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12話 レッツ採集!?

 森の中を小一時間程歩いた頃。

 不意にフィリアが声を上げる。


「あった! 薬草見つけたわよ!」


 フィリアは丁寧に根まで採集しアイテムボックスにしまう。

 その表情は嬉しそうであり、そして自慢げでもある。


「そういえば、この辺にはまず生えてないでしょうけど、マンドラゴラって植物があるのよね」

「マンドラゴラ?何か聞いた事があるような?」

「地球でいうところの、マンドラゴラにかなり似た性質を持っているわね。

 強い魔力が満ちた土地に生えやすくて、根っこが二十cmくらいの人みたいな形をした植物よ。

 特定の品種って訳ではなくって、強い魔力によって変化した草がマンドラゴラになるのよ。

 だから葉や茎だけ見ても見分けがつかないのよね。

 高価な魔法薬の材料になるから、運よく入手出来ればかなり儲かるわよ」


 フィリアの説明からすると、どうやら運が良ければ一攫千金な植物の話らしい。

 ただし、フィリアの話から察するに、生えている状態では見分けが吐かない。

 マンドラゴラを捜すだけならば、その辺の草を片っ端から引っこ抜けば良いのだろうが、それでは如何せん非効率である。

 となると、採集しようとした薬草か毒消しがマンドラゴラ化していた場合にのみ、入手できる物だと思っていた方が良さそうだ。


「ほえー。そりゃ是非ともゲッチュしてみたいな。」


 次郎衛門も本当に入手出来るとは思ってないようで、適当な相槌を返す。


「もし、見つけたら、注意するべき点があるのよね。

 抜くと精神を揺さぶる断末魔のような悲鳴を上げて、抜いた者が驚いた隙に走って逃げるの。

 だから何があっても動揺しないような心構えが必要ね。

 ま、大抵が強い魔力を持った魔物の住処か、その遺骸の周辺に生えるものだから、この辺にはないでしょうけど、一応注意だけはしておきましょ」


 長々と力説していたフィリアであったが、要はもしかしたらお宝が取れるかもしれないから注意しとこうという話のようだ。


「ほーい了解って…… これ…… そうじゃないか?」


 次郎衛門がさっそくそれらしいもの見つけたらしいが、確信が持てないのか疑問系でフィリアに声を掛ける。


「え!?」


 フィリアが反射的に振り返ると『ソレ』は居た……

 確かに、次郎衛門の掘り出したであろう植物は、人の形をしてはいたのだが……


 まず、大きさがおかしい。

 通常のマンドラゴラは、二十cm程のサイズなのだ。 

 だが、『ソレ』はどう見ても成人男性と同程度ある。

 というか、成人男性の遺体にしか見えない。

 次郎衛門が掘り起こしていると言うよりは、殺人犯が遺体を証拠隠滅の為に埋めている様に見えるのだ。

 その全身からは、どす黒いオーラが立ち上っており、そして目と口の部分には何も存在しておらず、ただ虚無だけがあった。

 地獄の底から災厄を振りまくべく這い上がってきたような『ソレ』は心の弱い者なら見ただけでトラウマを刻み込むだろう。

 そしてフィリアは、不運にも『ソレ』と目? が合ってしまったのだ。


「「ギャアアアアアアアアアア!!!!!??!?」」


 二つの絶叫が同時に鳴り響く。

 一方はフィリアのもの。

 もう一方は『ソレ』のだ。


 そして次の瞬間には、フィリアは『ソレ』を逃がすまいと格闘する次郎衛門を視界に納めたまま意識を手放したのだった。



「!? ここは……!!!」


 フィリアが目覚め、そして気絶する前の記憶を思い出し、思わず身構える。


「よう! フィリアたんお目覚めかい?

 自分が注意するように言ってた割にフィリアたんが気絶しちゃうとか、ちょっと笑わせて貰ったわ」


 次郎衛門は思い出したかの様にクハハっと笑う。


「あんなのがマンドラゴラな訳ないでしょ!!

 なんなのよあれ!!

 ホントにショック死するかと思ったわよ!!!」

「え…… あれマンドラゴラじゃないのか?

 折角沢山捕まえたんだけどなぁ」


 次郎衛門が残念そうに指を差す先には。

 『ソレ』が山の様に積み上げられていたのである。

 


「ギャアアアアアアアア!!

 なんであんなに増えてんのよ!?

 あんた、私をショック死させたいの?」


 山の様に積み上げられた『ソレ』は、未だにどす黒いオーラを放っており、再び悪夢の光景を見せ付けられたフィリアは、最早泣き出しそうな顔で次郎衛門に詰め寄る。


「それなんだけどさ。

 どうやら俺が草を掘り起こすと、100%の確率でマンドラゴラ? になるっぽいんだよな。

 何度か試してみた結果が、そこの山の様に積み重なったマンドラゴラ? って訳だな。

 ってか、マンドラゴラ? って言うのも面倒だから鑑定してみてくれよ」

「あんたの規格外っぷりは知ってたつもりだったけど、ホントに人間なのかも怪しくなってきたわね……」


 ため息混じりに呟くフィリア。

 そんなフィリアをみた次郎衛門が


「規格GUYと読んでくれたまい。」


 妙なポージングをとって自慢気に言い放つ。


「うるさいわ!

