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22話 サラちゃん争奪戦!?

「Eランクになった事だし、そろそろゴブリン狩りデビューでもしてみない?」


 フィリアに提案する次郎衛門。

 どうやら、Bランク冒険者でもあるパンダのおっさんに完勝した事で、ちょっとばかり自信が付いたらしい。


「ま、良いんじゃない?

 ゴブリン程度なら、群れが相手でも楽勝でしょうしね」

「そんなに弱いん?

 多少不安あったりするんだけど」

「キングオブ雑魚。

 それがゴブリンよ。

 平均ステEの冒険者でも勝てる位弱いわ。

 ゴブリンメイジやホブゴブリンとかになると、Dランクの魔物になるから、油断は出来なくなるけどね」


 油断できないとか言ってる割には、眼中になさそうなフィリア。

 C+の実力があるフィリアからしてみれば、EでもDでも楽勝なのだろう。


「んじゃ、ギルドに行って、サラちゃんのご機嫌伺うついでに目撃情報を聞いてみようぜ」

「何で目撃情報を聞く方がついでなのよ……」

「それについてはあれだな。

 何故か試験の日以来、サラちゃんの態度が微妙なんだよね

 だから、御機嫌を伺う方を優先しようかなと」


 何故かも何も、通常は女性をイキナリ抱きしめて匂い嗅ぐとかしちゃったら、即逮捕ものである。

 それでも、一応はマトモに対応してくれるサラの心の広さに感謝するべきであるが、次郎衛門はそこら辺の常識を持ち合わせて無いらしい。


「はいはい。ジローが馬鹿なのは充分に分ってるから、さっさとギルドに行くわよ」


 心外だ! と言わんばかりの次郎衛門を無視して、ギルドに向かうフィリアなのであった。


「サラちゃん、やっほーい」

「お、おはようございます。ジローさん」


 相変わらず馴れ馴れしく挨拶する次郎衛門に、やはりサラはどこかぎこちない。

 そんな気配を察して、次郎衛門が再び口を開こうとしたその時。


「おいそこのガキ! テメーがジローか!」


 次郎衛門へと罵声が浴びせかけられたのだ。

 声がした方を見れば、3人組の冒険者の男が居た。

 そのうちの1人の筋骨隆々な如何にも戦士といった風貌の男が、次郎衛門を睨み付けていた。

 ちなみに残りの2人は弓使いと魔法使っぽい感じである。


「確かに俺がジローだが、それであんたらは誰なんだ?」

「そんな事はどうでも良いんだよ!

 サラにちょっかい出した挙句に、無理やり抱いて慰め者にらしいじゃねぇか」

「抱いて慰め者?

 なにそれ?

 サラちゃんって、受付や査定以外にもカウンセリングもやってるん?

 働きすぎじゃね?」

「いえ…… やってませんけど?」


 恐らく、彼等は次郎衛門に不意打ちでハグされて、サラが成仏しかけた時の事を言っているらしい。

 だが、次郎衛門にもサラにも伝わっていないっぽい。

 

「馬鹿ね。それを言うなら慰み者でしょ。

 慰め者とか言っちゃってるし、プププ」


 そしてフィリアが正しいと思われる言葉を教える。

 次郎衛門の破天荒さの影に隠れがちだが、フィリアは元々が最高位の神の娘であるだけに箱入りで我侭に育った。

 それ故に相当に口が悪かったりする。


「う、うるせぇ!

 テメエらが来てから、サラの様子が可笑しくなったんだよ!」


 フィリアに馬鹿にされ、男は顔に青筋立てて怒鳴りだす。

 どうやら、テンションで誤魔化すつもりらしい。

 しかし、その行動はむしろ逆効果と言えるだろう。

 本格的に男の頭は悪いようである。


「ほえ? なんだそりゃ?

 サラちゃんそうなの?」


 次郎衛門は寝耳に水といった感じで、思わずサラに問いかける。


「うぇぇ!? 

 そ、そんな事はない…… と思います?」


 サラは驚きながらも何とか返事をするが、どこと無く目が泳いでいる上に半疑問系だった。

 心当たりはあるのか、ないのか、何とも微妙なリアクションである。

 まぁ、自覚がないだけという可能性も無くはないが。


「そんな事は、ないらしいぞ?

 言い掛かりはやめて欲しいもんだな」


 さも迷惑だという雰囲気で言い放つ次郎衛門。


「いいや! 間違いなくテメーが来てから、サラの様子は可笑しくなった!

 10歳でギルド職員の見習いを始めた頃から……

 ずっと見続けてきた俺から見れば一目瞭然だ!!」


 その言葉を聞いた次郎衛門は、やや青ざめた表情になった。

 最初は得体の知れない者を見るような目をしていたが、やがて尊敬を込めた眼差しに変る。

 そして男に語り掛ける。


「俺は、こんなに男らしく。

 力強くロリコン&ストーキング宣言する変態を、初めて見たわ……

 ちょっと尊敬するかも」

「「え!?」」


 サラと男が異口同音に声をあげる。

 サラは怯えた表情で、男から後ずさるように距離を取り、男は必死にサラに訴えかける。


「ちょ……

 何言ってんだテメーは!

