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11話 薬草採取依頼を受けよう!?

 本日も二人はギルドへ。

 そしていつもの様に、サラの元へと向かう。


「サラちゃん、おはよん」

「ジローさん、フィリアさん、おはようございます。

 昨日は子供達のお守りを、ありがとうございました。

 子供達も喜んでましたし、院長先生が褒めてましよ。

 でも、耳や尻尾は、触らせはしませんからね?」


 どうやら、サラは夜に孤児院に顔を出してきたようだ。

 恐らく次郎衛門が何かやらかしてないか心配だったのだろう。

 次郎衛門とフィリアの二人は、サラに信頼されていない様である。


「おっふ。院長先生、耳や尻尾の件は黙っててくれれば良いのに」


 次郎衛門は苦笑する。


「それで今日は、何の御用ですか?」

「今日は常時依頼の薬草の採集をしてみようと思ったんだ。

 新人冒険者といえばこれだ! って感じがするしな。

 それで、一応の手順と注意事項を教えてくれないかな?」


 次郎衛門はゴブリン狩りと並んで、新人冒険者の登竜門的な存在である採集にちょっとワクワクした様子である。

 この辺りはルーキー冒険者によく見られる光景で、心なしか、サラの次郎衛門を見る目も、温かいような気がする。


「フフっそうですね。

 確かに新人冒険者と採集は、切っても切れない関係ですよね。

 それではご説明します。

 基本的に薬草と毒消し草は常時依頼になっており、特に受注しなくても納品する事が可能です。

 その為、他の任務のついでやる方がほとんどですね。

 採れる場所は、森なら大抵の場所で採集出来る筈です。

 どちらも10株で1回の依頼完了になります。

 似たような草も多いので、資料室でしっかり確認してから採集に向かった方が良いですよ」


 資料室の場所を教えてくれるサラ。


「ほむほむ。この近くは魔物は出たりする?

 採集に夢中になって後ろから襲われました。じゃ、かっこ悪いもんな」


 確かにどんな状況でも、油断しない事は大事な事である。

 

「すぐ近くなら滅多に出ませんが、極稀にゴブリンが出るようですね。

 基本的には、街から半日以上離れないと魔物は生息していないようですが、油断しては駄目ですよ!」


 基本的には安全だと言いつつも、次郎衛門へと注意を促すサラ。

 まぁ、薬草採集が100%安全であるのなら、依頼になる事はないだろう。

 それなりにリスクがあるからこそ、冒険者への依頼となっているのだ。

 

「ほいほい。それじゃ資料室っての行ってみるよ。ありがとーん」


 親身になってアドバイスをくれるサラ。

 次郎衛門はそんなサラにヒラヒラと手を振り、礼を言って資料室へ向かう。


「これがそうか。

 薬草はヨモギにそっくりだし、毒消しの方はドクダミにそっくりだな。

 これなら覚えやすそうだ。

 ゴブリンは、かなり小柄で不細工なんだな。

 間違えて普通の人を倒しちゃったら、どうしようかと思ったけど、これなら大丈夫そうだ。しかも、ゴブリンは価値のある物も取れないのか。

 容赦なくぶちのめして良いっぽいなぁ。

 フィリアたんからは何か注意事項ってある?」


 ブツブツと言葉に出し、注意事項を反芻する次郎衛門。

 監視兼サポート役でもあるフィリアにも、注意事項を聞いてみる。

 決して本日は若干スルーされ気味な、フィリアの機嫌を伺った訳ではない、ないったらないのである。


「そうね…… あんたのアイテムボックスはともかく、私のアイテムボックスは容量も充分にあるから特に問題もないでしょ。

 さっさと行って終わらせちゃいましょ」


 特にないらしい。

 ドライな女である。

 まぁ、街の外へと出る依頼の中で、もっとも簡単な依頼なのだ。

 フィリアの反応の方が、自然なのかも知れない。 


「ほーい了解。んじゃ、行きますか」


 そして二人は森へ向かう為に、門へと向かうのだった。



 門には初日に会った守衛がいた。

 次郎衛門に槍を突きつけたあの守衛である。


「ジロー君とフィリア君だったかな?