 ホントいつもいつもイラッとさせるわね!!

 ハァ…… 仕方ない鑑定するわよ」


 その鑑定結果がこれである。



マンドラゴラ?


次郎衛門の魔力で、限界を超えた成長をしてしまったマンドラゴラ。

精神力の弱い者は、その姿を見ただけで気絶したり、心に傷を負う可能性がある。

抜いた時に発する悲鳴は、精神力の弱い者をショック死させたり、錯乱させたり、恐慌状態に陥らせたりもするので、フィリアがちょっと漏らしてしまったとしても仕方がない事なんじゃよ?

どんまい!

ちなみに加工する為に磨り潰す時にも、悲鳴を上げるので注意が必要。

扱いは難しいが、様々な薬品や錬金術の素材になりうる可能性を秘めているんじゃよ。




 相変わらずな感じの鑑定結果である。

 説明を読む限り、一応はマンドラゴラの端くれであるらしい。

 だが、次郎衛門が反応した部分はそこではない。

 何処かと言えば。


「フィリアたん…… まさか?」


 次郎衛門が、期待に満ちたキラキラとした眼差しでフィリアを見る。

 その瞳の煌きはまるで少年の様だ。

 だが、その表情は完全に変質者そのものである。


「な…… 何こっち見てるのよ!

 漏らしてない!!

 私は漏らしてないんだからね!!

 って言うかあのハゲ一体何してんのよ!」


 フィリアは動揺しまくり、神に悪態をつきながら必死にお漏らしを否定する。 まあ、確かに気持ちは分からなくもないが。


「まぁ、実際の所はどうでも良いか。

 想像しただけで、ごはん3杯はいけるし」


 そう言ってニヤニヤする次郎衛門には、フィリアが何を言っても無駄な状況、というか、むしろ喜ばせるだけだったりする。


「うう…… 何で私がこんな目に……」


 がっくりと項垂れるフィリア。

 そんな彼女に、次郎衛門から更なる追撃が掛かる。


「それじゃ、フィリアたん。

 マンドラゴラ? を、アイテムボックスに仕舞ってくれよ。

 持って帰って売り払おうぜ」


 それを聞いたフィリアは驚愕に目を見開く。

 そしてその顔色は瞬く間に青褪めていく。


「嫌よ! あんな汚らわしいもの容れられる訳ないじゃい!

 って、こら!

 無理やり(マンドラゴラを)押し付けないでよ!

 こんな大きいの入らないわよ!

 嫌ああああああああああ!!」


 必死の抵抗を試みるフィリア。

 だが、純粋な腕力では次郎衛門の方が上であるらしい。

 その肉体にグイグイとマンドラゴラを押し付けられてしまっている。

 

「だって、フィリアたんってば、私のアイテムボックスなら容量充分って自慢げだったじゃん。

 ほーら、サッサと(アイテムボックスを)開かないとガンガン押し付けちゃうぞ~

 クハハハハハ!

 ほらサッサと(アイテムボックスを)開けよ!」

「やめてえええええ(マンドラゴラを)捻じ込まないでえええええ!!」

「クハハハ!

 まだ終わりじゃないぞ。

 ほ~らもう一回」


 次郎衛門は完全に悪乗りしている。

 音声だけ聞くと、完全に陵辱系の映像の撮影現場であった。



 数十分後。


 ぐったりと力尽きたフィリアと、妙に艶々した次郎衛門の姿があった。


「あんた…… 覚えときなさいよ……

 いつか復讐してやるんだからね」

「折角の貴重品を破棄するなんて勿体ないじゃん。

 まぁ、ちょっと悪乗りしすぎた感はあるかな。

 ごめん。

 これ売れたら目一杯贅沢でもしよう。

 んじゃ、帰るか」


 一応謝ってはいるものの、次郎衛門にあまり反省した様子はない。

 サクッと帰り支度を始めだした。

 だが、フィリアは動かない。


「ちょっと…… おんぶして」


 フィリアが少し躊躇うように次郎衛門に声を掛ける。


「ん? なんて?」


 次郎衛門が、不思議そうに聞き返す。


「おんぶしてって言ってるのよ!

 腰が抜けて動けないの!

 あんたの所為なんだからサッサと背負いなさいよ!」

 

 どうやら、フィリアは度重なるショックが大き過ぎたのか、腰が抜けてしまい、自力で歩けないようだ。


「クハハハ。

 仕方ないなぁ。

 ほら、ちゃんと胸を押し付けるように掴まるんだぞ?」


 軽くセクハラを交えながら、背中を差し出す次郎衛門。


「五月蝿い! 

 これ以上変な事をしたら、背中から刺し殺すからね!」

「へいへーい。んじゃ、しっかり掴まっておけよ」


 結局、足腰が立たなくなっていたフィリアは、次郎衛門が背負って帰る事になったのであった。


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