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113話 俺が噂を広めてやろう!?

いつも読んで頂きありがとうございまっす。


 一通りの経緯を辺境伯から聞きだした次郎門。


「話は分かった。辺境伯の言っている事も理解出来なくはない。ここまで話が進んじまったものを御破算にするって訳にもいかないだろう。まぁ、後で詳細を見て多少の変更は要求するかもしれんけどな」


 珍しく聞きわけの良い事を言う次郎衛門。


「おお。恩に着――――」

「だがペナルティは受けて貰う」


 ホッとしたように礼を言おうとする辺境伯の言葉を遮る次郎衛門。

 その言葉に一気に辺境伯と支部長、そしてメルの顔色が青ざめる。


「そ、そんな! 勝手な事したのは謝ります! だから永久脱毛だけは許して下さい!」

「その娘は領主である私の意向に逆らえなかっただけなのだ。ペナルティなら私が受ける。どうかそれで許して貰えないだろうか」

「くそ! やってられるか!」


 必死になって謝るメル。そんなメルを庇う辺境伯。その姿はとても男らしい。

 そしてもう一人のペナルティ対象者の支部長といえば、次郎衛門が侵入してきた窓から飛び降りて逃走を図っていた。しかし支部長は決死の思いで3階の窓から飛び出した筈なのに気が付けば同じ会議室だった。

 次郎衛門が空間転移を用いて逃走を阻止したのである。

 そして支部長の目の前に立ちふさがるのはアイリィ。

 その可愛らしい拳が支部長に向かって振るわれる。


「ゴフ!」


 吹き飛び再び窓から飛び出していく支部長。

 ゴムまりのように勢いよく何度も弾みながらそのまま辺境伯の屋敷の外にまで飛んで行ってしまったのだった。


「まぁ、支部長ペナルティはあれで良いか。さて、ペナルティの話の続きだが辺境伯の心意気は買うけど、メルにも受けて貰う。ジロー商会の幹部である以上はこの先も王侯貴族と渡り合って行かなきゃならん場面も出て来るだろう。甘やかす訳にはいかんからな」


 確かに次郎衛門の言う通りこの先のジロー商会は多くの有力者達と関わりを持つ事になるだろう。既に大貴族でもある辺境伯や支部とはいえ冒険者ギルドと関係を持ってしまっている事が次郎衛門の言葉が正しいと言う事を裏付けていると言える。


「とはいえ流石に全身を永久脱毛しちまうってのは商会の運営にも支障をきたす可能性が高い。と言う訳で、じゃじゃじゃーん!」


 ゴソゴソとアイテムボックスの中を漁り何やら何やら毒々しい色のポーションを取り出す次郎衛門。

 深緑、黒、灰色、紫といったとても体に悪そうな色の液体がマーブル状に複雑に絡み合ってとても人が飲んで良い物だとは思えないポーションだった。


「これは、錬金術の研究中にうっかり生成してしまったポーションで、毛に関する様々な効果がランダムに起きるギャンブル的な要素のある遊び心に富んだポーションだ。二人にはこれを飲んで貰おう」


 そういってポーションを辺境伯とメルに手渡す次郎衛門。


「ジロー殿。これを飲めば、許してくれるのか?」

「ああ。俺を出し抜いたちょっとした罰ゲームだとでも思ってくれ」

「ならば私から飲もう」


 そういってポーションの蓋を開け一気に飲み干す辺境伯。


「む? 何やら頭が痒くなってきたぞ!? 痒い! とても我慢が出来ん!」


 そういって頭を掻きむしり始める辺境伯。そして掻きむしればむしる程に辺境伯の金髪にウェーブが掛かってゆく。


「ほむ。どうやら辺境伯は天パになるって効果だったみたいだな」

「よ、ようやく痒みが治まってきた…… 一体どんな事になるのかと心配したが思ったよりこの程度で済んで安堵したぞ」


 金髪オールバックだったナイスミドルの辺境伯が多少天パになってもそのナイスミドルっぷりは少しも失われてはおらず心底ホッとした表情を見せる辺境伯。

 思ったよりも地味な変化で多少残念そうな次郎衛門だったが気を取り直してメルに期待の籠った目を向ける。

 メルも辺境伯の変化がそれ程でもなかったので飲む覚悟を決める。


「それでは行きます! ブフォオォォォ! にっがーい! 何これすっごく苦いですよ!」


 覚悟を決めて一気に呷ったメルだったが余りの苦さにポーションを噴きだしてしまう。

 その味を例えるならば正露○を液状にしたらこんな味になるだろうという味わいだ。 

 

