肚
大体の方は初めまして。瀬名乃と申します。まず最初に言わせて頂きます。容赦なくグロいですよ?これから段々ハードになっていく傾向にあります。それでもいいという方のみどうぞ。
ーー何時からだっけ?
あたしが「狂気」を異性のように愛し、子のように愛で始めたのは
嗚呼、そうだ。
今からちょうど22年前、あたしの誕生日の前日だ
まぁそんなことはどうでもいい
扠。今日は誰にしようか
いつもとは趣向を変えて子どもでもいいかな
否、それとも妊婦にして肚のを抉りだそうか
うん そうしよう
想像すると、思わず口から笑みが零れた
ならば獲物を見つけなければいけない
どこがいいだろう?
妊婦、夫婦、子ども.......
ーーーー簡単じゃないか。妊婦が居る場所なんて
“公園”なら大人も子どもも集う
早速行こう。今からなら公園に多くの人が集まる
予想通り公園には様々な家族連れが居た
だからあたしも普段とは正反対の服装をした
レースのついた白いワンピースに桜色のカーディガン
今のあたしはどこにでもいるような女に見えるだろう
獲物を探し始めると1人の女が眼に入った
肚の御子をいとおしそうに愛でこれ以上の幸せはないとでも言うかのような表情
ーーーあの女にしよう
それを決定付けるのはとても簡単だった
幸せそうなあの表情を恐怖と苦痛に歪めてやりたかった、ただそれだけ。
殺るのは今日の真夜中
街が静寂に包まれる時間
急に侵入してみせようか、忍びこもうか
そんなことを考えているうちに空は藍色に染まっていた
と、その時ポケットから無機質なバイブ音が聞こえた
相手が誰かなどすぐわかる
なにせ1人しか登録していないから。
「.....もしもし?」
普段通り少し間を置いてから出る
そして次にはやけに大きな声が響く筈だ
「あっ、出た!.....寝てた?」
いきなり電話してきて、それか。と思いつつ否定する
「へぇー珍しいね。“姉ちゃん”いつもなら出ないから」
当たり前だ
“弟”の言う“いつも“だったら人殺しをしているのだから
「.....結斗?」
消え入りそうな声で弟の名を呼ぶ
「.....今日も遅くなるの?」
「うん。だからさ、先に寝てて。」
静かに、小さく返事をし電話を切った
思わず溜め息が出た
何度考えても矛盾していると思う
あたしが快楽殺人者で結斗は刑事。
しかも担当しているのがあたしが殺っている事件
瞼を閉じ上を向く
目の前には獲物の住まう巣
今日の猟銃は鋭利な刃ではない
”鋸“
どんな叫びが聞けるんだろう?
どういうふうに抉れるのだろう?
そんな期待を胸にあたしは当たり前のように入り口の戸を開けた
靴は脱ぐ。少しでも紅の世界に他の色は残したく無いから
キィ、と音をたててリビングへと繋がるドアを開ける
音が、ない
まるで自分だけ放り出された気分だ
寝室と思われる引き戸をゆっくりと開ける
そこには規則正しく寝息をたてて眠る妊婦
昼間に見たのと同じ。
一歩を踏み出すとキシと床が唸った
それこそ主人である女に身の危険を知らせるかのように
あたしにとってはそれは合図だ。
女が瞼をゆっくりと開く
驚愕の表情
「だ、れ……?」
震える声、見開く瞳
今、目の前にいるのはまだ完全にこの世に生を受けていない我が子を守ろうとする母親
女の声の震えが身体へと伝わるのが見ていてもわかる
「こんばんは」
優しく優シく、笑ウ
「駄目よ。お母さんが鍵も掛けず寝ていちゃあ」
例え鍵がかかっていたとしても無理矢理こじ開けたが。
そうしていれば少しくらい抵抗出来ただろうに
腰のポーチから小さな鋸を取り出す
窓より微かに入る月光に反射して鈍く光る
「ひ……」
「数年前から無作為に起こる殺人は知ってるでしょ?」
「最近は増えて来て警察も動いているのに」
彼女に対して嘲笑を向ける
「貴女、ならわかるかな。ねぇ教えてくれない?」
「ーーーーーーー?」
質問を投げ掛けると恐怖と疑問が入り混じった顔で小首を傾げる
そこで勘違いをしないように注意を呼びかける
「間違えないでね?この質問に答えようが答えまいが貴女と肚の中に居る子の死は変わらないから」
疑問が混じっていた顔が恐怖一色に染まった
女が言い訳をしていたような気がしたが、そんなもの耳に入らなかった
奇麗だなぁ、
あたしの頭の中は狂気で満たされていた
肚を目掛け一直線に鋸を降り下ろすーーーーー
いかがでしたか?もし宜しければ評価等をお願い致します。これからたまには結斗視点も入れていけたらいいな、と思っています。ではこの辺で失礼します。