ぬ事はないだろうが、それでもあちこち焦げていたりする。

 それでも何とか次郎衛門は卵にたどり着くと、卵へと覆い被さり、その身を盾にして必死に卵を守る。

 しかし、最早ゴブリンは一匹たりとも残っていないのに、一向に攻撃は収まる様子がない。

 やっぱり次郎衛門もタタリ神のターゲットであるっぽい。

 どうやら、タタリ神は異世界にやってくる事に、結構な夢や憧れを持っていたらしい。

 だが、理想と現実にギャップが在りすぎて、結構なストレスを抱え込んでいたようだ。

 それがゴブリン共が切っ掛けとなり、ここで爆発してしまったらしい。

 結局、ゴブリン共を焼き尽くした後も辺り一面を火の海にし続け、魔力が完全に尽きてから、ようやくタタリ神は消えたのであった。



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