 そしてメルの体にも変化が訪れる。


「何か体中が痒いです!」


 そう言って何やら全身を掻きむしり始めるメル。

 それなりに美少女でもあるメルが息も絶え絶えに体中に指を這わせるその姿は結構エロく次郎衛門の鼻の下もちょっぴり伸びる。


「ハアハア…… やっと収まってきました。 でも特に変化はないような?」


 ようやく痒みが治まってきたメルが息を整えながら言う。

 確かにメルにはパッと見に変化はなかった。

 その様子を見た次郎衛門がわなわなと小刻みに震えだす。

 期待はずれの展開に怒っているのだろうか。

 いや、違う。その目は歓喜の感情に満ちている。


「きたこれえええええ!」


 そう叫ぶとメルの元に歩み寄りスカートを下着ごと剥ぎ取ろうとする次郎衛門。


「ちょ!? いきなり何ですか!? いやああああ! 犯されるうううう!」


 悲鳴を上げながらも必死にスカート死守しようとするメル。

 夢中でスカートを剥ぎ取ろうとする次郎衛門を案の定フィリアが叩きのめす。

 ちょっと前までは魔法を使ってようやく次郎衛門にダメージを与えていたというのに最近は素手でも次郎衛門の闘気を貫通している辺り、ひょっとしたらフィリアの成長速度は次郎衛門を超えているかもしれない。


「あんたね。過度のセクハラやパワハラは止めなさいよ。見てるこっちが不愉快だわ」

「恐らくメルに現れた薬の効果は無駄毛が生えなくなってお肌がツルツルになるやつなんだ。だからそれを確認しようとしただけなんだよ。決してエロい気持ちだけでの行動じゃないぞ」


 フィリアの剣幕に恐れをなした次郎衛門は必死に言い繕っている。

 エロい気持ちだけでの行動じゃないという事はエロい気持ちもあったという事でもある。

 結局フィリアにシコタマぶん殴られる次郎衛門なのであった。



「ツルツルになってました……」 


 メルがトイレで毛の有無を確認したところやっぱりツルツルになっていたらしい。

 剛毛なのもアレなのだが全く生えていないというのも嫌なようでメルは若干落ち込んでいるようだ。

 世の中にはツルツル至上主義といえる者達も存在しているというのに何でメルはそこまで落ち込んでいるのかと首を傾げる次郎衛門。今さっきフィリアに凹られたばかりだというのに復活するの早過ぎである。


「マニア延髄のボディを手に入れたってのに浮かない顔だな…… 良し! 俺が噂を広めてやろう! 極一部の人達にモテモテになれるぞ!」

「そんな人達にモテたくありません!」


 落ち込んでいるメルに名案を思いついたと言わんばかりの表情で追い打ちを掛ける次郎衛門。しかも延髄と垂涎を間違えて使用している辺りに己の馬鹿さ加減を露呈している。 

 ちなみに辺境伯はメルの有様を見て、天パ程度で済んで良かったと心の底からホッと胸を撫で下ろしてたりする。

 

「そう落ち込むなって! 薬の効果が切れたらちゃんと生える様になる……筈だ!」


 次郎衛門がメルを微妙に不安になる態度で励ます。

 元はと言えば次郎衛門の所為でこんな事になっているのだが次郎衛門にその自覚はない。

 酷い男だ。


「いつ切れるんですか?」

「分からん! 1年で切れるかもしれんし30年後かも知れん」

「そ、そんなぁ」


 次郎衛門の口ぶりから今日明日切れると言う事はなさそうだ。

 一瞬だけメルの瞳に希望が灯ったメルであったが次郎衛門の言葉で再び絶望に染まる。

 というか、いつ効果が切れるかすら分からないと言う事は実験も碌にしていない薬という事になる。

 そんな薬を平然と他人に飲ませるとは恐ろしい男だ。

 地球なら即逮捕ものの犯罪行為である。

 

「そんなメルにもう一つだけ重要な情報がある」

「なんですか。嫌な予感しかしないんですけど」


 もはやメルの瞳には次郎衛門の全てが胡散臭く見えているようだ。

 まぁ、受けた仕打ちが仕打ちなので当然ではあるのだが。


「効果が切れたらそれまで抑制されてた分を取り戻すように一気に生えると思う」

「どういう事です?」

「10年後に切れた場合は10年分纏めて伸びる筈なんだ」

「そ、それって毛むくじゃらになっちゃうって事ですか!?」

「その通り! 伝説の妖怪、毛羽毛現になれるチャンスなんて滅多にない貴重な機会だぞ!」


 次郎衛門はやや興奮気味に語るが語られた方のメルの目は完全に死んでいる。

 エロゲーで言うところのレ○プ目と言ったら分かりやすいだろう。

 ちなみに毛羽毛現とは日本の妖怪の一種で全身から毛が生えている端的に言い表すならば毛玉お化けといった感じの妖怪である。はっきり言って10代の女の子がそんな化け物になってしまうと宣告されても嬉しい要素は一つもない。全くもって女心と言うものが分かっていない次郎衛門なのであった。

 こうして学校新設に関する事が発端で起きた騒ぎは、支部長が半殺しどころか90%殺しの目にあったり、何故か辺境伯が天パになったり、メルがいつか妖怪化するかもしれないという意味不明な結末を迎える事となったのだった。


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