召喚された聖女は、男装の麗人でした。
初めての短編投稿です。
よろしくお願いいたします。
今日は、白百合歌劇団百合組、男役トップスターとしてのお披露目初日。
一色彩斗はセリ装置の傍らで、歌い出しを確認しながら気持ちを高ぶらせていた。
長身で端正な顔立ち、そして、甘い歌声に華麗なダンス。
彩斗がこの歌劇団でトップになるまでに、およそ十四年。
この長い年月の中で、彼女は洗練された男性の所作はもちろん、女性たちを惹きつけてやまない男の色香も身につけていた。
そんな彼女の一世一代のお披露目。
煌びやかな王子様衣装を纏い、彼女はセリへと一歩踏み出した。
ソロナンバーの音楽が流れ出し、セリがゆっくりと動き始める。
上っていくにつれ、スポットライトの光が段々強くなっていく。
いよいよ、お客様の待つ舞台の中央へ――
――さあ、開幕だ!
スポットライトの降り注ぐ中央に上がり切って、彩斗が歌い出そうとしたその時、これまでに経験のない強い光を浴び、辺り一面真っ白な光に包まれる。
よく見ると、セリが合わさったことで、床には魔法陣のような摩訶不思議な模様が浮かび上がり、陣からは上に向かって光が上がりだす。
(この模様は……いったい何が起こっているの? ひょっとして、これは何かの演出!?)
演出だとしたら、動揺した姿をお客様に見せるわけにはいかない。
彩斗は音楽が聞こえなくなったことにも気づかず、目を眇めながらも一心不乱にソロナンバーの冒頭を歌い始めた。
何度も何度も練習したソロナンバーは、彼女の中にすでに刻み込まれている。
間違えるはずはない。
彩斗は心を込めて歌い続けた。
魔法陣の中央に立って、そのまま異世界に転移させられたとも知らずに……。
◇◇◇
光がおさまると、目の前には見知らぬ光景が広がっていた。
(ここはいったい……)
チカチカする目で歌い続けながらも、ゆっくりと辺りを見回す。
(……神殿?)
高い天井に大理石のような床と壁。
大きめの窓に色とりどりのガラスが嵌め込まれているけれど、ステンドグラスとも違う。
教会よりももっと荘厳な雰囲気が漂い、足元には先ほどまで光っていた大きな模様のようなものの痕跡が残されている。
そして、周囲には舞台で見るような、まるでファンタジー作品の騎士や複雑な紋様のローブを纏った魔導士のような人たちがいて、彩斗をじっと見つめていた。
すると次の瞬間、突然彼らから大きな歓声が上がる。
「おお! やったぞ! 成功だ!!」
「ついに、ついに聖女様が!!」
「ついに聖女様の召喚に成功したぞー!!」
その声に驚き、彩斗は思わず歌うのをやめてしまった。
(これも舞台の延長? 騎士や魔導士が出る作品なんて腐るほどあるよね。急に私が知らない演目が始まったの!?)
動揺を隠せないまま、彩斗は自身の中で必死に答えを探そうとするものの、このような神殿が出てくる演目への出演もお稽古もしたことがない。
それとも、自分だけが知らない演目なのだろうか。
そんな考えを巡らせていると、さきほど歓声を上げていた人々が今度はこちらを伺いながら困惑の声を上げ始める。
「ん?? 聖女、さま……??」
「え??」
「聖女様……なのですよね?」
「……だが、見た感じ、どこかの王子、もしくは身分の高い貴族の方では……」
「イケメン……だよな……?」
「歌声も低いしな………」
「どういうことだ!? 術式は間違いなく聖女様召喚のものだ……どこも間違ってはいない!」
「だが、どう見ても男性ではないか! 聖女とは異世界の女性なのではないのか!?」
「いや、しかし……」
騎士や一部の魔導士たちが騒いでいると、一人の騎士が何かに気付き、声を上げた。
「おい、見てみろ! 召喚で疲れ切っていた魔導士たちが、皆回復しているぞ!」
言われた方向に視線を移すと、倒れていたらしき魔導士たちが起き上がり、中には立ち上がって喜び飛び跳ねている者もいる。
それを見た彼らは、さらに困惑し始めてしまった。
「もしや……さっきの歌か。召喚の光が消えた後、歌に反応して魔導士たちの身体が光っていた」
「ということは……まさか聖女様ではなく、聖人様を召喚してしまったのか……?」
「は? そんな話聞いたことがないぞ」
「だが、それでは、王族との婚姻が!!」
彼らの言葉自体は理解できても、内容の理解がまったく追いつかない。
(聖女様……? え? もしかして、私のこと!? でも、聖女様召喚って……今流行りだから、演目になってってもおかしくはないのよね……だけど私男役なのに、聖女役!? まさかこれは演目じゃなくて現実だったり……?)
