騎士は敗れ、騎士は行く
「何を企んでいる?」
「は?」
なんだ、いきなり。
「貴様はここまで弱くない。何かを隠している、違うか?」
「違うね。それに間違ってねぇか?俺が弱くなったんじゃなく、あんたが強くなった。それでいいじゃないか」
意図して、飄々としたキャラを作る。
……やっぱこいつは侮れない。
弱いくせに勘だけはいい。
「…そうか」
呟き、次に吠える。
「『死屍涙塁』」
……?
何も起こらない。
厳密には、何も出てこない。
「早く行かなければ奴らが死ぬぞ」
「なっ!……テメェ」
「ほら、隠しているものを出せ」
仕方ない(・・・・)。
使いたくは、無かったが。
次の刹那。
彼の拳が彼女に初めてクリーンヒットした。
しかし、彼の姿は見えない。
一瞬、彼女は空中に縫い止められた。
そして、壊れる。
「正義の味方じゃないからな、俺は。力の解説なんかしねぇぞ」
彼が使ったのは《再分配》。
ステータスを一定時間割り振りし直す、FGB限定のスキルの一つだ。
それでSTRとAGLを極振りした、それだけ。
「動くのも面倒だ、ここにいようか」
どっかりと胡坐をかき、地面に座る。
そして、鍵をとりだす。
「せめてもの手伝いだよ、ユウ」
笑い、鍵を空中であける。
その中には、近接最強と謳われた、防具が。
「久々の、解禁だ」
創りだす。
「『騎士、城壁作成』」
生まれたのは、身の丈以上の盾を持つ騎士と、刺々しい剣を両手に二本持った騎士だ。
「『命令:パーティーメンバーと共闘せよ』」
二振りの力は、進む。
命を果たすために。




