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137話 激闘ビーチバレー!?

遅くなって申し訳ないです。

 次郎衛門達がシープリーズの街に来てから既に4日が経っていた。

 初日はメイドインフィリアの大寒波で海どころの騒ぎではなくなり、その寒波によって作られた氷が解けるまでに丸三日も必要だったのである。

 そういった理由からようやく海を堪能出来る状況になったところだったりする。

 何日もラスクの街から離れてても平気なのかと思うかも知れない。

 そこは通信用の魔道具で異常事態があったら連絡するように支部長に伝えてあるので大丈夫らしい。

 そんな訳で本日こそは全力で海を堪能しようとやってきた次郎衛門達。

 

 

「よっしゃ! 今日こそは遊びつくしてやろうぜ! 何やる何やる?」


 笑顔満面で叫ぶ次郎衛門。

 その笑顔には数日前に下らないダジャレを言い放った時の面影はない。

 そんな次郎衛門に対してそれぞれが好き勝手に要望を言い出し始める。


「ジロー殿! 余はビーチバレーなるものを所望するぞ!」

「パパー! アイリィ海の幸食べたい!」

「マスター! 城です! 永住出来る位立派な砂の城を作りましょう!」

「断然スイカ割りなのじゃー!」

「わ、私はちょっと海に入ってみたいです」

「ジロー殿、私はビーチフラッグというものに挑戦してみたいのですが」

「あのー…… 出来れば魔物を退治して頂きたいのですが……」


 それぞれの主張はこの上なく見事にバラバラだ。

 ここまで足並みの揃わない集団もそうないだろう。

 一番まともな意見を出している筈のブルックス伯爵の悲痛なまでの弱々しい訴えが切ない。


「あんた達馬鹿じゃないの!? 青い空! 青い海! 焼けた砂浜と来たら焼けた鉄板で金網でバーベキュー、ここは敢えてBBQと言わせて貰うわ! BBQに決まってるでしょうが!」


 発言者はフィリアだ。

 あれ程日焼けを忌避していた癖に食べ物を焼く事に関してはOKであるらしい。

 我がままな女である。

 

「ほむぅ。どれもこれも捨てがたい提案ではあるなぁ。んじゃ、やるか!」


 次郎衛門もノリノリだ。

 こうして炎天下の中『時間無制限全員の欲求叶えちゃうぜメドレー』が開催される事となったのだった。

 

 


