158話 パパの事、大好きだよね!?
本日一話目です。
お待たせ致しました。
タイトルを投稿開始当初の「毎日がファンタジー!?」へと戻し、本日中に最終話まで投稿いたしますのでもう少しだけお付き合い宜しくお願いいたしまっす!
「クハ! クハハハ! 呼ばれてないけどじゃじゃじゃじゃーん!
鈴木次郎衛門と愉快な仲間達、面白おかしく此処に参上!」
高笑いを上げながら大軍の前に立ちはだかる次郎衛門。
その手には何故か金属バットと化したピコが握られている。
「はぁ!? 女神とその下僕達でしょうが!」
「パパー!アイリィは娘だよ!」
「エルフ族の長アイラなのじゃー!」
「人魚族の戦士オクティーヌ!」
「その妹、マリーナ!」
「ああ…… その…… パンダロンだ」
順番に名乗りを上げて行くその様は戦隊ヒーロー物の如しである。
全員がノリノリの中ただ一人だけパンダロンのテンションは微妙だ。
こんな連中と一緒じゃ、こっ恥ずかしい気持ちはよく分かる。
まだ一応付き合っているパンダロンはマシな部類だろう。
訳も分からずいきなり次郎衛門に拉致された辺境伯や支部長に至っては、茫然と立ち尽くすのみである。
そして今更サラッと明かされるタコさんと人魚ちゃんの本名にも要注目といったとこだろうか。
まぁ、注目したところでこの先に彼女達の名にスポットが当たる事もなさそうな気もするが。
そんな彼等の背後にはエージェント達やマンドラゴーレム、
その数およそ5000。
ちなみに本日のマンドラゴーレム達は頭部の植物の部分は毒々しい感じの花が咲いていたり実が成っていたりする。
ついでに5体の竜族も控えている。
まだラスクに居る筈の次郎衛門が何故この場にいるのかと言えば。
予めエージェント達を数名程遺跡周辺に派遣していたのである。
エージェントの肉体は次郎衛門の魔力で動いているので割と簡単に次郎衛門とエージェントはリンク出来ちゃうのである。リンクしたエージェントの報告を受け、空間転移でやってきたのである。
ちなみにリンク出来る距離というものは一応存在するだが、同じく次郎衛門の魔力で稼働しているマンドラゴーレムをラジオのような中継アンテナとする事で長距離間のリンクも可能となっていたりする。
ひょっとしたらゴーレム達の頭部の花はパラボラアンテナ的な役割を果たしているのかも知れない。
要するにペーシュ達の言う事全てを真に受ける程、次郎衛門は無防備ではなかったという事らしい。
「邪竜復活を企むお前等に告げる!
大人しく封印のカギを置いて解散しろ!
今なら誰にも罪は問わせない!
相手が王国であろうと冒険者ギルドであろうとだ!
鈴木次郎衛門の名において必ず守ってやる!
必ずだ! だから退け!」
次郎衛門が叫ぶ。
これはかなりの譲歩だ。
破格とも言っても良い条件だろう。
竜族5体だけならばまだ信徒達に勝算はあった。
隙を見てなんとか遺跡へと侵入出来れば良かったのだから。
だが5000ものゴーレムが遺跡を守るとなると話は変わる。
竜族達はゴーレムに防衛を任せ上空から炎の吐息を放つ事が出来るだろう。
遥か天空からの炎による一方的な蹂躙。
それこそが竜族の真骨頂であり最強の魔物と恐れられる所以なのだ。
そんな次郎衛門の呼びかけに信徒達の長は答えない。
これもある意味当然なのかもしれない。
封印のカギを組み上げた水晶玉は一つしかない。
当然それは長が持っている。
乱戦に紛れて封印を解くのが目的である以上、その所在を敵である次郎衛門に知られる訳にはいかなかないからだ。
次郎衛門の叫びは勧告であると同時に信徒達の中枢を把握する為のトラップでもあったのだ。
一応部下にもダミーの水晶玉を幾つも持たせているし、囮となる影武者もいる。
竜族とエルフ族のカギを奪った後、即座に遺跡を襲撃出来なったのはこのダミーを準備する為に時間を割いていた為だったりするという事にしておいて欲しい。
なろうでよく言うところの御都合という奴だ。
ちょっとスタイリッシュに言うのならば、
GOTSU☆GOUである。
「ふん。退く事などあり得ん。突撃だ。突撃の合図をだせ」
長は静かに側近へと命じる。
信徒達にとっては事ここに至って退く等という選択肢はあり得ない事だった。
別に今の生活にそれほどの不満があると言う訳でもない。
しかし聖竜という救世主の存在によって奴隷の身分であった祖先は解放されたのである。
今の自分達があるのは聖竜のお陰だという教育を代々受け続けてきたのだ。
今ここで諦めたのならば、またいつ訪れるかも知れない機会を待ち続けなければいけないのだ。
長年に渡る信仰。
狂信と言ってしまっても良いのかも知れない。
その狂信が信徒達に退くという選択肢を奪い取っていたのだ。
そして信徒達は遺跡へと己の全てを賭した突撃を敢行すべく動き出したのであった。
そんな信徒達の動きを見てとった次郎衛門。
その表情には僅かな苛立ちが見て取れる。
信徒達も完全な悪人ではないと言う事は彼等の目的を知れば明らかだ。
彼等はただ封じられた恩人を助けたいだけなのだ。
その事が次郎衛門の心に波立たせているっぽい。
「ジロー。ここはねじ伏せてやるべきよ。
あいつ等が下手な未練を持たないように」
「フィリアたん……」
フィリアの言葉に次郎衛門はやるせない表情を見せる。
やはり女神であるフィリアはこの辺の割り切りはドライであるようだ。
そして次郎衛門は悪人にはなりきれないっぽい。
そんな次郎衛門に対してフィリアは更に口を開く。
「何より女神である私と敵対した事を心の底から悔い改めさせる為に、徹底的に叩き潰すのよ!
八度生まれ変わろうとも決して忘れる事のない恐怖をその魂に刻みつけてやるのよ!」
強い語気で言い切ったフィリア。
次郎衛門は呆気にとられた表情でそんなフィリアを見つめる。
フィリアは本気でそんな事を思ってはいない筈だ。…… 多分。
何故そんな事を言い出したかと言えば彼女なりの次郎衛門への少しばかりの配慮なのかも知れない。
その証拠に次郎衛門に見つめられたフィリアの表情は見る間に真っ赤に染まっていく。
他の連中はニヤニヤとした笑みを浮かべて見守っている。
「フィリアってパパの事、大好きだよね!」
「はぁ!? だ、誰がこんな奴の事を!
私はジローの馬鹿が全然らしくないのが気に入らないってだけ!
ただそれだけよ! 別に全然好きでも何でもないわ!」
アイリィの無邪気な言葉に顔を染めたまま、言い訳がましい事を言い始めるフィリア。
「俺らしくないか……
確かにウジウジ悩むのは俺らしくなかったな!」
フィリアの不器用すぎる心遣いに次郎衛門の心も吹っ切れたらしい。
「見せつけてやるとしようじゃないか!
俺らしい戦いって奴を! ってな訳で今回のテーマはエコロジーだ!
名づけて異世界ファンタジーにおけるエコバトル! これより開戦だ!」
テンション↑↑で言い放つ次郎衛門なのであった。




