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111話 辺境伯と支部長も一枚噛んでるっぽいんだよな!?

次は水曜日に投稿しまっす。

「俺だけ置いて帰るんじゃねーよ!」

「悪かったって。結局迎えに行ったんだから許してちょんまげ」

「ちょっとは反省しろよ!」

 

 パンダロンの置いてけぼりが発覚し、仕方なく迎えに行ってきた次郎衛門。

 その態度にも悪びれた様子は全くなく堂々としたものである。

 最初は面倒なのでそのまま放っておこうかとも考えたのだが、パンダロンの新妻であるメアリーさんにバレたら言い訳し辛いという結論に至った為に迎えに行ってきたのだ。

 余談ではあるがシグルド達がまだ宿屋に残っていた為に思わぬ形であっさり再会してしまい、次郎衛門を見返してやろうというシグルド達のやる気に思いっきり水を差してしまうという一幕もあったりした。


「はいはい。反省しましたよっと。それじゃ、反省も済んだし一緒に辺境伯のところへ行くぞ」

「何故辺境伯の所なんだ。先ずはギルドへ報告へ向かうべきだろう?」


 パンダロンは不満げに口を開く。ギルドでは愛しのメアリーさんも職員として働いているので一刻も早く会いに行きたいのだろう。 


「どうやら我が家がこの有様になったのは辺境伯と支部長も一枚噛んでるっぽいんだよな。幽霊ちゃんの話によると辺境伯の所で打ち合わせしてるらしいから話を聞くのには丁度良さそうなんだ。だからおっさんも付き合えよ」

「おいこら! 話を聞けよ! 引っ張るなって!」


 次郎衛門はパンダロンの言い分を一切聞かずに首根っこを鷲掴みすると問答無用でパンダロンを引きづりながら歩き出したのだった。



 ◆◆◆◆


 時は次郎衛門達が王都へと向かった直後へと遡る。

 事の発端はメルがジロー商会の代表として学校の創設の許可を取りに辺境伯の元へ訪れた事から始まった。

 冒険者育成の為の学校とは言っているがその内容はかなり充実しており、ラスクの街に存在している学校よりもかなり質の高い授業内容になりそうだったのだ。

 15歳以上を対象としておりこのままでは辺境伯が経営している高校は新設される冒険者学校によって生徒の激減が予想された。

 辺境伯が経営する学校は元々利益が出るどころか赤字経営であった。

 それにも関わらず運営され続けてきた理由は優秀な人材を育成する為の機関であり人材は何よりの宝であるという辺境伯家代々受け継がれてきた方針だったからだ。

 辺境伯は考えた。

 優秀な人材を育成出来るのならわざわざ赤字の学校を運営し続ける事はないと。

 むしろこれは貴重な商機である。

 数百年に振りに現れたSランク冒険者によってもたらされた商機だ。

 この機を逃すようでは領主失格だ。

 辺境伯は規模を拡大しドルアーク王国中から生徒を募集するべきだと思った。

 ドルアーク王国中の優秀な人材が集えばラスクの街は更に発展するだろう。

 王都ドルアークに匹敵する程の発展もありえるかも知れない。

 次郎衛門は戦士としての才能がないと諦めていた我が子ゲコリアスを短期間の間に一端の戦士に変貌させてくれた事からも分かるようにその手腕は疑いようがない。しかし未来を担っていくであろう若者達が次郎衛門の影響を受け過ぎるのも怖い。

 やる事成す事全てが非常識で問題ばかり起こしている男だが馬鹿ではない。

 むしろ柔軟過ぎるその発想は天才であり、それ故に巻き起こる騒動は天災と言っても差し支えない程の規模となる事も多い。それもこれも全て次郎衛門の実力とどこか憎めない人柄だからこそ許されているのだ。

 そこで辺境伯は次郎衛門が王都に行っている間にジロー商会の経営に関わっているメルに共同経営する提案を持ちかけた。メルは辺境伯が拍子抜けするほどあっさりとこの提案を受け入れた。提案自体はジロー商会にとって悪い条件ではなかったし、今まで村長の娘でしかなかったメルには大貴族である辺境伯の提案を拒否する事が出来なかったからだ。

 しかし王国中から生徒が集まって来たとしてもそれを教える教師の数が圧倒的に足りない。そこで冒険者ギルドに引退した高ランク冒険者等を教員として紹介して貰おうという事になった。冒険者としても引退した冒険者の再雇用先が確保出来るのは有難い事であった。それに次郎衛門のような非常識な者を量産されても困るので提案に乗らざるを得なかった。


 こうしてジロー商会、ラスク辺境伯、冒険者ギルドの三者による共同経営する運びとなったのだ。


 そうと決まった後の辺境伯の行動は素早かった。次郎衛門宅周辺の土地を買い上げ、ドワーフ達を雇い突貫工事で話を進めた。次郎衛門が王都へ行っている間に出来るだけ話を進めておきたかったというものあるし、いつも次郎衛門に好き勝手されているので偶には次郎衛門の度肝を抜いてやろう辺境伯のささやかなリベンジの意味も込められていた。


 これが次郎衛門達が帰宅して目の当たりにした自宅周辺が一気に様変わりしてしまった件の顛末なのであった。

  

 

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