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133話 何かいいのあった!?

 本日の次郎衛門達は久しぶりにギルドへ依頼を探しに来ていたりする。

 最後の封印とやらを放っておいても良いのかと思うかも知れない。

 実は邪竜の封印の最後のカギを守りに行くという案もでたりしたのだが、仮にも魔族の人達の王である魔王の傍に常に張り付くというのはあまり現実的な案ではない。

 内政干渉にもなりかねないし、何よりよく知らない者を魔王の傍に侍らせる許可を出す程魔族側も不用心ではないからだ。

 幸い今のところは封印は無事だという話なので次郎衛門達はもしもの時の為に迅速に対応出来るように邪竜が封印されているというラスクの街周辺で活動する事にしたのである。

 そんな訳で面白そうな依頼がないか見に来たのだ。


「サラちゃん。やっほーい」

「あ、ジローさん。皆さんおはようございます」


 次郎衛門の挨拶に完璧な営業スマイルで応じるサラ。

 ちなみに皆さんとはフィリア、アイリィ、ピコ、アイラの4人の事だ。

 ちなみにパンダロンはメアリーと共に行方不明のままである。


「何か面白そうな依頼がないか見に来たんだけど心当たりない?」

「面白そうな依頼ですか?」

「うんうん」


 次郎衛門の面白そうなという条件に困った様に眉を寄せるサラ。

 割の良い依頼はないかとはよく聞かれる事はあるサラだが、面白そうな依頼を探しに来るのは次郎衛門位のものである。

 サラには次郎衛門の面白センサーが何に反応するかすらもよく分からない。

 とりあえず変わった依頼がなかったかとサラは資料を探る。


 先ず、常時依頼の薬草採取はNGだ。

 次郎衛門が冒険者になり立ての頃に採集に出掛けて持って帰って来たのが薬草ではなくマンドラゴラだった。正確には次郎衛門の魔力の影響で変異したマンドラゴラ!? だ。

 うっかりあれを直視してしまったが為に、サラはその後しばらくはあれが夢に登場し睡眠障害に陥った事もあった。あれはもう勘弁して頂きたいというのがサラの本音であった。


 もう一つある常時依頼のゴブリン討伐もNGだ。

 今の次郎衛門達ではこの近隣に存在するゴブリンを滅ぼしかねない。

 いや、滅ぼせれるのなら滅ぼしてしまった方が良いのかもしれない。

 しかし、本当に滅ぼしてしまったら周辺の生態系が激変してしてしまう事は間違いない。

 それによってどんな影響が起きるか分かったものではない。

 それにゴブリンを狩る事で生計を賄っていたいた者達が一気に路頭に迷う事になる。

 世間では一人前と言われるDランクの冒険者達ですら他の依頼を受けながら片手間に常時依頼をこなす事で生活費を賄っているのである。

 生活に行き詰った冒険者が身の丈に合わない依頼に挑んで命を落としたりする事も増えるかも知れない。

 はっきり言ってラスクの街を拠点としている冒険者の8割近い冒険者が冒険者を廃業するか余所の街に移動するしかなくなるだろう。次郎衛門達が健在なうちはそれでも良いのかも知れないが次郎衛門とて寿命は存在するだろうし、不慮の事故や病気でぽっくり逝ってしまう可能性もなくはない。

