142話 こりゃほぼ決まりだろ!?
再びにフィリアに治療された人魚ちゃん。
だが目が覚めた人魚ちゃんの様子はなんだかおどおどして挙動不審だった。
「調子に乗ってすいません。生まれてきてごめんなさい。所詮あっしは傷物の生魚なのでげす。浜辺に打ち捨てられるのがお似合いの無価値な女でやんす」
短時間に二度も瀕死になった所為か人魚ちゃんは若干卑屈になっているらしい。
這いつくばり媚びへつらい始める人魚ちゃん。
自分の事を傷者ではなく傷物と言ってしまっている辺りに彼女の卑屈っぷりが伺える。
「どうすんのよ。壊れちゃってるじゃない。あんた責任とってなんとかしなさいよ」
「いや、俺に言われてもなぁ」
フィリアに言われ頭を悩ませる次郎衛門。
確かに人魚ちゃんがこうなってしまった原因は次郎衛門にあると言える。
一度目に死に掛けたのは次郎衛門が蹴飛ばしたからであるし、二度目に死に掛けたのはアイリィの腹パンが原因だ。アイリィの保護者が次郎衛門である以上は全ての責任は次郎衛門にあると言えるのだ。
「なにとぞ! なにとぞおおお! 姉を探す事にお力添えをくださいませませ!」
這いつくばり迷走し続ける人魚ちゃん。
彼女の明日はどっちだろうか。
「はぁ…… 分かったからもう這いつくばるなって。でも手伝えるのはこの街に居る間だけだからな!」
「本当ですか! いや、本当に助かります!」
次郎衛門の言質をとるや否やあっさりと起き上がる人魚ちゃん。
どうやら人魚ちゃんなりに何とか次郎衛門達の協力を取り付ける為に一芝居打っていたらしい。
結構したたかな面があったようだ。
「この野郎…… まぁ…… 良いか。とりあえず人魚さんに付いて詳しい事を教えてくれよ」
人魚ちゃんの態度の豹変っぷりにイラッとした様子を見せた次郎衛門。
しかしこのままでは何時まで経っても話が進まないので諦めて話を進める事にしたらしい。
そして人魚ちゃんから聞きだした人魚さんの情報がこれだ。
・顔は人魚ちゃんと似ているっぽい。
・おっぱいは人魚ちゃんと違って大きい。
・温和で穏やかな性格。
・かなり強いらしい。
・水系の魔法が得意。
・おっぱいが大きい。
・3年ほど音信不通。
・人魚さんの後に恋人探しに出た人魚達は既に帰郷している。
・おっぱいが大きい。
・足が8本ある。
・おっぱいが大きい。
・おっぱいが大きい。
・おっぱいが大きい。
「ほむ。これだけ強調されるとおっぱいが大きいって事以外の情報が全く頭に入ってこないよな」
そんな事を呟く次郎衛門。
結構重要な情報もありそうなのにおっぱいに気をとられてしまい冷静に分析出来ていないらしい。
まぁ、おっぱいはその大小に関わらずに素敵なものなのでこれは仕方ない。
「ちょっと待ってください! 足が8本あるというのはかなり重要な情報ですよ!」
流石に我慢しきれなくなったシグルドが口を出す。
確かに人魚な筈なのに足が8本あるという事には疑問があって当然だろう。
「シグルド良く気が付いたな!」
「いえ、普通は気が付くと思うんですが……」
「ほむ。流石に3対のおっぱい、都合6個のおっぱいをその手中に収めているだけはある。これ以上おっぱいは要らないってか?」
そう言うなり3人娘の方へと視線を這わす次郎衛門。
勿論視線は胸元にロックオンだ。
次郎衛門の露骨な視線に怯える3人娘。
3人の中で一番おっぱいが大きいのは魔女っ娘だ。
普段はローブで隠れているが水着という薄着の状態で確認出来るそれは巨乳と言っても良いだろう。
魔女っ娘の胸を満足そうに眺め、意味ありげに頷いた後、僕っ娘へと視線を移す次郎衛門。
僕っ娘の胸も中々良いサイズをしている。
大きさこそは魔女っ娘に劣るものの大き過ぎずかといって小さ過ぎずといった印象でスタイルとしては理想的と言っても良いかも知れない。
