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156話 俺へのメリットが何もないし!?

「必要な情報はこんな所かな。でもまだ終わりじゃないぞ」

「え?」

 

 次郎衛門の言葉に呆けた様な声を上げるペーシュ。


「これだけじゃ足りんよ。

 ほら。この話には俺へのメリットが何もないし?

 俺に多少の役得があっても良いと思わないか?」


 そう言ってニヤリと笑みを浮かべる次郎衛門。

 あ、これは完全にゲスい事を考えている顔っぽい。

 確かに言われてみればこのままでは良い様に利用されているだけで次郎衛門にとっての利益が何もない。

 世界の危機に利益なんて言っている場合じゃないだろうと思うかも知れないが、だからこそリスクに見合う見返りを求めるのは人としておかしな事ではないだろう。

 そんな次郎衛門の表情を見たペーシュの顔が一気に恐怖に染まる。

 どうやら次郎衛門がちょっぴりエロい事を企んでいる事を理解したようだ。

 ペーシュの体が小刻みに震えだす。

 父の命と魔族の未来、そして己の体を天秤に掛けているのだろう。

 そして―――――


「…… 分かりました。

 この貧相な体があなたへの報酬となるというのなら喜んで捧げましょう」


 決意と共に言い放つペーシュ。

 その瞳には薄らと涙が滲んでおり、その手は小刻みに震えきゅっと握り締めている。


「交渉成立だな! んじゃ、早速スリーサイズを――――――」


 次郎衛門は満面の笑みを浮かべペーシュに己の欲望をぶちまけようと言葉を発するが、その言葉はオリマとジールイの両名によって遮られる事になる。


「ジロー殿がそういう趣味の御仁だとは意外でござるが、

 この体をお望みとあらば捧げるにやぶさかではござらん!」

「然り! ばっちこーい! でござる!」


 そう言うなりベルトを緩め出すオリマとジールイ。

 ほんのりと頬を染めるその様は恋する乙女のそれにも見えなくも―――――

 いや、無理だった。全くそんな風には見えない。

 ただの気色悪いむさ苦しい男二人にしか見えない。

 しかし彼等は犯られる気だけは満々っぽい。


「ちょ!? 何脱ぎだしちゃってんの!? 

 お前等ふざけんなよ!」

「でも初めてだから優しくして欲しいでござるよ」

「然り然り」


 次郎衛門必死のツッコミも特に効果を発揮する事はない。

 動揺しすぎてキレもいまいちだ。


「然りじゃねぇよ! お前等いい加減にしろよ! 俺にそんな趣味はねぇ!」

「ジロー…… あんたって奴は……」

「ハッ!? フィリアたん!? 落ちつけフィリアたん!

 こ、これは罠だ! 亮君にしてやられただけなんだ!」


 フィリアのドン引きした視線に完全に錯乱状態に陥る次郎衛門。

 どう考えてもこの状況に三国志の大軍師諸葛亮君は絡んではいない。


「ジ、ジロー…… 周囲に女ばかり侍らせている割に妙に俺に絡んで来ると思ったら

 まさか…… 俺を狙っていたのか?

 済まないジロー。俺にはメアリーという心に決めた女いるんだ……」


 パンダロンも完全に引いているっぽい。

 しかも何時の間にか次郎衛門は振られている。


「違うよ!? おいこら!パンダのおっさん!

 お尻を押さえながら微妙に後ずさるんじゃねぇ!

 ってか皆も俺をそんな目で見るんじゃねえ!

 何でこんな事になってんの?

 俺はちょっとペーシュのスリーサイズを知りたかっただけなのに!」


 何だか人としてとても駄目な事を言いながら崩れ落ちる次郎衛門。

 どうやらパンダロンの一言は次郎衛門の無駄に強靭な精神をもがっつり抉り取る事に成功したようだ。

 次郎衛門からの奇跡の初白星にパンダロンはお尻をきっちりとガードしつつも嬉しそうだ。

 ちなみに次郎衛門は空間把握によって周囲にある全ての物体の大きさを把握しているのでペーシュのスリーサイズは聞かなくてもばっちり把握していたりする。

 それにも関わらず聞きだそうとしていたのは何故かと言えば。

 ペーシュの反応を楽しみたかったからだったりする。

 正直に言うも良し。

 ほんのちょっぴり背伸びして鯖を読むも良し。

 大胆不敵に豪快に鯖を読むも良し。

 次郎衛門はそんな様々な葛藤の中で揺れ動くペーシュの乙女心を堪能する魂胆だったのである。

 もしもペーシュが鯖を読む事を選択した暁には、それとなくその鯖読みは見破っているぞと仄めかしそれによってペーシュが右往左往する様まで楽しむつもりだったのだ。


 最低である。

 屑である。

 ゲスの極みである。 


 しかしそんな次郎衛門の目論見はオリマとジールイという予想外の乱入に儚くも崩れ去ったのだ。

 魔族なのでペーシュの実年齢は不明ではあるが、少なくとも見た目がうら若き少女に対して不必要な碌でもない悪戯を企んだ次郎衛門の自業自得なのだ。

 

 崩れ落ちたままの状態の次郎衛門。

 彼を助けようとする者は誰もいない。

 そんな次郎衛門を嘲笑うかのように下半身丸出しで悠然と佇むオリマとジールイ。

 その姿には最早王者の風格すら漂い始めている。

 何の王者なのかは謎なのだが。

 そのまま特に形勢も逆転する事もなく敗北を迎える次郎衛門なのであった。 


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