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163話 破壊竜!?

本日6話目。

ラスト3話でっす。

「っぷぅ。何とかなったっぽいかな」

 

 そう言い放った次郎衛門の手には禍々しい赤黒いオーラを撒き散らす封印のカギが握られていた。

 次郎衛門が振るったのは手刀ではなく抜盗術。

 捉えたのはペーシュではなく、その胃袋に在った封印のカギ。

 次郎衛門がペーシュへと上の口とか下の口とかのセクハラ紛いの質問をしていたのは、カギの場所を特定する為であったようだ。

 ペーシュが純潔などという単語を発した為に凄まじい勢いで話が脱線してしまったが、本来の目的はこの為だったらしい。どうやら次郎衛門の重要な事だという主張は嘘ではなかったっぽい。

 

 だがしかし。


「ぐあ、ぐああああああ!?」


 突然、次郎衛門が悲鳴を上げ始める。

 封印のカギのオーラは次郎衛門の腕へと絡みついていた。

 肉体となる筈であったペーシュから離された邪竜は、次郎衛門を己が肉体とする事を選んだのだ。


「これはまずいのじゃー!

 邪竜はジローの体を乗っ取るつもりなのじゃー!」

「なんだと!?」

「ジロー! さっさとそのカギを手放しなさい!」


 フィリアが次郎衛門へと呼びかけるものの、その声は次郎衛門へとは届いていないのか、次郎衛門はもがき苦しむばかりだ。

 見る間に次郎衛門の全身は禍々しいオーラに覆われていく。

 既に肉体の一部には漆黒の竜鱗が生え始めている。


「があああああああああああ!」


 自分の肉体を作り変えられるという未曽有の事態とそれに伴う苦痛に、次郎衛門の表情からは何時もの笑みも完全に失われている。


「アイラ! 何か手はないの!?」

「ここまで邪竜に取り込まれてしまったら…… もう…… 無理なのじゃ……  

 出来る事と言えば完全に邪竜と成り果てる前に倒す事くらいなのじゃ……」

「ふざけるなよ! 俺達にジローを殺せっていうのか!?」

「アイリィはそんなの嫌!」

「それでもやるしかないのじゃー!

 完全に復活してしまったらどれ程の犠牲が出るか想像もつかないのじゃー!」


 次郎衛門ごと邪竜を倒せと主張するアイラ。

 激高するパンダロン。

 そんなのは嫌だと涙を零すアイリィ。

 他のメンバーも口々に反対意見を述べていく。

 何だかんだいっても次郎衛門は周囲の者達に結構愛されていたらしい。 

 そしてフィリアは―――――


「やるわよ」


 フィリアは並々ならぬ決意と魔力を漲らせ言い放つ。


「ふざけるなよ! ジローは碌でもない奴だったけどな!

 それでもあんたに一途だっただろうが!

 それなのに…… 殺すってのか!」

「フィリア! それじゃパパが! パパが!」

「だから何? このまま世界と共に滅びろっての?

 あの馬鹿が何の為に動いて来たと思ってるの?

 それをわざわざ放棄しろっていうの?

 冗談じゃないわ。そんなのは絶対にごめんよ」


 アイリィの言葉にもパンダロンの言葉にも何の感情の揺らぎを見せずに突き放すフィリア。

 次郎衛門ごと邪竜を滅ぼすというその意志は堅いようだ。

 フィリアの剣幕に反対意見を述べようとした他のメンバーも押し黙る。

 そんなメンバーに向かってフィリアは口を開く。


「それに―――― 邪竜さえ始末出来れば、

 ジローは魔法で蘇生出来る筈!

 私が絶対に蘇生させてみせるわ!

