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126話 俺の方が強いけどな!?

次は日曜日に投稿する予定でっす。

 次郎衛門達がパンダロンを拉致しつつ修行の旅に出てから早3カ月。

 そろそろ次郎衛門から通信用魔道具にて戻るとの連絡を受けたジロー商会に所属する者や辺境伯や支部長を始めとする関係者達は次郎衛門の自宅へと集合していた。その中には次郎衛門担当の受付嬢であるサラやパンダロンの嫁であるメアリーの姿もあった。


「まだ、帰らないのか……」


 支部長が呟く。

 何だかんだ言っても部下でもあり愛弟子でもあり、そして年の離れた家族のようにも思っているパンダロンの事が心配なのである。

 正直な話、支部長はたった三ヶ月で大幅にパワーアップ出来るとは思っていない。

 だが次郎衛門には実績がある。武において全く才能がないと思われた辺境伯の息子であるゲコリアスを僅か一か月で一端の戦士に作りかえた事があるのだ。

 次郎衛門ならばひょっとしてパンダロンを更に高みに導いてくれるかも知れないという期待も湧いて来てしまう。まぁ、それ以上に不安の方が途轍もなく大きかったりはするのだが。

  

「ガイアス殿。落着かれよ。彼等に限っては気にするだけ無駄だという事は嫌という程に経験してきたではないか。貴殿がそんな様子ではメアリー殿も不安になってしまうぞ」

「た、確かにその通りですな。すまないメアリー」

 

 辺境伯が支部長を窘める。

 確かに辺境伯の言う通りで支部長もその事には異論は全くないようだ。

 素直にメアリーに頭を下げた。

 だがそのメアリーは意外と落ち着いていた。


「フフフ。落着かない気持ちは私もよく分かります。私も何だか不思議な気分ですよ」


 そう言ってメアリーは微笑む。

 彼女とてその心に生じた不安は拭いきれないものがある筈だ。


 メアリーとて冒険者ギルドの職員として働く身だ。

 顔見知りの冒険者が二度と戻らなかったという体験は何度もしているし、何よりも一人目の旦那も冒険者でありその旦那も冒険によって命を落としている。

 それでも微笑んでいられるのは愛するパンダロンへの信頼があるからだ。

 そして何より彼女自身が強く、そして優しい女性なのだ。


 次郎衛門達を待ちどれ程の時間が経っただろうか。

 ひょっとして今日は帰って来ないのではないか、それ以前に次郎衛門達の身に何かあったのではないかとその場にいる面々が考え始めた頃だ。

 何の前触れもなく唐突にぽっかりと空間に穴が開いた。

 その穴から見覚えのある人相の悪い男が現れた。

 

「うお!? 何だ!? 皆で帰りを待っててくれたのか?」


 結構な規模のお迎えに驚く次郎衛門。

 その手には鎖の様なものが握られている。 


「ちょっとジロー! 邪魔よ! さっさと退きなさいよ!」

「ただいまー!」

「帰る家があるというのは幸せですね」


 そして次郎衛門を押しのけるようにして現れたフィリア、アイリィ、ピコ。

 その存在感に思わず目を奪われる支部長や辺境伯。


 元々次郎衛門達はかなりの存在感があった。

 そのルックス然り、発言然り、行動然りだ。


 だが今の次郎衛門達が放つ存在感は生物としての存在感が桁違いだった。

 次郎衛門達を見つめているだけでも足が竦み喉がひりつくのだ。

 次郎衛門達一人一人が以前にドッキリで現れたドラゴンの群れを凌ぐ存在感を放っているようだった。

 歴戦の武人である辺境伯や元Aランク冒険者の支部長ですらそう感じているのだ。

 戦闘の心得のないメルや幽霊ちゃんやサラ、そしてメアリーはパニックを起こさないでいる事が奇跡と言ってしまっても良いかも知れない。ちなみにサラに至っては犬ミミが完全にペタンと倒れてしまっている。尻尾はスカートの中なので見えないが丸まってしまっているに違いないだろう。

