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120話 俺が責任から逃れたんじゃねぇ!?

読んで頂きありがとうございまっす!

 場所は相変わらずドルアーク王国から遠く離れた西の地だ。


 ロリショタオンリーのエルフ族にとって次郎衛門という存在は最悪の相性だと断言しても良い。

 そんな次郎衛門の出現から一夜明けたエルフの大集落では。

 力なく地面に伏せるエルフの集団とツヤッツヤの表情で元気一杯過ぎる様子の次郎衛門の姿があった。

 更には次郎衛門を取囲むかのように昨夜は姿が見えなかった年若いエルフ達が次郎衛門を恐れる様に遠巻き囲んでいた。

 

「クハ! クハハハ! 良い朝だな!」


 全身で朝日を浴びながら楽しそうに笑う次郎衛門。

 朝っぱらから凄いハイテンションだ。

 まぁ、ハイテンションの理由は単純に一晩中両成敗していて徹夜明けで妙なテンションになっているからなのだが。己の欲求のままに徹夜すら厭わないネトゲの廃人プレイヤーみたいなものなので廃テンションというのが正解なのかもしれない。


「この光景の一体どこが良い朝なのじゃー!」


 一番最初の被害者だったハイエルフの少女アイラが叫ぶ。

 彼女の指す先には死屍累々といった表現が妙にしっくりくるようなエルフの精鋭たちの無残な光景が広がっていた。


 ぐったりとしてピクリとも動かない者、妙に艶めかしくビクンビクンと痙攣している者、地面を涙で濡らしている者、地面を涙以外の何らかの液体で濡らしている者など、そのバリエーションは様々だった。

 騒ぎ立てている張本人であるアイラですら何だか妙に内股気味だったりする。

 年若いエルフ達は普段見ない精鋭達の姿を困惑した表情で見つめたりしていた。


「おお、一番最初のお嬢ちゃんか! ひょっとして御満足頂けてない? もう一本いっとく?」


 そんなアイラの様子を見て栄養ドリンクでも勧めるかのような気軽さで指をワキワキと動かしながら提案する次郎衛門。

 とりあえず一体ナニの単位が本なのかは分からない。

 ただ一昔前の風俗業界の様に本単位で数えるちょっぴりと生々しい言い方は勘弁して欲しいところだ。


「お…… お断りなのじゃー! これ以上嬲られたら後戻り出来なくなのじゃー! そうなったら貴様はどう責任をとるつもりなのじゃー!」

「責任だと!? この俺も舐められたもんだな。この俺は元居た世界では○木等の次に責任感があるとまで言われたほどの男だぜ? 責任をとる事など造作もないさ」


 自身たっぷりに言い放つ次郎衛門。


「誰!? 植○等って一体誰なのじゃー!?」


 現地人であるアイラがそう叫ぶのも無理もない。

 実際にこれを読んでいる人でも分からない人は多いかも知れないのだから。

 だが敢えてこのネタを使おうと思う。

 だって思いついてしまったんだもの。


「まぁ、分かり易く説明するなら『俺の無責任は世界一ぃ!』的な感じの人だな」

「それ絶対に駄目な奴なのじゃー! その駄目な奴よりも更に駄目な奴宣言しちゃうとか、貴様は今までに一体どれだけの責任から逃れてきたのじゃー!」 


 次郎衛門の説明にたまらず叫ぶアイラ。


「おい、お嬢ちゃん! 人聞きの悪い事を言わないで貰おうか? 俺が責任から逃れたんじゃねぇ! 責任の方が俺から逃れやがったんだ!」


 叫ぶアイラにかぶせる様に叫ぶ次郎衛門。

 その姿はとても力強い。

 次郎衛門が今までに責任を負うべきにも関わらず負わなかった事は実は結構ある。

 存在自体が非常識と思われている次郎衛門。既に周囲が責任を負わせるという事を諦めているいる感があるのである。いや、下手に負わせようとすると余計に酷い事になってしまうからその点に関しては誰も口にしないというのが正解なのである。