 だから先ずは全力で邪竜をぶっ飛ばすわよ!」


 魔法で死者を生き返らせるという事は理屈の上では不可能ではない。

 フィリアが言う様に次郎衛門と一体化した邪竜を倒し、その上で次郎衛門だけを蘇生させるなんて事も可能だろう。

 神に匹敵する程の魔力があればであるが。

 本来の力が振るえるのならともかく、神としての能力を制限されている今のフィリアでは成功する見込みはかなり低い。

 可能性で言うのならば0ではないといった程度の成功率だろう。

 それでもフィリアに怯む様子はなかった。 

 そんなフィリアの様子にパンダロンを始めとする他のメンバーも覚悟を決める。

 

 次郎衛門ごと邪竜を滅ぼす覚悟を。


 そして戦いの口火が切られる。

 アイリィやアポロ達、竜族が炎の吐息を邪竜と化しつつある次郎衛門へと浴びせ掛ける。

 無数の火炎弾が次郎衛門へと炸裂すると爆炎を撒き散らし次郎衛門は炎へと包まれる。

 その熱気は凄まじく呼吸をするだけで、肺が焼けてしまいそうな程の熱量だ。


「熱気は私達に任せてください!」


 すかさずにタコさんと人魚ちゃんが水魔法で押し寄せる熱気を遮断する。

 二人と入れ替わる様に、今度はピコとアイラが進み出た。


「目からビームです!」

「極大風魔法! テンペストなのじゃー!」


 ピコのビームが炎に霞む次郎衛門のシルエットに直撃し、間髪置かず、アイラの造り出した暴風によって炎は暴風を巻き込み火災旋風となり、紅蓮の竜巻と化す。


 そして――――

 

 フィリアの周囲に複数の魔法陣が現れそれぞれの魔法陣が組み合わさり複合型の巨大な魔法陣が構築されていく。


「これでも喰らいなさい!」


 フィリアの声と共に魔法陣からは強烈な閃光が迸り、それは光の濁流となって火災旋風諸共次郎衛門を呑み込み、そして遺跡をも呑みこみ灰燼と帰していく。


 結果を確認したいところであるが、次郎衛門の姿は巻き上がった粉塵がかき消して見る事がない。


「やったか?」


 逸る気持ちを堪え切れずに呟くパンダロン。

 ハッキリ言ってこの系統の台詞はフラグ以外の何物でもない。

 一連の攻撃には全く参加してない癖にフラグだけはキッチリと立てるとか迷惑な男である。

 徐々に視界が良くなり次郎衛門の居た場所が見えるようになっていく。


 そこには。


 黒い繭の様な物が存在していた。


「クッ! 魔法が駄目なら直接攻撃だ!」


 パンダロン、そしてエージェント達が繭へと襲いかかる。


 いや、それは繭ではなかった。。

 翼だ。

 次郎衛門の体格に対して不釣り合いと言える程に巨大な翼だ。

 その巨大な翼が体を覆い全ての攻撃から次郎衛門の肉体を守りきったらしい。

 翼には血管の様なものが張り巡らされ、赤黒い邪竜のオーラが脈動している。


 バサリと翼が翻る。


「ぬおおお!?」


 だたそれだけの事で翼が生み出したエネルギーはパンダロン達を吹き飛ばす。

 そこには半人半竜とでも形容するしかない異形の生物が立っていた。

 両腕は肘から先は漆黒の竜燐に包まれている。

 異形なのは腕や翼だけではない。

 顔も右上半分は竜燐に覆われその瞳も邪竜のオーラと同じ色に変色している。

 その姿は見る者の恐怖心を根源からゆり起す禍々しい異形であった。

 


「ジローなの?」

「パパ!?」


 フィリアとアイリィがほぼ同時にその異形へと問いかける。

 その異形には次郎衛門の面影はほとんどない。

 それでも二人は一縷の希望を求め問い掛けられずにはいられなかったのだ。

 その異形は二人の声に反応したのかゆっくりとフィリア達の元へと視線を巡らせる。

 そのおぞましい視線を浴びただけでタコさんや人魚ちゃんやアイラといった実力の劣る者達は身を竦ませ立っている事すら出来ずに座り込む。

 ひょっとしたらちょっと漏らしちゃったりもしてるかも知れない。

 それ程の存在感をその異形は放っていた。


「答えなさいよ!」

「クハ! クハハハ! ジロー?

 それはこの体の持ち主だった者の事か?

 残念だったな! 

 我は全てを破壊へと誘う破壊の化身!

 破壊竜ジモウエ・ロンだああああああああああああ!」 


 破壊竜ジモウエ・ロン。

 その異形はそう名乗り上げたのだった。


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