悩みながらも、女と知られたら面倒なことになるかもしれないという考えが浮かんだ彩斗は、手の込んだ舞台だと自身に言い聞かせたうえで、彼らを騙すことにした。
(さあ、やるわよ、彩子! 私は演技では誰にも負けない! 誰もを虜にするトップスター! さあ、私は男、異界の国の王子で気位の高い男よ!)
彩子――それは彩斗の本名だ。
これまで数えきれない舞台に出演してきた彼女は、こうしていつも自らを鼓舞してきた。
心の中で気合いを入れ、自らに暗示をかけた彩斗は、早速行動に出る。
「おい、ここはいったいどこなんだ? なぜ私は突然見知らぬ者に囲まれている?」
神殿にいる者の視線が一斉に彩斗に集まった。
多少横柄な態度ではあるものの、これがトップスター一色彩斗の十八番なのだ。
「や、やはり異国の王族を誤って召喚してしまったのではないか!?」
「だ、だが、聖なる力はお使いになられていたぞ!? 聖人様なのでは!?」
魔導士や騎士たちがざわざわと再び慌て始める。
(言葉が聞き取れるだけじゃなく、普通に通じる……やっぱりお芝居なの? それとも夢だったりするのかしら?)
半信半疑な思いを抱いたまま、彼らの答えを待っていた時だった。
「召喚は成功したのか?」
部屋の扉が突如開き、今の彩斗にも劣らない豪華な衣装を身につけた、体格の良い金髪男性が現れた。
その途端、その場にいた彩斗以外の全ての者が一斉に片膝をつく。
一瞬つられて片膝をつきかけ、自身は異国の王子なのだと思いとどまった。
(偉い人……? 身なりからして貴族か王子ってとこね)
その答えは次の会話ですぐに知れた。
「ガリウス殿下! それが……」
他とは明らかに異なる衣装を纏った年配の魔導士が、屈んだまま気まずそうに切り出す。
(殿下、ということはやっぱり王子なのね……)
「ギルネオ。どうした、何があった」
「いえ、その……間違いなく聖女召喚を行ったはずなのですが、ちょっと困った事態になりまして……ご覧いただいたほうが早いかと」
そう言うと、ギルネオと呼ばれた魔導士は王子に台の上を見るよう促す。
ゆっくりと彩斗のほうを向いた王子は、一瞬目を細めたあと、再びギルネオを見た。
「……で、聖女はどこにいる?」
扉付近から見たのもあって、きっと王子の衣装を纏った彩斗が周囲に溶け込んで見えたのだろう。
(世界観だけは妙に衣装と合っているのよね……)
王子の言葉に、ギルネオは少し困ったように、躊躇いながら答える。
「……あの、ですから……その、あちらの方が召喚で来られた方なのです」
あちらと手で示され、王子は再び彩斗を見る。
目を凝らしてから、ギルネオを連れ台のすぐそばまで来ると、じっと彩斗を見つめたまま、王子はなぜかその場で固まった。
「…………なんと、うつくしい」
王子の登場で静まり返っていた神殿に、小さく呟かれたはずの言葉が響き渡る。
その声は、彩斗にもしっかり届いていた。
(さすが私ね! 本物の王子まで魅了しちゃうなんて!)
内心調子に乗る彩斗をよそに、予想外の言葉に驚いたギルネオは王子の顔を覗き込んだ。
「あの……ガリウス殿下?」
「っ! 少しぼーっとしてしまった。どうやら聖女召喚には成功したようだな」
ギルネオからの呼びかけに我に返った王子は、再び彩斗を眺め、満足そうに微笑んだ。
そんな王子の様子に驚きつつも、ギルネオは必死に言葉を取り繕いながら、状況を説明する。
「その、聖女様ということなのですが……実はさきほど少しお話しになったのですが、口調からも、どうやら異世界の王族の方のようでして……」
「王族だと!? 異界の、そのような高貴な存在を召喚したのか!?」
「はい……」
「どうりであのように美しいはずだ……!」
困り果てているギルネオの隣で、王子は彩斗に見惚れるようにつぶやく。
それでもギルネオは、性別に関する核心的な言葉を避け、別の話題を持ち出した。
「加えて、聖属性魔法がかなりのお力のようで、召喚されている間もなぜか歌われていたのですが、その歌で私をはじめ召喚を行った魔導士たちの体力と魔力が全回復いたしました」
「なんだと!?」
(え? ちょっと、ほんとにこれ、何の演目? こんな話知らないし……。それにもし現実だとしたら……私、魔法使えるってこと!?)
