門出
もう終わりかな…
そう思いながらも援護に向かう。
そしたら
「まだ僕は本気を見せてない!」
とか言いだしたので
「じゃあ出さなくていいよ。バイバイ」
首撥ねて終わった。
なんか物凄く締まらない終わりだった。
「卒業、おめでとうございます」
「君が言うとあまり感慨深くないなぁ」
「必ず同じ大学来てね、闘真君!」
「ハ、ハハ…。頑張ります」
「先輩、こいつ頭悪いんで無理っすよ」
「確かに闘真君頭悪いもんね」
「テメ、悠人!どの口がんなこと言ってんだよ!俺より成績悪いくせに!」
「はぁ?……あ、そっか、ちゃんと成績教えたこと無かったっけ?」
「悠君頭良いよ?」
「いやいやいや、こいつ自分から頭悪いって言ってんすよ?」
「だって僕の基準100だし」
「はぁ!?」
「因みに、こないだの学年末は5位だったよ、学年で」
「こいつは目指せば東大いけるからなぁ」
「ざっけんなよ!どこが頭悪いだ!全国レベルで見ても上位じゃねーか!」
「ってかせっかく集まったのに成績の話題って虚しいよ…」
「おい、悠人」
「あ、部長。どうしました?」
「兄さんがお前に用事らしい。行け」
彼が引っ張られていく。
「ちょ、待っ」
「悠君頑張れ〜」
「あいつも苦労人だな」
「先輩!俺、頑張りますよ!」
「はいはい」
「にしてもこの天気はなぁ」
「せっかくの門出に相応しくないなぁ」
「曇のあとは必ず晴れますから大丈夫っすよ」
「闘真〜。助けろ〜〜」
「行ってあげなよ」
「そうそう」
「あ、じゃぁすいません」
苦笑して追い掛ける彼もまた、何かを感じたのだろうか。
「そういえばさぁ」
「ん?どったの?」
「相変わらず熱いようで」
「さっきの繰り返しじゃないけどどの口がんなこと言うか!」
前置きのように語られた一言。
最後のじゃれあい。
「もう、終わったんだよな」
「そうね」
「次はいつ、こうやって騒げるのかな?」
「大変だと思うよ。二人は大学受験、もう二人は新しい学校で生活だもん」
「だな。案外、このばか騒ぎも見納めかもな」
「婆臭いよ」
「うるさいなぁ」
二人して苦笑。
「……じゃ、行くか」
「そうね。本当に」
空を仰ぎ見る。
「天気が残念だけど」
「晴れるから大丈夫だろ」
「……そうね」
その空は、鈍く重い色ではあったが、光を微かに洩らしていた。
「あの光が門出の贈り物なら、神様はケチね」
「違いない」
終わりました