過ぎた別れ
「……よう、グローリー。相変わらず元気そうで何より」
「黙れ!裏切り者と話すことはない!」
強風に煽られ、バランスを崩したグローリーのもとについたマーツの第一声がこれだった。
「マーツ……。普通は僕が話す場面だよ?」
「気にするな。いきなり攻撃はしないさ、そこのバカじゃあるまいし」
「誰がバカだと!」
「マーツ、お願いだから、黙れ」
「それはお願いじゃなくて命r……」
「アークさん、しばらく頼みます」
一言言い残し、話し掛ける。
「なぁ、どうしても、ダメか?」
主語を抜いた言葉。
しかし、グローリーは主語を正確に読み取って答えた。
「当たり前だ!許すなど、言語道断だ!」
「そうじゃない。どうしても、今じゃなきゃ、ダメか?」
「何だと?」
「決着は、世界大会で決めればいい。それとも、偉大な《旧家》のリーダー殿は、自分の実力を疑っているのか?」
今どき、中学生にも通用しない挑発。
「まさか!いいだろう、貴様の策にのるのは癪だが、それまで待ってやる」
相変わらず、沸点が低いやつ。
「命拾いしたな、ルイ!次に会うときまでに覚悟を決めておけ!」
どこの悪役だよ、グローリー。
突っ込んで話が長引くのは嫌だから何も言わないけど。
そう言い捨ててグローリーは消えた。
「だ、そうだよ、ルイ」
「らしいな。なら、こっちも準備が必要だ。帰る」
「もう、神級武器を狩るのは止めろよ?」
「わかっている。じゃあ、世界大会でまた会おう」
ルイもまた歩いていった。
「なぁ、マーツ」
「なんだよ?」
「やっぱグローリーはお前とは合わないな」
「だよな。一番付き合いにくかったし」
「グローリーはマーツの女だったの?」
「おっと、後は二人でごゆっくり」
「種蒔いて逃げんなよ!」
「なぁ、ユウ。おれらさ、もしかして敵増やした?」
「もしかしなくてもな。グローリーはお前に任せるよ、マーツ」
「うへぇ。じゃあ、まず敗復を勝ち抜かなきゃな」
弱音を言うと思ったから何も言わずに勝とうとしていることに驚く。
「ユウも手伝ってくれるか?」
「いまさらだな。乗り掛かった船だ、仕方ないさ。ヘイルもそれでいい?」
「構わない。アークの手伝いなら、大歓迎だ」
「だ、そうだ。女性陣の尊い友情に感謝しなよ」
「どうも俺が軽んじられてない?」
「お前を重んじるのはお前の熱烈なファンだけだ」
そういい、マーツから目を逸らす。
「じゃあ、取り敢えず、ポイント稼ぎに行こうか?」
「どこで稼ぐというのだ?いまどき、どのダンジョンも世界大会予選に向けてポイント稼ぎをしてる奴らでごった煮してるぞ?」
「それは多分大丈夫」
流石に考えはある。
「ヘイルは鳥と魚、どっちが好き?」
「私は鳥だな。何をいきなり」
質問を無視し、聞く。
「アークさんとマーツは?」
「どっちかと聞かれれば魚だな」
「私はお魚あんまり好きじゃないから鳥かな」
「僕もどっちかと言うと鳥だ。じゃあ、決まりだな」
「だから、どこに行くというのだ?」
怒り気味なヘイルの質問を今度は無視せず、答える。
「『空』さ」