魔法に浮かれる彩斗とは反対に、王子とギルネオの表情がどんどん真剣なものに変わっていく。
「あそこまでの聖属性魔法は見たことがございません。それも歌でなど、前代未聞です」
「はっはっは。それは素晴らしい! 高貴な生まれで聖属性魔法にも長け、その上、歌で皆を癒すなど……まさに聖女に相応しいではないか!!」
王子が高らかに嬉しそうに宣言した。
けれど、その宣言に、浮かれていた彩斗は我に返る。
(聖女だなんて認められてしまったら、絶対色々面倒だわ! このまま異国の王子で押し切ってなんとか乗り切らなくちゃ……!)
一方、嬉しそうな王子の隣で、ギルネオはとても気まずそうにこちらをチラチラ見ている。
ギルネオからの期待(?)もあり、彩斗は気を取り直して、先ほどの作戦を再開することにした。
「おい、さっきから何を勝手に、話を進めている。私のことは無視か。人のことをじろじろと……しかも、聖女だと? この私のどこを見てそう申すのだ。明らかにおかしいであろう」
彩斗の言葉に、王子をはじめ、すべての人間が再び一斉に台の上を見た。
(言い過ぎたかしら……でも、これくらいしないと、きっとなし崩しにされてしまうわ。この衣装だし、きっと信じてもらえるわよね……?)
「ああ……そなたは声も美しいのだな。芯のある少し甘さの残る声……まさに甘美だ」
(ええ!? 全然王子に効いてない!? 嘘でしょ!?)
見惚れたままの王子を誤魔化すように、ギルネオが慌てて彩斗に近づき声を掛ける。
「せ、聖女……いえ、聖人殿、失礼いたしました。わたくしめは宮廷魔導士をまとめております、ギルネオと申します。こちらはこの国の王太子であらせられる、ガリウス殿下です。あなたさまのお名前をお伺いしても……?」
――本当の名を明かすわけにはいかない。
どうやら西洋風の名前が主な世界のようだし、彩斗は芸名の下の名前のみを明かすことにした。
「私の名はアヤトだ。ところでここはどこなのだ? なぜ私はこのような場所に居る」
「……アヤト。不思議な響きの名だな。だが、そなたにはピッタリだ……」
ギルネオに答えたはずなのに、なぜか王子がうっとりしたままつぶやく。
またもやそんな王子を気にするなと言わんばかりに、ギルネオは続けた。
「アヤト様ですね。あなた様には、この国、バレンティアスを救っていただきたいのです。そのために、異世界より召喚いたしました」
(やっぱりここはお芝居とかじゃなく、本当に異世界なの……? しかも、私は聖女として召喚された? ……でも、なんで私なの!? よりにもよってこんな大事な日に……)
既に起こってしまったことではあるけれど、彩斗にとって最も大切なお披露目の日に召喚されたことに、怒りにも似たやるせなさが込み上げる。
ギルネオは恭しい態度で彩斗の返事を待っているようだけれど、現実だと突きつけられ、彼女はそれどころではない。
「……少々驚かせてしまったようで、申し訳ございません。ですが、私たちにとってアヤト様、あなた様は唯一の救いなのです! どうかそのお力をお貸しください!!」
ギルネオの言葉に合わせるように、周りにいる魔導士や騎士たちが一斉に彩斗に向かって片膝をつき、首を垂れる。
その姿に彩斗の混乱が深まった。
(いやいやいやいや、何この状況? 異世界!? 聖女!? そんなのあり得ないわよー! やっぱり私ったらお披露目に緊張しすぎてなかなか寝付けなかったから、実はきっとまだ夢の中なのよ。だったら早く起きなきゃ!!)
