第一話「気まぐれと成り行きで奴隷の少女を助ける羽目になった」
はじめまして。 あだしの悠華と申します。 これまで紙モノの同人誌で小説を書いていましたが、今回初めてこちらに投稿することにしました。 初めての事なので勝手がわからず、色々とお見苦しいこともあろうかと存じますが、初心者という事で大目に見ていただければ幸いです。
できれば時々挿絵を入れていきたいと思います。
一応R15指定にしますが、エロは期待しないでくださいな。
すぐ近くで大きな音がした。
そちらを見ると石畳の地面に大量の瓶が転がっている。
中には瓶が割れて中身がぶちまけられたものもある。
「このガキ! 何してやがる」
大声で怒鳴りつける男の声。
声の主は先ほどから奴隷を叱咤して荷物を運ばせていた奴隷商人の大男だ。
そのすぐ手前に、倒れている小さな人影が見える。
子供か?
いや、そうではなくて小柄な若い女らしい。
「この荷物がいくらするか分かってるのか!」
奴隷商人の男はそう言って、立ち上がろうとしている女を再び蹴り倒した。
その女・・・というよりも少女と言ったほうがいい女は路面に突っ伏した。
だが一言も詫びや悲鳴を上げない。
後ろで無造作に結んだ長い髪が乱れて顔にかかっている。
そのため表情は読み取れない。
しかし、むき出しになった手足の汚れ方から想像すると顔も相当薄汚いのだろう。
「サイリ! なんとか言え! 泣いて謝ったらどうだ」
この少女はサイリというのか・・・
奴隷にしては何となく品の有る名前だ。
俺はこの弱々しい少女をいたぶる奴隷商人の男に嫌悪感を覚え始めていた。
「お前にはまた仕置きが必要なようだな。 よし、こっちへ来い」
奴隷商人の男はサイリの髪を掴んで俺がいる広場の中央近くまで引きずってきた。
「どうなるか分かってるだろうな」
男は思わせぶりにそう言うと、サイリの着ている草色の奴隷服に手をかけ一気に引き裂いた。
元々ボロボロに着古されていた奴隷服は簡単に裂けて、白い背中がむき出しになる。
やはり、奴隷服の下には何も着ていない。
もうじき冬を迎えるこの地方で素肌に粗末な奴隷服一枚だけ・・・
これはひどくこたえるだろう。
サイリは無言で石畳にうずくまったままだ。
「ドランの旦那、これを使いなよ」
取り巻きの一人が奴隷商人に硬そうな鞭を手渡す。
「何も言わねえなら言わせてやるぞ!」
ドランと呼ばれた奴隷商人は手にした鞭でサイリの背中を打ち据えた。
情け容赦のない一撃にサイリの顔が苦痛に歪む。
しかし、サイリは悲鳴をあげるどころか歯を食いしばって男を睨みつけた。
驚いたことに、その顔には怯えも諦めもない。
「こ、このガキ! お前はいつでも王女様気取りか?
そうやって何も言わずに我慢していりゃじきに俺の方が飽きてくると思っているんだろう!」
「だが、今日は違うぞ、おい奴隷ども」
そう言ってドランは他の奴隷たちを見渡す。
「生意気に反抗するやつがどうなるかしっかり見ておけ」
ドランはそう言うと再びサイリの背中を鞭打つ。
二回
三回・・・
打たれた場所はたちまち血が噴き出して背中一面が真っ赤に染まる。
仕置きにしては度が過ぎているが残酷なシーンならもっと凄まじいものをいくつも見てきた。
しかし、このサイリという奴隷少女・・・
こいつの並外れた我慢強さがなにか気になる。
同時に、これを見世物のように面白がっている連中にもムカついてきた。
「へっ、へっ、へっ、旦那、いいものを持ってきましたぜ」
また別の男がそう言って取り出したのは大きめの酒瓶だった。
こいつはさっきまで俺の近くで飲んだくれていたろくでなしだ。
「こいつはこの店で一番強い酒だぁ。
その傷だらけの背中を消毒してやるからありがたく思えよ」
男はそう言うなり、サイリの背中に酒瓶の中身をかけ始めた。
これだけの傷へ強い酒などかけられたら、屈強な男でさえも悲鳴をあげて転げまわるところだ。
サイリは目を見開き、大きく口を開けてのけぞった。
しかし荒い呼吸はしているものの、呻き声一つあげない。
これにはさすがの俺も驚いた。
と同時にこの痩せて小柄な奴隷少女がなにか只者ではないような気がしてきた。
そして、あの日の光景が脳裏をよぎる。
凌辱された挙句惨殺された二人の遺体・・・俺の母親と姉だ。
ただのムカつきが強烈な怒りに変わってきた。
「ふん、あきれた我慢強さだな。
だが、今日こそはお前が悲鳴をあげてのたうち回るのを見るまで止めないからな」
「覚悟しとけ!」
ドランはそう言って腰に着けていた小さな袋から妙なものを取り出した。
それは先が奇妙な形に曲がったナイフのようなものだった。
「サイリ、よく見るんだな。 これが判るか?」
「これはハレスの実の皮を剥ぐ道具だ。
今からこれでお前の体中の皮を剥いでやる」
「どこまで剥いだら悲鳴をあげるか楽しみだな」
ドランは既に半分正気を失くしたような表情でサイリの髪を掴み上げた。
「まず、どこから剥いでほしい? 顔は最後にしてやるか?」
そう言ってサイリの肩甲骨のあたりに皮剥き器の刃を押し当てた。
俺の怒りはそろそろ制御できないレベルまできていた。
自慢じゃないが俺の自制心は羽根のように軽い。
ほんのそよ風が吹いただけで簡単にどこかへ飛んで行ってしまう。
そして今、俺の胸の中には暴風が吹き荒れ始めていた。
俺は椅子を蹴飛ばして立上り、大声で怒鳴った。
「いい加減にしろ! このクソ野郎ども!」
--以下第二話に続く--




