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157話 急展開!?

 とある王城にて。

 玉座に座っているのは筋骨逞しい大男だ。

 衣服の隙間から覗く肌には幾つもの傷痕がありこの男が幾多の戦場を駆け抜けてきた強者であるという事を物語っている。

 そしてその眼光は鋭く、どこか肉食獣を彷彿とさせる。

 邪竜の信徒達を先導し邪竜復活を画策している黒幕。

 この男こそが魔王パックなのである。


「パック様。オリマとジールイからの報告です。

 ペーシュ様は例のSランク冒険者と接触したとの事です」

「そうか」

「ペーシュ様は掴ませていた偽の情報を連中に流したようです。

 見事にパック様の読み通りの展開になられましたな」


 配下の6666魔将の一人の言葉に満足そうに頷くパック。

 どうやら娘がパックの情報を売る事まで織り込み済みであったらしい。

 それ故に腹心の配下であったオリマとジールイをペーシュの元へと送りこんでいたようだ。

 魔王パックは政治の才は無かったのかも知れないが馬鹿と言う訳ではなかったらしい。


「これで奴等は時間にまだしばしの猶予があるものと思い込んだ筈。

 邪竜の信徒共の動きはどうなっておる?」

「ラスク近郊に幾つか作られている信徒共の街や村には

 既に2万を超える者達が集まっている模様です。

 恐らくは今日にも遺跡を襲う事でしょう」


 既に2万を超えるという言葉から察するにそれ以上に集まる事は間違いなさそうだ。

 それ程の数の信徒達が集まっているにも関わらず辺境伯を始めとするドルアーク王国側が信徒の存在には気付けていない。

 それもその筈、魔王パックが邪竜復活を企み始めたのが10年程であるならば、邪竜の信徒達は600年もの間その機会を伺ってきたのだ。

 邪竜の存在が多くの人々にとってただの御伽噺となっても。

 彼等は数百年に渡り潜伏してきた。

 これを見抜けと言う方が無茶な話というものだろう。


「ふむ。万事順調のようだな」

「ハハッ。連中の中には既に魔将達の中でも選りすぐりの者を潜ませておりますれば、

 遺跡を守る竜族も討ち果たせましょうぞ」

「ならば我等も向かうとするか」

「御意」

「フハハハ。哀れな者達よ。救世主と崇拝していた邪竜に滅ぼされる事になるとも知らずにな。だがその死は無駄にはせんぞ。我らが再び栄光を取り戻す糧となるが良い」


 魔王パックは笑う。

 自分達が復活した邪竜を討ち果たし再び英雄として輝く事を夢想しながら。



 ◆◆◆◆ 



「これは一体どういう事だ!」


 信徒達を束ねる長は叫ぶ。

 ようやく悲願としていた邪竜、いや、彼等にとっては聖竜なのだが。

 その聖竜を復活させる機会が訪れ、ラスク近郊に点在していた信徒達を率いて聖竜が封印されているという遺跡を強襲すべくやってきたのだ。

 その数、およそ3万。

 その大半は大した力を持たない者達であるが、ただの烏合の衆と言う訳でもない。

 中には冒険者や兵士として腕を磨いている者もいるし、その志に共感して行動を共にしだした魔族の者達もいる。特に魔族の者達に至ってはそれぞれが一騎当千と言えるほどの実力を持つ。

 まぁ、魔族の者達は確実に遺跡を奪取させる為に魔王パックが送り込んだ者達なのであるが。

 それに数の暴力という言葉もあるように数が多いと言う事はそれだけでも充分な脅威であるのだ。

 事前に偵察した情報によれば遺跡を守っているのは5体の竜族のみであった筈だ。

 もしもラスクの街の冒険者や兵が守りに加わっていたのならこちらの手の者を潜ませ内側から守りを崩すという事も実行出来たのだろうが、残念な事にその気配はないらしい。

 竜族が信徒達が紛れこむ可能性も考えラスク側の戦力を拒んだからだ。

 勿論5体の竜族だけであっても並みの軍隊では歯が立たない相手と言える。

 その中でも一際大きい体格のレッドドラゴンは間違いなくSランクの魔物だろう。

 他の4体も最低でもAランク相当の魔物である事は疑う余地もない。

 だが信徒達の長には勝算があった。

 単純な戦いでは勝ち目は皆無と言えるかも知れないが、竜族達は遺跡を守らなくてはいけない。

 万が一遺跡が破壊されてしまえば封印が解けてしまう可能性もないとは言い切れないのだ。

 勿論並大抵の攻撃では遺跡は傷一つ付かない。

 だが竜族、それもトップクラスのドラゴンの攻撃であれば遺跡の破壊もあり得ないとも言い切れない。

 大丈夫かどうか試す訳にもいかない。

 うっかり封印が解けてしまいました等となってしまったら笑い話では済まされない。

 要するに竜族は常に全力を封じた状態で遺跡を守りきらなければならない。

 更に信徒達側は竜族を倒す必要もないのだ。

 大軍によって乱戦に持ち込む。

 選りすぐりの精鋭が命懸けで竜族を引き付け時間を稼ぐ。

 その間に聖竜の封印を解く。

 封印さえ解かれればあとは聖竜が忌々しい竜族共を滅ぼしてくれるに決まっている。

 それこそが長の勝算だった。


 だがその目論見も阻まれようとしていた。


「クハ! クハハハ! 呼ばれてないけどじゃじゃじゃじゃーん!

 鈴木次郎衛門と愉快な仲間達、面白おかしく此処に参上!」


 Sランク冒険者鈴木次郎衛門とその仲間達、そして無数のマンドラゴーレムが、今正に遺跡へと押し寄せた信徒達の大軍の前に立ちはだかったのである。


何とか完結までの道筋が見えてきましたよ。

笑いをぶちこむタイミングがないのが悩みどころです。

もう少しだけ本作にお付き合いくださいませ。

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