表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/167

134話 チューもするの!?

 水着が見たいが為にあっさりと海へ行く事を決断した次郎衛門。


「でもシープリーズの街って凄く遠いですよ。ジローさん達ってラスク周辺で活動するつもりなんじゃ?」


 次郎衛門の即決っぷりにサラが慌てて先程まで思い浮かべていた距離という問題点を述べる。


「その点は問題ない! おーい! 皆集合!」


 次郎衛門がメンバー全員に呼び掛ける。

 次郎衛門の呼び掛けにその場に居なかったフィリア、ピコ、アイラが集まって来る。


「五月蠅いわね。受ける依頼は決まったの?」


 面倒臭そうに言うフィリア。

 彼女はいつも文句は言うが結局は次郎衛門に付き合う。

 フィリアも箱入りのお嬢様でいるよりは次郎衛門達と一緒に騒いでいる方が楽しいのだろう。

 一番最初に次郎衛門の所にやって来たのがその証拠とも言える。


「そういえば私は依頼を受けるのって初めてです。楽しみです」


 そう言えば確かにピコは討伐依頼の対象となっていた事はあっても依頼を受けるのは初めてだ。

 その瞳は好奇心に煌めいている。

 やはり宇宙人と言えどもこういった事には心躍る様だ。


「どんな依頼も我の魔法で一発解決なのじゃー」


 居候の筈のアイラも一緒に同行する気満々の様だった。

 ハイエルフであるアイラは一応世界でも屈指の魔法の使い手でもある。

 若い頃には冒険者として活動もしていた事があるらしく、ちゃっかりAランク冒険者でもあったりするらしい。というか見た目が少女のアイラの若い頃と言われてもいまいち想像がつかないが。


 全員が集合したのを確認した次郎衛門が意気揚々と語り出す。


「次の俺達の目的地は海だ! 皆で海水浴と洒落こもうぜ!」


 どうやら魔物の討伐の件は既に次郎衛門の頭にはないらしい。

 メインは海水浴もとい、水着鑑賞であるようだ。

 海が見たいというだけで依頼を選ぶアイリィもアイリィなら、水着が見たくて依頼自体をそっちのけな次郎衛門も次郎衛門だ。正にこの親にしてこの子ありと言ったところだろうか。


「えー? 海水浴ってわざわざ紫外線に素肌さらして肌を痛めつけるだけじゃないの? 日焼け対策をしなきゃいけないじゃない」

「わーい! 海! 海! パパありがと!」

「海ですか。潮風と海水で錆びない様にしないと」

「400年ぶりの海なのじゃー! 楽しみなのじゃー!」


 口調とは裏腹にばっちりと日焼け対策を施し、海を満喫する気満々なフィリア。

 無邪気に喜ぶアイリィ。

 潮による錆び対策に思案するピコ。

 久しぶりの海にはしゃぐアイラ。 

 言葉や態度こそ違えど全員海に行く事自体は楽しみにしている様だ。


「だからシープリーズの街は遠いんですって! ジローさん! 私の話を聞いてますか?」


 全くもって問題が解決していない現状に声が自然と厳しくなるサラ。


「大丈夫だって! それじゃ早速出発進行!」


 次郎衛門は自信満々に言い放つと空間魔法を使いにぽっかりと穴をあける。

 そしてその穴の中にサラを押しこみ始める。


「ちょ!? ジローさん!? 嫌! 何か怖いです!」


 どこに拉致されるのかも分からず必死に抵抗するサラ。


「クハ! 大丈夫だよ。サラちゃん! 怖くないし、痛くもしないよ!」


 必死に抵抗するサラもなんのその。 

 ちょっぴり如何わしいニュアンスでサラに語り掛けながらも次郎衛門は問答無用に穴へと押しこんでいく。

 

 サラにとっては前方の穴、後方の次郎衛門という状況だ。

 どう見ても既に詰んでいる状況である。

 唯一次郎衛門を止めれそうな人物であるフィリアですら穴を潜る為に順番待ちをしている始末である。しかも待たされているという事にややイラついている気配までサラには伝わって来た。

 そんな事を考えている間にも背後から迫る次郎衛門のプレッシャーは増す一方だ。

 だがサラの必死の抵抗の甲斐あってか、心なしか次郎衛門の息も上がって来ているように感じる。

 いや、そうではない。

 そもそも獣人であるとは言えサラのステータスはそれ程高いものではない。

 次郎衛門がその気になれば一瞬で押し込める筈なのである。

 それにも関わらず何故次郎衛門は一息に押し込まないのかといえば。

 次郎衛門は単純にサラの体の感触を楽しんでいるのである。

 要するに次郎衛門は息が上がっているのではなく、獣っ娘であるサラにハアハアしていただけなのだ。

 つくづく次郎衛門という男は碌でもない男であった。

 その事実にサラが気が付いて抵抗を諦めたのはこの数分後であったという。

 

 ◆◆◆◆ 

 

 全てを諦めた感のあるサラが穴を抜けるとそこは華やかな街並みが広がっていた。


「あの? ここは?」


 サラは今までにラスクの街から出た事がない。

 ひょっとしたらここがシープリーズの街なのだろうか?