 

 そんな周囲の様子に気が付いた次郎衛門が口を開く。


「ほむ。皆ちと気配を押さえるんだ。このままじゃ皆がきつそうだわ」

「面倒だけど仕方ないわね。ほらアイリィとピコもさっさしなさい」

「気配?」

「これで良いでしょうか」


 次郎衛門とフィリアの言葉を受けてピコは直ぐ様気配を抑えたのだが、幼いアイリィには気配をという事の意味が良く分からないらしく小首を傾げたりしている。その間にもメルやサラ、そしてメアリーの顔色はドンドン青ざめていっている。ひょっとしたら呼吸する事すらままならない状況なのかも知れない。


「アイリィたん。皆が怖がってるから、かくれんぼをする時みたいに出来るか?」

「はーい! パパ、これで良い?」


 次郎衛門のお願いに元気よく手を上げると気配を消すアイリィ。


「アイリィたん。よく出来ました!」


 褒めながらアイリィの頭をクシャクシャと撫でる次郎衛門。

 打って変わって存在感が消えたアイリィに周囲の者達は逆に驚く。

 実際に目で見ているからこそアイリィの事を視認出来ているが一度見失ったら、もはや見つけ出す事は出来なさそうだと思ってしまう程に見事に気配を消していたのだ。

 何よりアイリィが動きまわっても一切の音が発生しないのだ。

 超一流のシーフやアサシンであってもこれ程見事に気配を絶つ事は出来ないだろう。

 次郎衛門とアイリィは一体どれほどハイレベルなかくれんぼをしているのだろうかと思わなくもないが、実際には修行中にフィリアの水浴びを覗く為に磨かれた技術だったりする。しかもそれ程までに高度な気配遮断の技術をもってしても覗き成功率が2割に満たない。どれだけフィリアは鋭いんだという話でもあったりする。


「ジ、ジローさん! あの……あの人は?」


 ショックから何とか立ち直ったメアリーが次郎衛門に問いかける。

 メアリーの言うあの人とは勿論パンダロンの事だろう。

 確かにまだパンダロンの姿は見えていない。

 

「お。よくぞ聞いてくれました! 今回の修行で一番成果が大きかったのがパンダのおっさんだったりするんだよな! おっさんは完全に獣の力を引き出す事に成功したんだぜ」」

「本当なのか! パンダロンが……」


 次郎衛門の言葉に食いつく支部長。

 愛弟子なだけあって感慨深く感じるものがあるようだった。

 そんな支部長に応えるように次郎衛門は口を開く。


「ああ。今のおっさんは正直かなり強いぞ。まぁ、俺の方が強いけどな!」


 どうやらパンダロンは相当頑張った様である。

 ただ未だに姿を見せないのとフィリアを始めとする他のメンバーが一切その話に加わろうとしないのが気に掛かるところではあるが。


「あの人が強くなったというのは嬉しいですけど、私はあの人が無事ならそれだけでも充分なんです」

「おお。おっさん愛されてるなぁ。それじゃ真打登場と行こうか! おっさんカマーン!」


 次郎衛門はメアリーの愛のある台詞に羨ましそうな呟きを一つ零した後合図を送るかの様に手に持った鎖をジャラりと揺らす。

 そして空間に開いた穴の中からのそりと現れた者は只者ではない風格を身に纏っていた。

 その場に居た者全員が思わず息を呑む。

 まるで別人のようだった。

 だがメアリーや支部長は直ぐに理解した。 

 信じられない。

 だがこの者は間違いなくパンダロンだと。

 そして声を上げる。


「「し、白熊になってるぅ!?」」


 そう、その場に現れたのは一頭の白熊。

 まるで別人どころの騒ぎではない。

 別熊だった。

 もはやパンダですらなくなったパンダロンが其処にいたのだった。

 

知っている人は知っていると思いますがパンダと北極熊、通称白熊は結構フォルムというか体型も違っていたりします。

ギャグの一つとして大らかに受け入れて下さると幸いでございまする。

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