 その時に街を守る筈の貴重な戦力でもある冒険者が居なくなってしまってたらラスクの街の存亡に関わる事態になってしまうだろう。

 自分の軽はずみな行動の所為でそんな事になった日には寝覚めが悪いどころの騒ぎではなくなる。

 ラスクの街で生まれ育ったサラにとってそれだけは絶対に避けなくてはいけない事だと言えた。


 他の魔物の討伐依頼もあるにはある。

 ただ、この依頼が面白いかと聞かれると首を傾けざるを得ないところだったりする。

 珍しい魔物の依頼ならともかくそういった類の依頼が頻繁にある訳はなく今ある依頼は比較的多い部類の討伐依頼ばかりなのだ。

 緊急性の高い依頼があったなら次郎衛門の琴線に触れない様な依頼でも頼みこんででも受けて貰うのだろうが、今のところそういった依頼もなかったりする。


 街の人のお手伝い系の仕事はジロー商会のエージェント達の活躍のお陰で程良く消化出来ておりこれ以上は駆け出しの冒険者達の仕事を奪う事になりかねない。


 はっきり言って次郎衛門を安心して送り出せそうな依頼は院長先生が出している孤児院の子守りくらいしかない。

 当初は次郎衛門が院長先生の事を狙っている熟女専なのかと思ったりもした。

 サラの義理の親でもある院長先生と次郎衛門が結婚でもしてしまった日には次郎衛門も義理の親となる。

 それでもサラは次郎衛門が義理の親になってしまうのは嫌だった。

 義理の親だけにギリギリアウトだなんてレベルではなく思いっきりアウトだった。

 別に次郎衛門の事が嫌いと言う訳ではない。

 ただその光景を想像すると何だか面白くない気分になるのだ。

 そんなサラの心配も杞憂だった。

 単純に次郎衛門は自分の育ての親に似た雰囲気を持つ院長先生に頭が上がらなかっただけだと判明したからだ。

 

 そんな事をぼんやりと考えながら依頼を探していたサラだったが不意に視線を感じて目を向けてみればそこにはアイリィがいた。


「アイリィちゃんどうしたの?」


 普段の敬語ではない口調でアイリィに話し掛けるサラ。

 それはサラが孤児院の幼少の子供達と話している時に使うような優しい口調だった。


「アイリィこの依頼受けたい」


 なるほど確かにアイリィは一枚の依頼書を持っていた。

 どうやら次郎衛門達は自分達でも依頼を探していたらしい。

 生後一年ほどであるにも関わらず既に文字を読めるというアイリィの成長っぷりは凄過ぎだ。


「ちょっと見せて貰えるかな? !? これって!」


 アイリィから依頼書を受け取りサラは目を通すと驚きの声を上げる。

 とある街の領主からの依頼だった。

 確かにこの依頼ならば次郎衛門の興味を引く可能性は高い。

 というか、アイリィに甘い次郎衛門なら間違いなく即決するだろう。

 ただ一つだけ問題があった。

 距離の問題だ。

 この依頼を出した街は遠いのだ。

 王都を経由して更に馬車で2週間は掛かる。

 これだとラスクの周辺で活動するという次郎衛門の意向にそぐわないのだ。

 

「ん? どしたのサラちゃん。何かいいのあった?」


 そんなサラの様子に気が付いた次郎衛門がやって来た。


「あ、ジローさん。アイリィちゃんがこの依頼をやりたいって言うんですけど」


 そう言ってサラは次郎衛門に依頼書を見せる。


 それは海に出現する魔物を退治して欲しいというものだった。 

 場所は海沿いの街シープリーズ。

 その街は港町というよりも綺麗な砂浜が広がる街で、毎年夏になると貴族や大商人といった裕福な人達が多く訪れる高級リゾート地だ。

 街は漁業と観光が主な産業となっているのだが、数年程前から海水浴をしている観光客をや漁師を襲う水棲の魔物に悩まされているのだという。

 この魔物を退治して欲しいというのがこの依頼の内容だった。


「えーと要するに観光客を襲う魔物を何とかして欲しいって事?」

「そういう事ですね。今までにかなりの数の冒険者達がこの依頼に失敗してますし、シープリーズの街を治める領主様の軍隊ですら討伐には失敗してるみたいです。海中に逃げられてしまうとお手上げなんだそうです」

「ほむほむ。中々厄介そうな依頼なんだなぁ。んで、アイリィたんは何でこの依頼をやってみたいと思ったんだ?」

「パパ! アイリィ海見たい!」


 次郎衛門の問いかけに目を輝かせながら答えるアイリィ。

 どうやら単純に海が見てみたかっただけのようだ。

 普通はそんな事を基準に依頼を探していたら馬鹿にされるのが落ちなのだが生憎この街で次郎衛門達に喧嘩を売る者は既に存在しない。

 

「海かぁ。そいえば俺もこっちの世界の海はまだ見た事ないな」

「私もないですよ。普通の人は自分が生まれた街から出る事自体珍しいですから」


 どうやらサラも海はまだ見た事がないようだ。

 

「見たいなぁ……」

「見てみたいですよねぇ」


 次郎衛門がポツリと呟く。

 サラも同意するように呟く。

 同じ意味の言葉を呟いた二人ではあるがその言葉の意味は全く違っていたりする。

 サラが見たいのは海だ。

 一方の次郎衛門が見たいのは海…… ではなく女の子の水着なのである。

 いや、海も見たい事は見たいのだろうがそれ以上に水着が見たいっぽい。

 次郎衛門とて男なのでこれは仕方ない事だと思う。


「良し! 行くか!」


 己の本能と煩悩の命じるままに即決する次郎衛門なのであった。


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