黒い雨、空の闇
「なぁ、ユウ。そういえば、ヘカートってさ、あまり女神として聞かないよな?」
「知らないよ。ってか、戦いに備えろ」
急に何だと言うんだ、この馬鹿は?
「へいへい」
『汝ら、星を穿つ力を欲するか?』
僕は無言でうなずく。
『ならば汝らの力、天に届くことを示してみよ!』
ギ……
ギ…ギ…
バタンッ!
扉が閉まる。
「ヘイル、マーツ、前を頼む」
「わかった。早く落とせよ!」
「りょーかい。後ろ、任せたぜ?」
「アークさんは僕の周りに結界を敷いて」
「オッケーだよ!」
目の前に漆黒の女神が現れた。
【冥神:ヘカートが湧出しました】
【クエスト:冥神の試練がスタートしました】
ヘカートはクエストの開始と同時に空に飛んだ。
どんな長い武器でも届かない高度だ。
「ユウ!頼む!」
「うるさいよ。わかってる」
ユウはスナイパーライフルを構えて、急勾配の坂に寝そべる。
坂はアークが作ったものだ。
「ユウ。私は……」
「落ちるまで待て」
いつもとは違う、冷たい声にゾッとした。
「射撃態勢のユウに話し掛けんなよ、アークちゃん」
そんな中、いつもと同じテンションでいれるこの馬鹿は凄い。
「アーク、防護陣!」
「聖なる籠よ。我が身辺を覆い給え。界!」
上から黒い魔力が雨のように降ってきた。