102話 ひょっとしてあの日!?
ここは王都ドルアークに4か所ある冒険者ギルドの支部の一つだ。
今この場には次郎衛門一行とシグルド一行、そして百合な性癖に目覚めた受付のお姉さんがいた。
「ああ! もう離れなさいよ! こんなことなら助けるんじゃなかったわ!」
必要に以上にベタベタと張りついてくる受付嬢に辟易とした様子のフィリア。
これがもしフィリアに張りついてきているのが次郎衛門だったら容赦なく魔法で折檻していただろう。
流石のフィリアも自分に対して好意を向けてくれている女の子にはきつく接し辛いようだ。
「そ、それでジロー殿達はダンジョンについて知りたいのでしたね。我々で良ければ多少の事は教えられる事もあると思いますが……」
若干ひいた目で見ていたシグルドがフィリアのうんざりとした様子を見かねて助け舟を出す。
「ええ、そうね! 場所を変えて軽く食事でもしながら話を聞かせて貰えるかしら? 勿論食事代はジローが出すわよ!」
助かったと言わんばかりにシグルドの提案に飛び付くフィリア。
ちゃっかり支払いはジローに押し付けている辺り中々にせこい女であった。
◆◆◆◆
なんとかフィリアに縋りつく受付嬢を振り払い近くの酒場へと場所を移した一行。
「はぁ…… シグルド助かったわ」
フィリアが開口一番にシグルドに礼を述べる。
プライドの高いフィリアが素直に礼を言っている辺り余程受付嬢の対処に困っていたらしい。
「いえ。気にしないでください」
にっこりと爽やかに微笑むシグルド。
何気ない行動の一つ一つがイケメンだ。
何気ない行動の一つ一つが傍迷惑などこぞのSランク冒険者にも是非見習って欲しい。
そんなシグルドの笑顔を彼のパーティーメンバーである3人の少女達は面白くなさそうに見つめている。
どうみてもフィリアに微笑むシグルドが気にいらないといった雰囲気で、ここまで分かりやすいと何だか微笑ましいものがあった。
「さて、それじゃ、早速で悪いけど本題にはいろうぜ」
「そうですね。ダンジョンについてでしたね」
「ああ。俺達が行った事があるのはピコ……の元になった金属生命体が居た廃鉱山だけなんだ。でもあれって冒険者がいうところのダンジョンってのは違うんだろ?」
うっかりピコの正体をばらしそうになるも何とか誤魔化しつつ質問をする次郎衛門。
「ええ。確かにその通りです。基本的にダンジョンとは魔力の通り道、魔脈から魔力が噴き出す場所に出来るものの事を指します」
「魔脈? なにそれ?」
聞き覚えのない言葉に首を傾げる次郎衛門。
「そんな事も知らないとは、Sランク冒険者が聞いて呆れる」
そんな次郎衛門を騎士っぽい少女が見下した様子で挑発する。
どうやら大好きな王子に対して馴れ馴れしい態度をとる次郎衛門の事が余程気に入らないらしい。
「クハハハ。お嬢ちゃん厳しい事言うなぁ」
特に気にした様子もなく意外と大人な対応をする次郎衛門。
「いい加減にしないか! 先程からジロー殿にきつく当たりすぎだぞ」
「でも王子!」
「でもじゃない! 大体ジロー殿達はこの世界に来てまだ10ヵ月程しか経っていないんだ。しかもジロー殿が活動していたラスクの周辺にはダンジョンもない。知らなくて当然だろう?」
自分に好意を向けてくれる女の子にも言うべき事はきっちり言うシグルドは心意気まで男前だ。
「嘘…… 」
「たった10ヵ月でSランクになったって言うの!?」
「あり得ない……」
少女達は次郎衛門達の異常なまでの昇級速度に絶句する。
少女達とてシグルドとパーティーを組んでいると言う事はシグルドと同等もしくはそれに近い実力を持っている筈だ。まだ20才にも満たないであろうという事を鑑みればエリート中のエリートと言っても過言ではない。少女達が驚くのも無理もない話だ。
「っと、申し訳ない。どこまで話ましたか…… ああ、魔脈でしたね。実はこの世界の大地の中にはまるで大地の血液のように魔力が流れている場所があるのです。そういった場所の事を魔脈と言います。大抵の魔脈は地下深くを流れているのですが極稀に魔力が地表に噴出してしまう事があるのです。ダンジョンとはそういった場所に出来るのです。ここまでは良いですか?」
「ああ。続けてちょんまげ」
「…… 通常の魔物は繁殖して増えるのですが何故かダンジョンは内部に魔物が突然発生します。理由は良く分かっていません。いくつか説はあるのですがどれも仮説の域を出ていないのが現状です。ダンジョンでは突如魔物が発生する、そういうものだと思っておけば良いと思います」
「つまり背後にも注意が必要だって事か」
「ええ。その通りです」
「他に注意する事は?」
「トラップなども存在します。それと魔物だけでなく宝箱も突然発生しますよ。勿論宝箱にもトラップが仕掛けられている事もあります。本格的に攻略するのならば腕の良いシーフが必須と言えますね」
「シーフが必要なのかぁ…… ま、何とかなるだろ」
どうやらダンジョンを攻略する場合はシーフが必須であるらしい。
その事実にほんの少し考える素振りを見せた次郎衛門だったが数瞬後には楽観的な結論に至ったようだ。ポジティブな男である。
「なる訳ないだろう! ダンジョンを舐めるなよ!」
騎士っぽい少女が声を荒げる。
元々次郎衛門の態度が気に入らない上にいい加減な発言を繰り返す次郎衛門がどうにも気に障るようだ。
「お嬢ちゃんさっきから異常に機嫌悪くないか? ひょっとしてあの日?」
「な!? 下劣な! もう我慢ならん!」
単純に嫌われているという事に思い至らず火に油を注ぎまくる次郎衛門。
騎士っぽい少女が今度こそ剣を抜気放つ。
そんな少女の前に立ちはだかる男がいた。
シグルドだ。
「やめろと言っているだろう! ジロー殿に無礼を働く事は許さんぞ!」
「何で王子はそんな奴の肩を持つんだ! そんな男がSランクだなんて何かの間違いに決まってる! 私が化けの皮を剥いでやるんだ! 邪魔をしないでよ!」
騎士っぽい少女は泣きそうな表情で叫ぶ。
「お嬢ちゃんはポッと出の俺にシグルドが気を使っているのが気に入らんって事か?」
どうやらやっと少女が何に憤っているか理解したらしい。
「当然だ! 王子こそがSランクに相応しい器なんだ!」
「んじゃ、こうしようぜ。お嬢ちゃんが指定したダンジョンを俺達が攻略してやる。もし俺達が攻略出来たらお嬢ちゃんはもう突っ掛ってくるのをやめるってのはどうだろう?」
「面白いじゃないか。それで失敗した場合はどうするんだ?」
「その時は悔しいが一生お嬢ちゃんの性奴隷として奉仕しよう。じゅるり。」
碌でもない事を言い出す次郎衛門。
むしろ一部の趣味の者には御褒美でしかない提案だ。
そんな次郎衛門の提案を心底嫌といった見せる騎士っぽい少女。
「お断りだ! Sランクだ! 直ぐにSランクを返上して冒険者をやめろ!」
「いいだろう。それじゃ好きなダンジョンを選びな」
「ノーライフキングのダンジョン。つまりバンパイアが主のダンジョンを攻略してみせろ!」
騎士っぽい少女が指定したダンジョンはノーライフキングの、つまりアンデッドの王バンパイアの住むダンジョンを指定したのだった。




