第4章 部長の反撃 (4/6)
「事実です」
反論は、受け付けません。
「佐伯、ちょっと来い」
来た。
呼び出し。会議室B。処刑部屋とも呼ばれる小部屋だ。
(昨日の冷凍チャーハン、油きつかったな……こんな日に限って胃が重い)
扉を開けると、黒田部長が腕を組んでいた。赤いネクタイがやたら主張している。
「最近、好き勝手やってるな」
「業務効率化です」
「屁理屈だ。若手が帰れば空気が緩む!」
「空気で売上は上がりません」
沈黙。
部長の机を叩く音が響く。
「やる気がないのか!」
「あります」
即答。
「だから改善してます」
部長が立ち上がる。腹が机に当たる。ドン。
「俺の若い頃はな!」
(始まった。武勇伝タイム。全社会議より長いやつ)
「終電で帰るなんて甘えだ!」
「終電で帰るのは、効率が悪いからです」
俺は前髪をかき上げる。癖だ。
視線は逸らさない。
そのとき。
「失礼します」
美咲が入ってきた。
「会議室、予約されてます」
ナイス侵入。
「ちょうどいい。田中、お前もだ」
部長は鼻を鳴らす。
「数字遊びで現場が回ると思うな」
美咲は静かにPCを開いた。
「遊びではありません」
彼女がくるりとノートPCをこちらへ向ける。
液晶に映るグラフ。
・残業時間 −32%
・売上 +12%
・案件処理速度 +十八%
「事実です」
会議室が静まる。
部長の顔が赤から紫に変わる。
「……だがな」
低い声。
「上は“熱量”を見る。数字だけじゃない」
(精神論きたな)
「なら、上に見てもらいましょう」
俺は言った。
「全部」




