唯一の能力
いまだっ!
「マーツ、いくよ!」
「おう!」
「疾れ!風よ!」
僕とマーツの周りを風が囲う。
「唸れ!雷よ!」
雷が揺らめく。
「全ての敵を吹き飛ばせ!」
突風、一迅。
「全ての敵を凪ぎ払え!」
閃光、一陣。
「疾風の狂暴さよ!」
「迅雷の速さよ!」
「「剰じて敵を貫け!」」
『グッ……ッアッ……アアアァァァ!』
フェンリルはポリゴンの塊となって消えていった。
「ユウ、なんですか?!さっきの複合魔法は?」
「ア、アークさん!?ちょっと落ち着いて」
「落ち着けませんよ!複合魔法は通常、二人でやるものです!だからユウとマーツが出した『電光石火』と『疾風迅雷』はわかります!
ですが、あのロックフレイムは違います!1人で炎と土の魔法ですよ、通常不可能です!」
「こりゃもう、話すしかないんじゃない?ユウ」
笑いを噛み締めながらマーツが言う。
「他人事だと思って…」
仕方ない。
このメンバーなら誰かに言う可能性もないだろうが、一応念を押す。
「誰にも言わないと約束するなら教えるよ。ヘイルも、いい?」
「言わないですから早く教えて下さい!!」
「…私も約束しよう」
「実は、一番最初のグロヴェルには、唯一仕様のスキルが同封されてたんだよ。僕の場合は【祖術想造】っていって、どんな属性の魔法も複合魔法に使えるんだよ、しかも1人で。さらに譲渡もできるからね。だからさっきみたいなこともできるんだよ」
「ってことは、ユウはFGBだったのですか!」
「まぁ、そうだけど」
ちなみに、FGBというのは《First Grauen Welt Buyer》の略だ。
「そんなことより、みんな装備を一番強いヤツに戻して。ヘカートだよ」
連チャンのボスバトル。
疲労が重なる前におわらせたいな。