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一月十八日

作者: 駄々

独り暮らしの父親に

感謝を伝えたかった。

物を贈るのではなく、心を贈りたかった。

わたしはこの日に感謝する

遠い昔のこの日

朝には雪が降り積もっていた

臆病なその女性は

ありったけの勇気を振り絞り

分娩台に上った

そして夫は 祈るような眼差しで

彼女を見送ったのだ

それは 遠い昔の

一月十八日のことだった

父よ

そして亡き母よ

わたしはこの日に感謝する

小さな小さな 羽音のような呼吸を

息をひそめて見守った父よ

振り絞った力と勇気の記憶の中で

安心して深く眠った母よ

その日の呼吸は 今ここに

冬の真ん中のこの日に

力強く生き続けているのだ

愛情深い父は

「その日は寒く雪が積もっていた」と

何十回も何百回も

繰り返し

思い出と共に語るのだ

はらまれていた胎児が このわたしだったと

まるで知っていたかのような愛情を

父よ

そして亡き母よ

わたしはなんと大きなものを

たくさん たくさん 受けてきたのだろう

一月十八日

わたしはこの日 庭に向かい

その日と同じ

冷たい空気の中で目をつむる



まだまだ 伝えたい心はあるけれど。

また、会いに行きますね、そのうちに。

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