 そんな疑問の目を次郎衛門へと向けるサラ。

 

「サラちゃんはラスクから出た事ないんだっけか。ここは王都だよ」

「お、王都!? この一瞬で?」

「そうだよ。俺は一度来た事のある場所なら転移出来るんだ」


 あっさり言い放つ次郎衛門に驚愕の眼差しを向けるサラ。

 本来ならラスクから王都まで馬車で一カ月近く掛かる程遠い。

 それが次郎衛門に掛かればほんの一瞬だ。

 ちなみに神の爺さんををこの世界に無理やり連れて来た事もあるので異なる世界であっても転移は可能であるっぽい。

 多分その気になれば日本にも帰る事が出来るだろう。

 ちなみに次郎衛門の転移にすっかり慣れ切っているフィリア達は特に気にした様子もない。

 サラにとっては異常な事でも彼女達にとってはありふれた日常の一コマなのだ。


 そんな次郎衛門を呆けた目で見つめるサラ。

 サラも次郎衛門の規格外っぷりは話には聞いていた事はあったが実際に体験させられてようやく実感したようだ。 


「さて、折角王都に来たんだからあいつ等も誘うとするか!」 

「王都で出来た知り合いの方ですか?」


 そんな事を言い出す次郎衛門にサラが問いかける。

 今度は一体どこへ行くつもりなのか不安そうだった。

 まぁ、次郎衛門を相手にしていたらこんな反応になってしまうのも仕方ないとは思う。


「それじゃ、行こうか」


 再び空間に穴を開けると今度は先頭を切って転移する次郎衛門。

 サラも含めた他のメンバーもそれに続いて転移して行く。



 次郎衛門が転移した先には食事中と思われる一人のイケメンと三人の美少女が居た。

 一人のイケメンと三人の美少女とは勿論シグルドとそのパーティーメンバーの騎士っぽい少女、シーフの僕っ娘、そして魔女っ娘の三人である。


「ふーふー はい! 王子! あ~んして?」


 しかも騎士っぽい少女があ~んをする為にシグルドにスプーンを差し出しているラブラブな場面だったりする。

 そんな場面に突如現れる次郎衛門。

 絶妙なタイミングである。

 最悪のタイミングとも言える。

 そしてシグルドに差し出された筈のあ~んを容赦なく奪う次郎衛門。

 見事としか言いようのないインターセプトだった。

 

「な!?」

「ジ、ジジ、ジロー殿ぉ!?」


 突然の出来事に騎士っぽい少女はフリーズしシグルドは動揺しまくって呂律が可笑しな事になっている。

 まぁ、確かに他人に見られたら物凄く恥ずかしい場面ではある。

 シグルドと騎士っぽい少女には御愁傷様としか言いようがない。

 

「旨い。絶妙なふーふー加減だな。ぐっじょぶと言っておこうか」

 

 もぐもぐと咀嚼しながら騎士っぽい少女へと親指を立ててサムズアップをして見せる次郎衛門。

 

「リア充王子って改名したら?」

「チューもするの?」

「避妊はした方が良いですよ」

「若いって事は素晴らしいのじゃー」


 などと、フィリア達もニヤニヤしながらシグルドを冷やかす。

 冷やかされ赤面しまくるシグルドと騎士っぽい少女。

 特に年端もいかないアイリィのチューもするの? 攻撃は二人のメンタルをがっつり削っているっぽい。

 ちなみに僕っ娘と魔女っ娘は関係ないような素振りを見せてはいるが実は順番であ~んしていたりするので自分の時じゃなくて本当に良かったと内心胸を撫で下ろしていたりする。


「っていうか何だよお前等!」


 騎士っぽい少女が怒鳴る。

 恥ずかしさと動揺を誤魔化そうとしているのが丸分かりだ。

 何せ騎士っぽい少女と次郎衛門達とは三カ月程前に最悪な別れ方をしている。

 次にあった時には見返してやろうと心に誓っていた筈なのに再会がこれである。

 なんという嫌な再会だろう。

 というかこの状況ではどうやっても挽回は無理っぽい気がする。

 その事を理解している次郎衛門達はニヤニヤしっぱなしであった。


「そ、それでジロー殿。一体どうしてこのような所に?」


 何とか話題を逸らそうとシグルドは次郎衛門に問いかける。

 ちなみに不法侵入でもあるのだがその事についてはシグルドは諦めていたりする。

 罰したくとも次郎衛門を捕えられるが居ないからだ。


「おお。そうだった。突然愉快な場面に出くわした所為で忘れてたわ」


 どうやらシグルドの話題逸らしは成功したらしい。

 次郎衛門はようやく本来の目的を思い出したようだ。 


「シグルド! 海に行こうぜ!」 


 満面の笑みで言い放つ次郎衛門。

 何時の間にかその小脇には僕っ娘と魔女っ娘を抱えていた。

 騎士っぽい少女に至っては何時ぞやのダンジョンの様にアイリィが強引に肩車している。

 その姿はもはや定位置かと言わんばかりにしっくりと馴染んだ物となっていた。

 まぁ、アイリィの肩車が、がっつりとトラウマになってしまっていた騎士っぽい少女は既に泡を吹いて白目を剥いて気を失っていたりするが。

 例えシグルドが断ったとしても次郎衛門は少女達だけは拉致る気満々である。

 そんな気合いが次郎衛門の全身から漲っていた。

 勿論、次郎衛門が水着姿の女の子を愛でる為だ。


「わ、分かりました……」


 これは拒否しても無駄だと理解したっぽいシグルド。

 割とあっさりと海行きを了承したのであった。

 こうして次郎衛門は女子水着要員を更に三人確保(拉致?)する事に成功したのだった。 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