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24話 サラちゃん争奪バトル決着!?

 ここはギルドに併設されている訓練場。

 今、この場にて、サラを賭けた決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 ちなみにこの場に居るのは、次郎衛門、フィリア、サラ、ムキ男達、そして仕事をサボりたいが為に、審判役を買って出たパンダロンのおっさんである。

 パンダロンのおっさんに関しては、仮にもギルドの幹部ならば、キチンと働けよと思わなくもないが、今回に限っては好都合である。


「こうなったらジローさん!

 どんな手を使ってでも、勝って下さいよ!」


 かなり必死な様子で次郎衛門に詰め寄るサラ。

 確かに好きでもない男3人と交際するのと、1日1回モフられる、どっちかを選べというならば、モフられるほうがマシではある。

 もしも次郎衛門が負けようものなら、3Pビッチライフ待ったなしなのだ。

 そりゃ、サラも必死にもなるというものであろう。

 そして、31年間モテナイ人生を送ってきた次郎衛門。

 サラの言葉に尋常じゃない程の気合が漲り、テンションMAXである。


「ふおおおお!

 サラちゃんが俺を所望している!

 ならば、一頭の雄として応えなければなるまい!」


 などと言い始め、アイテムボックスから酒を取り出し、気付けに一杯とばかりに呑み始める始末。


「ちょ!? 何でいきなりお酒呑み始めるんですか! ホントに勝つ気あるんですか!」

「クハハハ! らいじょうぶ、これも作戦なのだにょ?」


 早くも酔っ払いの様相を呈してきはじめた次郎衛門。

 サラは心底不安そうである。

 一方のムキ男達は舐められてると激高しつつも、作戦会議をしているようだ。

 というか、彼らはここまで脈がない相手と無理やり付き合って嬉しいのだろうか?

 という疑問も湧かなくもないが、彼等は彼等で本気のようである。


「それじゃぁ、ルールの説明をするぞ。

 相手が死ななければ何でもありだ。

 武器を使おうが、魔法を使おうが、アイテムを使おうが好きにしろ。

 相手を戦闘不能にするか、降参させた方が勝ちだ」


 パンダロンがルール説明をするのだが相変わらずのアバウトっぷりである。

 死ななければとか言っているが、もし死んだら勝敗はどうなるのかという事に、触れもしていない。

 今まで、こんなに大雑把でよく死人が出なかったものであるが、次郎衛門もムキ男達にも特に異論はないっぽい。

 馬鹿ばかりである。


「準備は良いか? それでは…… 開始!」




 開始と同時。

 魔法使いが魔法を使う為に集中を始める。

 弓使いは、先手必勝と言わんばかりに矢を連射。

 ムキ男が距離を一気に詰める。

 その一連の流れは熟練を感じさせ、流石にCランクなだけはあるようだ。

 対する次郎衛門言えば。

 ムキ男達を正面から迎え撃つべく迎撃体勢をとっている。


「以前に練習している所を見たが、コイツの魔法は大した事なかった筈だ!

 一気に決めるぞ!!」


 ムキ男が叫ぶ。

 次郎衛門が矢を避ける事によって、出来るであろう隙を狙い大剣を振りかぶる。

 だが、次郎衛門に向かっていた筈の矢は次郎衛門に命中する! っと思った瞬間に消失。

 それと同時に魔法使いの背中へと突き刺さる。


「ぐは!?」


 自身の身に何が起きたのか、理解出来ず崩れ落ちる魔法使い。

 矢には麻痺毒が塗ってあったらしく、早々に一名戦線離脱である。

 次郎衛門に接近しすぎていたムキ男も、何が起きたのかを理解出来ていない。

 辛うじて距離を置いて俯瞰的に見る事の出来た弓使いが、事態を把握する。


「まさか、空間転移!?」

「!?? チィッ!!」


 弓使いの言葉を聞きムキ男は驚愕の表情を作る。

 だが、ほんの数瞬の事。

 すぐさま立ち直り、次郎衛門に攻撃を繰り出すべく大剣を振るおうとする。

 だが。

 その数瞬が致命的であった。


『ボワァァァ!!』


 突如、次郎衛門が火を吹いたのだ。

 その次郎衛門の姿はまるで大道芸ワールドカップで、張り切って火を吹いてるおっさんの姿を彷彿とさせる。

 映像としてはコミカルだが、一歩間違えれば、自分自身が火達磨になるという結構リスキーな業である。


「何!?

 うぎゃあああああああ!!」

「クハハハ!

 大した事ない魔法でも、アルコール度数98度にまで蒸留した酒と一緒に使えば、馬鹿にしたもんじゃないだろ?」


 火達磨になりのた打ち回るムキ男。

 そんなムキ男に高らかに言い放つ次郎衛門。

 そのどや顔っぷりは中々にイラっとするものがある。

 勝ち誇り高笑いを上げている次郎衛門に、背後から弓使いがショートソードを抜き放ち奇襲を仕掛ける。

 弓使いは弓矢での攻撃はリスクが高いと判断したらしい。

 あえて接近戦を選択したようだ。

 しかし。

 奇襲ですらも、次郎衛門は回避する。


「クハ! クハハハ!