 そう言った意味では次郎衛門の意味不明な叫びもあながち間違いではないと言えるかも知れない。

 ちなみに植木○が分からなかった人は御両親に、御両親でもアウトだった場合にはお祖父ちゃんかお祖母ちゃんにでも聞いてみよう。多分知ってるぞ。


「ムキ―! 意味不明過ぎるのじゃー! 誰かコイツを何とかするじゃー!?」


 次郎衛門の余りのマイペースっぷりに地団太を踏み始めるアイラ。

 その姿からはエルフの上位種たる気品のようなものの欠片すらない。

 周囲のエルフの若者達は普段は見る事のないアイラの姿にうろたえるばかりである。


 その時だ。


『ドドドドドドドド』


 地を揺るがす程の轟音が響き始める。

 樹木をなぎ倒す音なども聞こえてくる事から正体不明の何かが集落に向かって来ているようだ。

 轟音は瞬く間に集落へと近寄るが結界の効果が生きており、集落に到達する前に違う方へと進行方向をずらされたらしく集落へと辿り着かなかったようだ。

 だが轟音は再び集落に接近を開始する。

 一度や二度ではない。

 何度も何度も接近しては遠ざかるのを繰り返し始めたのだ。

 集落の中からでも集落の周辺の木々がなぎ倒され続けている事が良く分かる。

 このまま放置しておけば近いうちに周辺は森林地帯ではなくなり荒野にでもなってしまいそうな気配である。そうしたらエルフは森の妖精ではなくなり荒野の妖精になってしまうだろう。

 これは何者かがエルフの集落、つまりこの場を目指している事は間違いない。

 

「な、何なのじゃー!? 邪竜の信徒共の新手が来よったのか!?」

「ア、アイラ様! 美少女が周辺の木々をなぎ倒しつつ爆走しております!」

「落ちつくのじゃー! 何を言っているのか意味不明なのじゃー!」


 見張り台にて様子を伺っていた若者が声の限りを尽くして叫んだがいまいち状況が伝わって来ない。

 実際に目の当たりにしている若者とて己が見ている光景が信じられなかった。

 何せ、浅葱色の髪をツインテールに縛り上げた小柄な美少女が樹齢数百年はあろうかという大木をなぎ倒しつつ爆走しているのだ。もしも若者が他の者から同じ話を聞かされても到底信じる事はないだろう。

 しかもその美少女が脇目も振らずにエルフの集落目掛けて突撃してくるのである。

 まだ経験の少ない若者にとっては途轍もなく恐ろしい光景であった。



『ドッカーン!』



 そうこうしている間に今度は大森林の一部で巨大な火柱が上がる。

 しかも一つや二つではない。

 それこそ無数の火柱が上がり始めた。

 


「こ、今度は何なのじゃー!?」

「ア、アイラ様ー! よ、幼女です! 背に翼を生やした幼女が炎を吐いてます!」


 見張り台にて様子を伺っていた若者が声の限りを尽くして叫ぶ。

 その表情はあり得ない物を見たとばかりに青褪めていた。

 今度は幼女ときたもんだ。

 これはいよいよ自分がおかしな病気に掛かってしまったのではないかと不安になって来る若者。

 森の妖精から荒野の妖精へと肩書を改める時も近いんじゃないかと愚にも付かない事が脳裏を過る。


「くっ! 邪竜の信徒共めー!」


 歯をギリギリと噛み締めながら吐き捨てるアイラ。


「邪竜の信徒? 何だそれ?」

「惚けるではないのじゃー! 貴様とて奴等の仲間なのであろうに! ムキ―! 何なのじゃ!」


 異世界ファンタジーにありがちなキーワードに食いつく次郎衛門。

 そんな次郎衛門を心底憎いといった表情で睨みつけるアイラ。

 邪竜の信徒と罵られても次郎衛門には全く心当たりがない。

 心当たりはなくてもこのままでは合法ロリショタパーラダイスが存亡の危機に瀕している事はなんとなく分かっていた。

 

 軽い足取りで見張り台に飛び乗り様子を伺う次郎衛門。 

 普段の次郎衛門ならば空間把握と魔力感知で大抵のものは視認する必要もない。

 だがこの集落は結界に閉ざされているらしいので外の様子は良く分からなかったのだ。

 そんな次郎衛門であったが爆走する少女と火を吐く幼女を視認した瞬間に動きが止まる。

 そんな次郎衛門の様子をアイラが見逃す筈もない。

 冷たい射抜くようなアイラの視線の中で次郎衛門は口を開いた。 

 

「悪い! あれ、俺の娘と部下だわ」


 と、若干悪びれた様子で言い放つ次郎衛門。

 その目は盛大にバタフライしていたという。


 

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