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144話 でっかいな!?

 治療の終わったシグルドと人魚ちゃん。

 二人は今度こそ餌、というか囮の役目を果たすべく海へと出ていた。

 二人はボートで沖合に出たあたりでイチャついているところだ。

 勿論活餌でもあるので二人共釣竿から伸びたラインに繋がれているものの、今の二人は怪我をしている様子はない。


「人魚なんだから一々投げなくても泳がせれば良いんじゃないの?」


 というフィリアの至極真っ当な意見が採用された為だったりする。

 この意見を聞いた時の次郎衛門の盲点だったと言わんばかりの表情と人魚ちゃんの目から鱗と言わんばかりの表情はとても印象的だった。


 そんな訳で絶賛活餌活動中、略して活活中のシグルドと人魚ちゃんを砂浜で待機中の次郎衛門達は遠くから眺めている状況だったりする。

 遠目に見る限りは波間にたゆたう二人は中々良い感じの密着具合だった。

 見る限りとか言って見たものの実際にそれを肉眼で見えているのは次郎衛門だけなのだが。

 次郎衛門の見た感じではどちらかと言えば人魚ちゃんが積極的にシグルドにアタックしているようでその姿はとても演技には見えない。というかどう見てもガチっぽい。

 女性しか生まれない種族である人魚が子を残すには他種族の男が必須だ。

 異種族間による結婚は同族同士の結婚よりもどうしてもハードルが高くなる。

 そういった理由から人魚というのは恋愛には積極的らしい。

 しかもシグルドは物件としては申し分ない高物件だ。

 性格、ルックス、実力、身分全てが高い水準だと言える。

 更に今なら日焼けによってボディがかりん糖の如しと普段とは一味違ってレア感も増し増しだ。

 人魚ちゃんでなくてもこの機会を逃すという手はないだろう。


「クハ! クハハハ! 人魚ちゃんの積極的なアプローチにシグルドの奴は押されっぱなしだぜ」

「ほう。流石は我が息子。モテモテであるな!」


 次郎衛門の実況に楽しげに反応するダイン。

 一方楽しくないのは僕っ娘と魔女っ娘だ。

 表情にこそ出さないものの次郎衛門の実況にヤキモキしているというのが良く分かる。

 というか、次郎衛門は間違いなく彼女達の反応を見て楽しんでいる。

 大袈裟に「んま! そんな事しちゃうの?」とか「こりゃ目の毒だわー! アイリィたんは見ちゃだめええええ!」などと騒ぎたてている。

 実際にはアグレッシブな人魚ちゃんの大攻勢にシグルドは戸惑っているだけなのだが。

 フィリアも興味のない体を装っているがやはり好奇心は抑えられないらしく次郎衛門の胡散臭い実況中継に聞き耳を立てていたりする。

 そんな二人の様子を小一時間程実況し続ける事小一時間。


 遂にその時は訪れた。

 

「ん?」


 今まで思いっきりふざけて適当な実況をしていた次郎衛門が何かに気が付いたかの様な反応を見せた。

次の瞬間。

 唐突にシグルドと人魚ちゃんを乗せたボートが消えた。

 それと同時に釣竿が大きくしなる。


「フィッシュオン! 来た来た来たぁ!」


 海へと引き込まれまいと踏ん張る次郎衛門。

 勿論闘気を操って釣竿とラインの強化も忘れない。

 ダインやマルローネ、僕っ娘や魔女っ娘が心配そうに波間に消えたシグルド達の姿を探してみれば。


 居た。


 シグルドは触手に体を絡め取られながらも何とか人魚ちゃんを守ろうとしているようだ。

 人魚ちゃんは水魔法を操りシグルドが溺れない様に奮闘していた。


 そして二人を海中に引きずり込もうとしている生物はまだ遠くて良く見えないがシグルド達に絡みつく触手を見る限りはタコさんで間違いなさそうだ。


 間違いなさそうではあるのだが次郎衛門がリールを巻き上げるに従って徐々にその姿が露わになるとその姿は次郎衛門達が思っていたのとは結構違っていた。

 タコさんの上半身人型の部分はウェーブの掛かったロングヘアーで顔立ちは人魚ちゃんを大人びさせた感じだ。

 これならば人魚ちゃんの似ているという自己申告も頷ける。

 下半身はやはりタコっぽい触手で覆われている。

 実際にその目で見てみると思っていた以上に異様な姿だった。

 その場に居るメンバー達はあんぐりと口を広げていた。


「何あれ……」

「何て立派な……」

「でっかいな!」


 これがタコさんを視認した一行の感想だ。

 そう。タコさんは大きいのである。

 おっぱいがではない。

 いや、おっぱいも大きい事は間違いない。

 次郎衛門の顔をその谷間に余裕で挟みこめるサイズはある。

 しかし何よりその体が大きかったのだ。

 上半身部分だけで軽く2mはある。

 何せ上半身だけで世紀末覇者風味のダインと同じくらいのサイズなのだ。

 下半身の触手部分も合わせると全長は10m近くあるのではないだろうか。

 人魚ちゃんのような愛らしさは微塵もない。

 うねうねとシグルド達に絡みつく触手はかなり気色悪い

 魔物扱いされるだろうなぁというのがタコさんを見た者達の感想だ。

 何故人魚ちゃんや伯爵の情報にこれ程に分かり易い特徴がなかったのだろうか。

 人魚ちゃんや目撃者、被害者達にその辺の事を問い詰めたいところではある。

 そんな間にも次郎衛門はキッチリ仕事をこなしリールを巻き続けていたらしい。

 何時の間にかもう一息というところにまでタコさんの姿は迫っていた。

 というか、別に釣り針もついていないのでその気になればタコさんは何時でも逃げられる筈なのにシグルド達を離す気配は全くない。

 その辺りにタコさんの怨念めいた狂気が感じられる。 


「これで決める! 一本釣りじゃあああああ!」


 気合い一閃。

 次郎衛門の叫び声と共に宙に舞うタコさんと活餌二匹。

 そして砂浜に打ち上げられるタコさん。


「憎い! 幸せそうな輩全てが憎いいいいい! 邪魔をするならお前達も同罪だ! 海の底へと引きづり込んでやる!」


 怨嗟の声を上げ次郎衛門達に宣戦布告をするタコさん。

 今ここにようやくタコさんVS次郎衛門一行のバトルの幕が明けるのであった。 

 

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