 聞いてくれサラ!

 お、俺は別にロリコンって訳じゃなくって!

 ストーカーって訳でもなくて!

 ただ俺は、お、俺は!!

 お前の事が!!!」


 何だかいきなり告白しそうな勢いで、男が身を乗り出そうとしたその時。

 残りの2人の男がついに動く。


「「ちょっと待ったあああああ!!」」


 その光景は、昔TVでやってたねる○ん紅鯨団を思い出す光景であった。

 お父さんお母さん世代も懐かしさに思わずニヤリの展開である。


「抜け駆けは許さないぜ!

 だが、この3人のうち誰が選ばれても恨みっこなしだ!!」

「え? えええ??」


 3人の男達は勝手に先走り、盛り上がる。

 サラは唐突の展開にただうろたえるばかりだ。


「さーて、面白い展開になってきたぞ!

 果たして一体誰が選ばれるのでしょうか?」


 動揺するサラを尻目に、ちゃっかり解説ポジションに収まる次郎衛門。

 どのような展開、そして結果が訪れるのか。

 固唾を呑んで見守ろうとしたその時。


「「「「ちょっと待ったあああああああ!!!」」」」


 再び場に響き渡る高らかな声。

 声の主達を確認した次郎衛門は思わず叫ぶ!


「お、お前らは!?

 サラちゃんと一緒に、マンドラパニックで気絶した連中!

 それに守衛のおっさん!

 俺とは全く接点のない知らん人達!

 更には!

 フィリアたんに店を吹き飛ばされた、暴飲暴食亭の元店主まで!!」


 見覚えの在る者から、次郎衛門とは全く面識のない者まで、ざっと50人ほどが立っていたのだ。


「いや、ワシの店は修理中ってだけで廃業はしとらんわ!

 勝手に元を加えるでない!」


 どうやら暴飲暴食亭は再起可能だったらしい。

 次郎衛門にも原因の一端はあるので、一安心といったところだろう。


「ところで、皆、サラの事が?」


 話を戻し、顔見知りである守衛のおっさんに真意を問いかける。


「ああ……

 我らはサラ君を、やら、優しい目で見守る会!

 略してSYMのメンバーなのだ!

 我らSYMとしても、今回の件はとても面白そうじゃなくて、見過ごす事は出来ないのでね。

 ならば、いっその事我らも加わってしまおうという結論に至ったのだよ」


 やらしくと言いかけてたり、思いっきり面白そうなって言ってしまっている辺り、どうやら彼らも今回は次郎衛門と同じ側の人間っぽい気がしなくもない。


「ええ? えええ???」


 とりあえずサラには熱狂的な? ファンが居るという事らしい。

 今まで、獣人であるサラに気付かれずに居た彼らが凄いのか、それとも気が付かなかったサラが鈍いのか、それとも面白そうだからノリで参加してみただけなのかは謎であるが、彼らは一斉にサラに向かって手を差し出し、決め台詞を吐き出す。


「「「「第一印象から決めてました! お願いしまっす!!」」」」


 そして最早展開の意味不明さに、完全にぶっ千切られた状態で置いてけぼりになっているサラ。

 そして告白した連中は、一応意中の女性であるサラの返事を静かに待つ。


「さーて、サラちゃんはこの50人以上中から誰を選ぶのだろうかあああああ!?」

「どういう結果になるか非常に楽しみね!」


 次郎衛門とフィリアは突発で起きた面白イベントを楽しむつもりであるらしい。

 次郎衛門はともかく、フィリアも中々の臨機応変さを持ち合わせているようだ。

 

「あ…… あの……」


 冒険者三人+SYM五十人以上に、手を差し出され、完全に困惑というか怯えているサラ。

 何がどうしてこんな状況に追い込まれてしまったのか……

 縋るような目で、次郎衛門とフィリアを見るが、2人はニヤニヤと笑い完全に観戦モードである。

 堪能する気満々だ。

 そして暫く右往左往したサラ。

 そのサラが、ついに口を開く。


「えーと、その…… ごめんなさい!」

「ごめんなさいが来たああああああ!

 クハハハハ!

 バッサリと全員切り捨て御免だあああああ!」


 サラは怯えながらも、ハッキリと拒絶し、それを聞いていた次郎衛門とフィリアは大爆笑だ。

 実際問題として、10歳児を付回す様な連中の告白にOK出す女性は、絶対に居ないとは言わないが、普通はお断りで当然である。


「ふむ。見事に全滅してしまったようだね。

 しかし中々に面白いイベントだった。

 とりあえず今日はここまでかな。

 それではSYMは速やかに解散!」


 守衛が解散宣言をすると、SYMのメンバーはそれぞれ各自帰って行った。

 振られた筈なのに、彼らは全く堪えた様子もなさそうであるからして、本当にSYMなる組織が活動しているのかも怪しいものである。


 逆に3人組の方はといえば。

 散々に邪魔され、茶化された挙句に振られるという、非常な現実に打ちのめされされたのであった。



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