早く目覚めようと、彩斗はおもむろに両手で頬を思いっきり叩いた。
皆が跪き、静まり返っている中で、頬を叩いたその音は思いの外よく響き渡る。
その途端、誰かの手が彩斗の手を優しく包んだ。
「アヤト殿!? 急に何をするんだ!? 怪我をしたらどうする!」
声の主を見ると、ガリウス王子が彩斗の手をさすりながら心配そうに見つめていた。
自らの手を包む大きな手を不思議そうに彩斗が見ていると、その手が彩斗の頬に触れる。
温かく大きな手に、彩斗の心臓が大きく跳ねた。
(て、ててて、手が……!!!?)
手と手が触れることには特に何も感じなかった彩斗だけれど、顔に触れられるのは話が違う。
普段、女性の頬に触れ、熱い視線で甘く囁くのは彩斗のほうで、自分がされたことなどこれまでない。
突然の出来事にテンパった彩斗から、悲鳴にも似た声が上がる。
「さ、触るな!」
なんとか平静を装い、彩斗はその手を振り払う。
けれど、手を払われたことなどまるで気にしない様子の王子は、柔らかな笑みを彩斗に向けたまま離れようとしない。
それどころか、彩斗の顔をじっと覗き込んできた。
「アヤト殿の瞳の色は薄い黒……? いや、紺色か? 珍しいな」
彩斗は日本人ではあるものの、珍しい紺色をしていた。
母方に西洋血筋が入っているらしいけれど、明るい場所で見ると青にも見える。
普通西洋がモチーフの舞台では、皆カラーコンタクトをするのだけれど、彩斗はいつもコンタクトは入れず、裸眼で通してきた。
じっくりと瞳を覗き込みながら、王子は再び彩斗の頬に手を添え、さらに顔を寄せる。
(ち、ちち、近いっ……!!)
「あなたの瞳は不思議な色をしている。漆黒のような、深い青のような……思わず吸い込まれてしまいそうだ」
ほう、とため息をつくように見つめられ、離れなくてはと思いながらも、ガリウス王子の薄い琥珀色の瞳がじっと彩斗を見つめて放してくれず、どんどんその瞳に吸い込まれるような気持ちになってくる。
(綺麗な瞳……とろけた蜂蜜みたい……)
うっかりそう思いながら見つめてしまい、互いの額がもう少しで引っ付きそうな距離になっていると気づき、慌てて身体を離す。
すると王子は一歩下がって跪くと、彩斗の手を恭しく取る。
手の甲を口元に寄せ、そのまま顔を上げると、真剣な眼差しを彩斗に向けた。
周りが一斉に息を呑む気配を感じる。
静まり返った空気の中、王子が口を開いた。
「アヤト殿、あなたの美しさに私は撃ち抜かれてしまった。私と共に生きてほしい。叶うならば、私の伴侶になってくれないだろうか……!」
「え…………」
フリーズしたまま王子をじっと見る彩斗をよそに、見守っていたはずの外野から、悲鳴にも似た叫び声が一斉に上がる。
「ええええええええええーーーーー!?」
出会って数分の突然のプロポーズ。
一堂の叫び声が響き渡った後、皆が固唾を飲んで、その返事を待った。
ところが……
「兄上……?」
突然静まり返った部屋の扉が開き、ガリウス王子によく似た、十代半ばくらいの少年が姿を現す。
「ちょっと、これはどういう空気? ところで聖女は召喚できた、の……!?」
彩斗を見るなり少年は目を見開いた。
「おお! ヴォルフやっときたか!」
少年の声に跪いたまま振り返ると、ガリウス王子は笑顔で声をかける。
けれど、ヴォルフと呼ばれた少年は固まったまま動かない。
その様子にようやく我に返った彩斗は、先ほどまでの光景を思い出し、あまりの出来事に頬をつねる。
(夢……じゃない。いったい今のは何!? え、私、求婚されたの!? いやいやいやいや、出会って数分よ、数分! あり得ないでしょ! しかも王子でイケメンよ? そんな夢物語みたいなことある? その上私今、こんな格好で男演じてるのに全く通じてないとか、やっぱりおかしいって!!)