 無事に冒険者登録出来たようだね。

 良かった良かった。

 では、早速冒険者カードを見せて貰えるかな?」

「まだFランクのお試し期間だけどな」


 そう言いながら、次郎衛門はカードを渡す。


「!? ぶはああああ!!

 何だねこのカードは!?

 こんなの始めてみたよ!!」


 次郎衛門の非常識なステータスを見て、盛大に守衛は噴出した。

 悶絶し呼吸すら間々ならないながらも、しっかりと本物か調べている辺り、仕事には手を抜かないタイプのようだ。


「俺にも理由は分からんが、何故かこうなったんだよなぁ」

「くくく…… 信じられんが確かに本物のようだね…… ぷくくく」


 守衛は笑いをかみ殺そうとはしているものの、全然殺しきれて居ない。

 普通なら怒っても良い場面なのだろうが、次郎衛門にも自分のカードの方が可笑しいという認識はあるようだ。

 続いて守衛は、フィリアのカードを確認し始める。

 その守衛の表情は期待に満ち溢れている。

 まぁ、次郎衛門のカードを見た後では、期待するなと言う方が無理だろう。

 だが、その期待は裏切られる事となる。

 見る間に守衛の瞳からは希望が失われていく。

 当然だ。だって、フィリアのカードは普通のカードなんだもの。

  

「フィリア君のは普通のカードなんだな。いや、かなり凄いステータスではあるのだが、ジロー君のを見た後では、何と言うか、がっかりだよ」


 明らかに守衛のテンションが下がっている。

 まるで、問題が起きる事を期待していたかの様な態度である。

 というか、がっかりと断言しちゃっているし、期待していたのだろう。

 この男、守衛としての自覚があるのだろうか。


「フィリアたん。

 期待に応え、予想を裏切ってこそ一流の芸人だぞ?

 そんなこっちゃ、書籍化(いんぜいがっぽり)だなんて夢のまた夢だぞ?」


 謎の理論を繰り出す次郎衛門。

 その隣で守衛も、うんうんと頷いている。

 まるでフィリアが悪いと言わんばかりの流れである。


「誰が芸人なのよ!

 それ以上ふざけるなら、ぶっ飛ばすわよ!」


 コメカミをひくつかせ、拳を握りこむフィリア。

 まぁ、日本で言うならば、空港で普通にパスポートを出したら、こちら側に非はないのに、何故か、係員に文句言われたようなものなのだ。

 そりゃ、フィリアも怒って当然と言える。

 

「悪い悪い!

 フィリアたん、そんなにむくれるなって!」

「いや、済まないね。

 確かに失礼だったね。

 申し訳ない」 

「ハァ…… ジローと居ると、私まで変人に見られる気がするわ」


 ため息交じりに呟くフィリアであるが、見た目は超絶美女である。

 そんなフィリアが、超極悪人面の次郎衛門と行動を共にしている時点で、周囲からすれば謎だ。

 既に変人認定を受けていても可笑しくはない。


「そうだ。森に行った人達から怪しい人物の目撃情報が何件かあってね。君達も注意してくれたまえ」


 守衛は2人に注意を促す。

 どうやら、ようやく己の本分を思い出したようである。

 ちゃんと仕事しろと思わなくもない。


「そいえば、前にもそんなような事言っていたよな」

「うっかり君を拘束してしまったのも、その件が原因でね。

 この近辺で、目深にローブを羽織った人物の、目撃情報があるのだよ。

 何度か目撃情報はあるものの、該当する人物がこの街に来る事もない。

 目的が分からないので、警戒をしているのさ」


 やれやれといった雰囲気で肩を竦める守衛。

 まぁ、不審な人物が不審な格好のまま街に訪れるとも思えない。

 街へと来ているのなら、その時は普通の格好をしているのではなかろうかと、思わなくもない。


「まぁ、何か見つけたら報告するよ。んじゃ、フィリアたん、行こうぜ!」


 ようやく二人は森に向かって歩き出すのであった。

 



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