 弾丸雨注の戦場を戦い抜いてきたこの俺に!

 そんな速度じゃ当たらねぇよ! 」


 次郎衛門は愛用のピコハンを両手で持ち半身で構える。

 一見隙だらけに見えるが、鬼気迫る奇妙な構え。

 弓使いは警戒し様子を伺う。


「あれ? 

 なんかジローさんの背後に薄っすらと、今にも力強く飛び立とうとしている鳥の霊が見えるような?」


 何時かのフィリアのように、サラがおかしな事を言い出した。

 サラは何度も目を擦り瞬かせる。


「ふーん。サラにはあれがそう見えるのね……

 ま、ジローが居た元の世界を知らなければ無理もないわね。

 私には偉大なる王の英霊が見えるわ」


 などと、フィリアが訳知り顔でサラに説明をし始める。

 それと同時に、弓使いが意を決っし、次郎衛門に斬撃を繰り出すが。

 当たらない。

 次郎衛門は全身を1m程、空間転移させる事によって回避したのだ。

 そのまま滑らかに攻撃に移る。


「食らえ! オウ・サダハール流打撃術の真髄去世生羅葬乱サヨナラホームラン!!!」


 ピコっという可愛らしいSE音とは裏腹に。

 繰り出されるは凶悪な一撃。

 弓使いを錐揉み状態で吹き飛ばす。

 何度か激しくバウンドした後に、訓練場の壁に突き刺さりピクリとも動かなくなった。

 次郎衛門は偉そうに格好付けて真髄などと言ってはいるが要するに1本足打法とかフラミンゴ打法とか呼ばれていたものである。

 ちなみに今回もフィリアが勝手に英霊とか言っているが、本人はまだ故人ではい。


「そこまで!

 勝者ジロー!

 相変わらずの理不尽さだな」

「フウ…… これでサラちゃんが、ムキ男達に無理やり付きまとわれる可能性は排除できたかな?」


 パンダロンの勝者宣告を満足そうに頷く次郎衛門。

 今回の賭けの対象にされてしまっていたサラに笑いかける。

 だがしかし。

 結局は毎日次郎衛門にモフられる事になってしまったサラは嬉しさ半分の微妙な表情である。


「その代わりにあんたがサラにセクハラしまくれる権利を得たんだから、結果はあまり大差ないんじゃないの?」


 サラの内心を代弁するかのようにフィリアが言う。

 元々はフィリアの所為で、こんな事態になったと言えなくもないというのに、フィリアに罪悪感はまるで無いっぽい。

 図太い女である。


「ちょっと待て、フィリアたん。

 俺はサラちゃんにモフを強制する気はないんだぞ?」

「「え!?」」


 次郎衛門の言葉に、思わず信じられないものを見たという表情を浮かべるフィリアとサラ。

 その発言の真意を探るべく次郎衛門を凝視する2人。


「おいおい。2人とも一体俺をどういう目で見てるんだよ。

 嫌がるサラちゃんを無理やりってのも興味が無いって訳でもないんだけど、何時の日か、サラちゃんが自らモフって欲しいって懇願するってのが理想だよな。

 まぁ、しばらくは不意打ち的にモフを狙っていく程度にするさ。

 それに……

 サラちゃんを生贄にして俺の意識を逸らそうっていう、フィリアたんの魂胆に乗るってのも詰まらんからな!」


 ニヤリと悪い顔をしながら次郎衛門はフィリアの思惑をぶちまける。

 それを聞いたサラがジト目でフィリアを睨み、睨まれたフィリアが気まずそうに視線を逸らす。


「クハハハ!

 大体、俺がサラちゃんと良い感じになっちまったら、死ぬまで俺と一緒に居ないといけないフィリアたんは、ずっと寂しい独り身のまま、イチャラブを見せ付けられる事になるんだぜ?

 そんな生活にフィリアたんが耐えられるとは思えんけど?

 小細工は自分の首を絞める事になるぞ?」


 確かに次郎衛門の言う通りだ。

 フィリアがそんなリア充生活を見せ続けられる事に耐えられる筈がない。

 何とか次郎衛門へと反論を試みようとするフィリア。


「そ、それなら私もこ、恋人を――――

「させんよ? 」

「……え?」

「俺の目が黒い内は俺以外の男とラブコメなんてさせんよ。

 全力で潰させて貰う」

「な!?」


 思わず絶句するフィリア。

 確かに次郎衛門が全力で邪魔に入れば、フィリアの恋愛関係は絶望的だろう。

 そして次郎衛門の目は本気と書いてマジと読むくらいに本気マジだったのである。

 つまり今まではフィリアが次郎衛門を監視するだけだったのだが、何故か次郎衛門もフィリアを監視するという状況になったと言える。

 まぁ、よく言うのならば、お互いに更に一歩進んだ関係になったと言えなくもないかも知れない。

 こうなって来ると、フィリアにとって次郎衛門の監視は使命というより罰ゲームみたいなものな気がする。

 今回、散々に振り回されたサラ。

 彼女は何事もなく無事に終わったらしいという事に、心の底から安堵したのであった。



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