 まず一番先に挑戦したのはビーチバレーである。

 ラスク組と王都組へとチームを分けて早速試合開始だ。


「そーれ!」


 掛け声と共にボールを打ち出す次郎衛門。

 「とう!」「なんの!」 といった具合に皆一生懸命にボールを繋いでいく。

 その表情には余裕は感じられずどちらかと言えば必死だと言えるかもしれない。

 それもその筈、このビーチバレーは普通のビーチバレーではないからだ。


 実はボールがスイカだったりする。

 なるべく手っ取り早く全ての要望を叶える為にスイカ割りとビーチバレーを混ぜ合わせた新種のスポーツその名もスイカバレーだ。

 スイカでバレーボールなんて出来る訳ないと思うかも知れない。

 地球では無理かも知れないがこの世界では意外と出来ちゃったりする。

 どういった理屈かと言えばスイカに触れる瞬間にスイカが割れない様に闘気で強化する。

 これが以外と難しく闘気を扱う訓練としても意外と良い感じっぽい。

 これは新設する学校の取り入れても良いかも知れないなどと次郎衛門は企んでいたりする。

 ちなみにこの面子の中で闘気を操れないのはサラとブルックス伯爵だけだ。

 仕方ないので二人には大人しく審判なんぞをやって貰っている。

 仲間外れにしたみたいで悪いなと謝る次郎衛門だったが二人はむしろ嬉しそうに審判に回っていたのが印象的だった。

 食べ物を粗末に扱っている様にも見えなくもないがスイカを割ってしまったらそのスイカを責任もって全て食べるという特殊ルールがあるので苦情は勘弁して欲しい。 


 そんな訳で砂塗れのスイカなんぞ誰も食べたくないといった理由から皆必死にボールを繋いでいるのだ。

 そしてこの対決はより高ランクである次郎衛門達ラスク側が有利かと思うきや、実はそうでもない。

 何故なら―――――


「フハハハハ! これは余に向いた競技であるな!」


 王都側には国王ダインがいるのだ。

 別にダインの闘気コントロールが優れているという訳ではない。

 この面子の中で言えばどちらかと言えば下手な方だろう。

 それにも関わらず有利だと言い切れる理由はずばりその体格である。

 ダインは某世紀末覇者ばりに立派な体躯の持ち主である。

 あまりにも立派すぎて夫婦の営みに支障を来たしていた事がある程に立派だ。

 要するにダインは立っているだけでネットから顔が飛び出るのである。

 ウォール・○リアからあのでっかい奴が顔を覗かせているシーンをイメージして貰えたら分かり易いかも知れない。

 はっきり言ってバレーボールに関してはダインは存在自体が反則といえた。

 だた立ちはだかる。

 それだけで次郎衛門達ラスク組はネットよりもウォール・マ○アよりも高い壁に悩まされている。


「くそ! 王様デカ過ぎだろ!」


 自分でチーム分けをした癖に悪態を吐く次郎衛門。

 ダインがネットよりもデカイという事は最初から分かっていた筈だ。

 それにも関わらずに敵チームに入れておいてこの言い草だ。


「フハハハ! 余の前に屈するが良い! 諦めて砂塗れのスイカを食べるのだな!」


 ノリノリで立ちはだかるダイン。

 夫の雄姿をほんのりと頬を染め見つめるマルローネ。

 そんな両親の睦まじい様子を苦笑しながらも見守るシグルド。

 王都組のチームワークは万全そうだ。

 それに対してラスク組はといえば――――


「ジロー! 何でこんな組み合わせにしたのよ! もし負けたらあんた全部食べなさいよ!」

「マスター、私はスイカを食べる事が出来ませんよ」 

「パパー! アイリィは好き嫌いなく何でも食べれるよ!」

「いやなのじゃー! 砂塗れのスイカはいやなのじゃー!」


 次郎衛門以外のメンバーはまだ負けてもないのに次郎衛門にスイカを押しつける気満々っぽい。

 一人だけむしろ食べたそうな子がいるのが救いといった感じだ。


「俺は諦めない! 鈴木次郎衛門の辞書に敗北の二文字はない!」


 次郎衛門は声高らかに叫ぶ。

 いや、あるだろう。

 この前トランプで反則負けしたばかりだろうという生温いメンバー達の視線が次郎衛門へと突き刺さる。

 そんな視線に若干怯む次郎衛門だったが気を取り直して再び叫ぶ。

 

「大丈夫だ! フィリアたん! トスを頼む!」


 次郎衛門がフィリアに叫ぶ。

 その目にはフィリアに対する信頼の色が見て取れた。

 

「ふ、ふん。 私を誰だと思ってるのよ。任せなさい! その代わり絶対に仕留めなさいよ!」


 次郎衛門の言葉に結構あっさりとやる気が復活したフィリア。

 我儘な女ではあるが頼られるとそれはそれで嬉しいらしい。

 フィリアは次郎衛門へと絶妙なタッチでトスを上げる。

 その瞬間スイカは炎に包まれた。

 フィリアが武器に魔法を付与する応用でスイカに炎の魔法を付与したのだ。

 

「ナイストスだ! フィリアたん!」


 次郎衛門は叫ぶとスイカを闘気で更に強化しつつ強烈にアタックする。

 

  


 フィリアの付与と次郎衛門の闘気によって恐るべき破壊力を秘めたスイカ。

 その姿は天空を駆る一筋の流星だ。


 そして流星は立ちはだかるダインに反応する事すら許さずにその秘めたる破壊の力をぶちまける。


「ガハッ!」


 凄まじい衝撃に吹き飛ぶダイン。

 並みの者なら確実に即死だろう。

 だが驚異的な忍耐力を持つダインならば死ぬ事はないと思う。

 

 そしてダインに衝突した衝撃で砕け散るスイカ。

 その砕けた破片一つ一つがフィリアの付与を纏い王都組の陣地へと炎の雨となり降り注いだ。


「ぐああああああ!」

「熱! 熱い!」

「いやああああ!」

「跡が残っちゃう!」


 水着で無防備な状況での炎の雨の襲来だ。

 成す術もなくのた打ち回るシグルドとそのハーレム軍団。

 完全に地獄絵図である。

 ちなみに王妃のマルローネだけはちゃっかり空間転移を使い範囲外へと脱出していたりする。


「クハ! クハハハ! 大勝利ぃ!」


 こうして『時間無制限全員の欲求叶えちゃうぜメドレー』第一弾スイカバレーは次郎衛門の勝ち名乗りと共に終了したのであった。

実は次郎衛門の手も若干焦げてたりして。

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