118話 良いではないかー良いではないかー!?
遅くなってしまって申し訳ないです。
どうやら土曜日の晩に泥酔したあげくに階段から落ちて気絶してしまっていた模様。目覚めた時には首は鞭打ちに、頭頂部には直径10cm程のタンコブが、全身の体を打った箇所が熱を持ち腫れあがりまして高熱まで出す始末でした。皆様も深酒には御注意なさってくださいませ。
パンダロン夫婦及びその御近所さんが指輪の被害に打ちのめされていた頃、その騒動を巻き起こした張本人である次郎衛門はどうなっていたかというと。
ドルアーク王国から遠く離れた西の地に居た。
いや、居たと言うよりもロープで縛り上げられて捕まっていたと表現した方が正確かも知れない。
既に深夜と言って良い時間である筈なのに縛り上げられた次郎衛門の様子を沢山の妙に美系の少年少女達が遠巻きに伺っていた。
次郎衛門は彼等の集落のど真ん中に墜落したのだ。
「へいへーい。そこの少年少女。ロープを解いてくれないか?」
周囲を取り囲む少年少女を説得してロープを解いて貰おうとする次郎衛門。
「迷いの結界を破って侵入してきておいて何を今更…… それより盗んだ物を返すのじゃー!」
一人の少女が次郎衛門に言った。
見た目の年齢は10歳前後だと言うのにやけに年より臭い口調の少女だった。
少女が言うにはこの集落には結界が張ってあり普通に侵入しようとしても方向感覚を狂わされて辿りつけないようになっていた様だ。しかし次郎衛門は単純に落ちてきただけなので迷う事もなくあっさりと侵入出来てしまったらしい。しかも次郎衛門が侵入してきた混乱の最中に彼女達にとってとても重要な物が紛失してしまったという。そんな状況だったので正式な手順を踏まずに侵入した次郎衛門が拘束されるのも当然の事といえた。
「お、俺は何て大変な物を盗んじまったんだ…… まさかこんな子供の恋心まで盗んじまうとは……」
至って真面目な表情でおかしな事を口走り始める次郎衛門。
どう控えめにみても少女達の視線には次郎衛門への好意は欠片程も存在していない。
次郎衛門は今現在ここが何処なのかすら分かってすらいない状態で、しかも拘束までされているというのに危機感は皆無と言って良い程だった。
「ちょ!? ワシは貴様に惚れてなどおらんわ! 自意識過剰にも程があるのじゃー! 後、子供扱いもやめるのじゃー!」
「でも悪い! 俺にはフィリアたんという嫁がいるんだ! 行きずりの俺の事なんて忘れて幸せになってくれ!」
「ええぃ! 子供扱いは止めぃと言うておるのに! 何じゃコヤツ! 全然話を聞きよらん!? 何時の間にかワシが振られたみたいになっておるし!?」
全く話を聞かない次郎衛門に業を煮やした少女が次郎衛門の頬を引っ叩く。
だが所詮は少女の一撃である。
次郎衛門が肉体的なダメージを受けた様子は全くなかった。
だが次郎衛門は驚愕の表情で目を見開き小刻みに震えだす。
「子供じゃない……だと!?」
そう口走る次郎衛門の視線は周囲を取り囲む少年少女達の顔、いや、主に耳に注がれる。
彼女達の耳は長細く尖っており通常の人とは明らかに違う形状をしていたのだ。
「ようやく気付きおったか! 我らこそは森の妖精エルフ族なのじゃ!」
僅かに胸を張りながら自慢げに応えるエルフ少女。
エルフ族とは森と共に生き、森の恵みを受けて生きる。
弓を得意としており腕利きの狩人も数多い。
高い魔力を持ち、精霊の力を借りる適性があり、精霊魔法と呼ばれる魔法の使い手達でもある。
他の種族である人間族や獣人族ともそれなりに友好関係にあったりするがドワーフとは多少仲が悪かったりする種族だ。
この世界でのエルフ族は非常に長命な種族だった。
そして彼等の成長は地球の人間で言うところの第二次性徴期迎えた辺りで止まる傾向にある。
「フォオオオオオ! エルフ来たこれぇ! ひょっとしてこの場に居る全員大人なのか?」
次郎衛門は期待に満ちた目でエルフ少女に問いかける。
「そうなのじゃ! この場に居る者はエルフ族の中でも腕利きの戦士達なのじゃー! 恐れ入るが良いのじゃー!」
「つまりはあれって事か!? これが合法ロリショタ、パーラダイス!」
エルフ少女の返答に次郎衛門は己を拘束していたロープを容易く引きちぎる。そして次郎衛門へと応対していたエルフ少女に捏ね繰り回す様な欲望に満ちた目でにじり寄り始めた。
「な、何じゃとー!? 魔法が掛けられているロープをこうもあっさりと引き千切るじゃと!? こりゃ! や、止めるのじゃ! ワシの柔肌は夫なるものだけに捧げるべきものなのじゃー! 気安くさわるんじゃないのじゃー!」
次郎衛門の突然の凶行。
どうしても体格に差ががあり過ぎた為に大した抵抗も出来ずに全身を撫でまわされるエルフ少女。
「くっ人間め! アイラ様を離せ!」
何とか撫で回されている少女を助けようと声を上げるエルフ達。
どうやら次郎衛門の餌食になっている少女はエルフ達の中ではそれなりの立場にいる様だ。
だが次郎衛門の暴走は止まらない。
ただ只管に目の前に存在する合法ロリ少女アイラを撫でまわす。
二次被害を恐れているのか周囲を取り囲むエルフ達は遠巻きに叫ぶものの一向に次郎衛門の暴走を実力行使で止める気配はなかった。
アイラと呼ばれている少女の言では周囲にいるエルフ達は腕利きの戦士達らしいのだが、下手に腕が立つが故に次郎衛門には到底敵わないと理解してしまった様だ。もはやこの場は衆人環視の元でアイラ様と呼ばれているエルフの少女が次郎衛門の欲望のままに愛でられ続ける状況を見守るだけの場と化していた。
「くっ! そんな所を!? あん、このままじゃ……ああん! あああ!? あああああなのじゃあああああ!!!」
「クハ! クハハハハ!! 良いではないかー! 良いではないかー!」
次郎衛門の悪代官の様な台詞とテクニックの前に何だか艶っぽい嬌声を上げ始めるアイラ。
結局アイラは次郎衛門が落ちつくまで思う存分全身を撫でまわされ、嬌声をあげ続ける羽目になるのだった。