内心慌てふためきながらだんだん論点がずれていることにも気づかないでいる彩斗をよそに、固まっていた少年が口を開いた。
「兄上。この方が聖女、だと?」
「ああそうだ! アヤト殿と仰る。実に美しい方だろう? 私など出会ってすぐ求婚してしまった」
頷きながら立ち上がると、ガリウス王子は嬉しそうに彩斗を弟に紹介する。
けれど、弟の表情はなぜか険しくなった。
「聖女? 何を言ってるんだ兄上! どっからどう見ても男じゃないか!!」
「こんなにも美しい方を前にして、なんてことを言うんだヴォルフ!」
「でも!」
ところが、二人の言い合いに割って入るような形で、扉の向こうからふわふわした雰囲気の、いかにもお姫様然とした十歳くらいの少女が現れた。
「兄様〜〜待ってくださいと言いましたのに〜〜」
「アリスティア……!」
二人の兄が同時に振り返ると、アリスティアと呼ばれた少女が頬を膨らませる。
「もう、ヴォルフ兄様ったら、置いていくなんて酷いですわ。で、ガリウス兄様、聖女は無事に召喚できましたの?」
「ああ、もち」
「それが、聖女じゃなく、聖人を召喚したみたいなんだよ!」
「聖人様……ですの?」
そう言いながら、アリスティア王女はゆっくり彩斗に近づいてくる。
そして、彩斗の顔を見た瞬間、アリスティア王女はなぜか両手を繋ぎ合わせ、天に向かって祈り始めた。
「イケメンきたーーーーーー!!!」
その瞬間、事情を知っているであろう王子たちや古参の騎士たちは遠くを眺め、それ以外の者たちは目をキョロキョロさせる。
彩斗本人は、トップスターなだけあって、この手のファンには慣れていた。
(こういう子……私のファンにも何人かいたわね……)
ふと懐かし気にそんなことを思う彩斗を尻目に、王子たちの間で彩斗の取り合いが始まる。
「兄様、兄様!! 聖人様でしたら、王族との結婚が義務ですわよね!? でしたら、わたくしのお婿さんってことで間違いありませんわよね? ね?」
「いいや、アヤト殿は私の伴侶になる方だ!」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら大きな兄たちにアピールするアリスティア王女に、ガリウス王子は大人気なく言い切る。
「まあ、ガリウス兄様、酷いですわ!!」
「歳の頃合いを見ても、アリスティアとは離れすぎているだろう? 私がちょうど良いのだ。何より私は一目見てアヤト殿を伴侶に迎えると決めたからな」
「ず〜る〜いですわ〜〜!!」
文句を言いながらガリウス王子をぽこぽこ叩くアリスティア王女に微笑ましい視線を向けていると、いつの間にかすぐそばまで来ていたヴォルフ王子と目が合った。
近くまで来たことで、彼の身長が彩斗とさほど変わらないことに気づく。
「ねえ君、君が美しいのは認めるよ。それに近くで見ると、割と華奢だよね? どっちなのかな……? まあ、僕としてはどちらでも良いけどね。うちの王族はね、みんな美しいものが大好きなんだ。ふふ」
不敵な笑みを浮かべながらそんな意味深な言葉を残し、ヴォルフ王子は部屋を出て行った。
残されたのは、いつまでも言い合いを続けるガリウス王子と妹姫。
こうして、彩斗の前途多難な異世界での聖女生活が始まったのだった。
◇ キャラ設定 ◇
一式 彩斗【いっしき あやと】
白百合歌劇団百合組トップスター。本名は西本彩子。年齢は秘密。
トップお披露目の日にいきなり異世界に聖女として召喚され、王太子であるガリウスから求婚される。
ガリウス・バレンティアス
バレンティアス王国王太子。28歳。
国の瘴気を払うため、聖女召喚の指揮を執る。
美しいものが何よりも好き。召喚されてきた男装姿のアヤトに一目惚れし、速攻で求婚。
これからもぐいぐい行く気満々。
ヴォルフラム・バレンティアス
バレンティアス王国第二王子。17歳。
年の離れた兄を尊敬している。疑り深く、あまり他者を信用していない。
美しいものが大好き。少しナルシストの気がある。
アリスティア・バレンティアス
バレンティアス王国第一王女。10歳。
結構なブラコン。時々ガリウスの子どもに間違えられる。
王家に生まれた待望の王女で、猫可愛がられて育ったため、少し我儘。
例にもれず、美しいものが大好き。特にイケメンに目がない!
ギルネオ・フラーベル
筆頭宮廷魔導士。聖女召喚の魔導士責任者。ガリウスの師でもある。
ガリウスに普段から振り回されがち。
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お読みいただき、ありがとうございました。
ずっと書いてみたかった、男装の麗人モノでした。
ラブコメの冒頭のような感じですが、楽しんでいただけていましたら、幸いです。
よろしければ、★★★★★で評価などいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。