僕っ娘へは親指を立てサムズアップを送る次郎衛門。
そして最後に騎士っぽい少女へと視線を向ける次郎衛門。
3人の中で一番胸が小さくその事を気にしている騎士っぽい少女は身構える。
しかし次郎衛門の行動は妙に優しい視線を騎士っぽい少女に送るだけに止まる。
てっきり何かされると思っていた騎士っぽい少女は肩透かしを食らったような不思議な感覚にとらわれる。しかしこれではまるで何される事を期待していたみたいではないかという感情に襲われ愕然とする騎士っぽい少女。
そんな騎士っぽい少女のお尻を何者かがつつく。
「何をす…… る?」
ようやく次郎衛門が何かし掛けて来たかと騎士っぽい少女が勢いよく振り返ってみればそこに次郎衛門の姿はなく代わりにあったのはアイリィの姿だった。
別にイヤラシイ目的でお尻をつついた訳ではない。
アイリィにとっては騎士っぽい少女を呼ぶのに丁度良い位置にお尻があっただけの事だ。
そしてアイリィは騎士っぽい少女に向かって口を開く。
「どんぱい!」
「なんかドンマイ! みたいに言われてるぅ!?」
アイリィの瞳は騎士っぽい少女に対する優しさと憐れみに満ちていた。
騎士っぽい少女は打ちのめされる。
自分の胸が大きくないという事は自覚していた。
しかし全くないという訳ではないと騎士っぽい少女は思っていた。
それがまだ年端もいかない少女に哀れまれた上に慰められたのだ。
しかもたった一言で。
そのダメージは背後から心臓を一突きにされたに等しい。
正に致命傷と言えた。
そして騎士っぽい少女はゆっくりと崩れ落ちた。
「んで、何だっけ? 足があるって話だったけ? 俺の股間にも第三の足っていうか真ん中の手みたいなのは付いてるけども」
何事もなかったかの様に話を再開する次郎衛門。
しかもさり気なくシモネタもぶっ込んできている。
「え、ええ。姉さんは珍しいタイプの人魚で足が8本あるのよ」
次郎衛門に問いかけられた人魚ちゃんはちょっと嫌そうな顔をしたものの、崩れ落ち微動だにしない騎士っぽい少女の事も次郎衛門のシモネタの事も何とかやり過ごしながら答えた。
「ほむほむ。足が8本…… 8本ねぇ…… なぁ、伯爵。魔物について聞いて良いか?」
「なんでしょう?」
突然の展開に戸惑いながらも返事をするブルックス伯爵。
今まで物凄く存在感はなかったがちゃんとこの場にはいたらしい。
「この街に出現する魔物ってひょっとしてウネウネとした触手を持つ女の姿をしてるんじゃないか?」
「は、はい。その通りです! ようやく討伐する気になって頂けたのですか?」
若干声を上ずらせながら答えるブルックス伯爵。
ようやく依頼に興味を持って貰えた事が嬉しくて堪らないっぽい。
「ジローひょっとして?」
「ああ。そうだフィリアたん。こりゃほぼ決まりだろ」
ここまで来ればフィリアも次郎衛門が何を考えているのか理解したようだ。
「ジロー殿。一体どういう事でなのでしょうか?」
シグルドの問いかけに次郎衛門は瞬く間に砂地へと絵を描き始める。
絵というよりは立体感を持たせた精巧に作られた砂のレリーフだった。
そうして出来あがったレリーフは人魚ちゃんを大人っぽくしたような女性の上半身で下半身は蛸のような触手を持つ姿のものであった。
「これって姉さんにそっくり!」
「これは街を脅かす魔物そのものですね!」
その絵を見た人魚ちゃんとブルックス伯爵が同時に声を上げた。
そしてお互いの言葉に困惑した表情を浮かべる。
次郎衛門は二人の反応に満足そうに頷き口を開く。
「間違いないな。この街に出没しているという魔物と人魚ちゃんが探している人魚さんは同一人物だ!」
と、言い放つ次郎衛門なのであった。




