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それ、今日やる必要あります?  作者: OwlKeyNote


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2/6

第2章 ドンキホーテと… (2/6)

ちょっと待て。俺ひとりで突っ走る予定だったんだが?

――その無謀、隣で手を貸す共犯者が現れた。


翌朝。


俺は会議中、メモを取るふりをしながら業務改善案を書いていた。


・無駄会議を30分短縮

・タスク可視化

・メールテンプレ統一


やれること、全部やる。


(風車に突っ込む騎士だな、俺)


部長がホワイトボードに「成長」と書く。


(成長って書けば、睡眠不足も自己投資扱いになるらしい)


息を吐いて、ペンを置く。


(言うなら、今だ)


俺はゆっくり立ち上がる。


「……時間の使い方、見直しませんか?」


空気がぴたりと止まる。

赤いネクタイが、わずかに揺れた。


「若いなぁ……」


出た。回想モード突入。


「データで証明できます」


横から、女性の声が上がる。


田中 美咲が立ち上がっていた。


……は?


俺は一瞬、呼吸を忘れる。


(今、助けたのか?)


プロジェクターに映るグラフ。

総労働時間と生産性の推移。数字が冷静に殴っている。


「過去3年間、労働時間と売上は連動していません」


会議室が静まる。


(ちょっと待て。俺ひとりで突っ走る予定だったんだが?)


横目で見ると、美咲は真顔。だけど指先がわずかに震えている。


共犯者、確定。


その日、俺は18時きっかりに立ち上がった。


心臓がうるさい。


「お先に失礼します」


空気が、わずかに張る。

だが、誰も止めない。


(定時退社でこの罪悪感、俺、会社のサーバーでも持ち出した?)


一歩踏み出すたび、背中に視線が刺さる。


エレベーターに乗り込んだ瞬間、どっと汗が出た。


(やっちまった、

すでに送別会の居酒屋予約とかされてないよな?)


扉が閉まりかける、その時。


「待ってください!」


――え。


扉の隙間から手が差し込まれる。


俺の心臓が一瞬止まる。


美咲が駆け込んできた。息が少し上がっている。ショートボブが揺れて、頬が赤い。


「……乗ります」


俺は思わず笑いそうになるのを堪えた。


「てっきり、残るかと」


「データ、出した側が残業してたら説得力ありません」


真顔。だけど目が少しだけ柔らかい。


正直――助かった。


さっきまでの勇気が、急に現実味を帯びる。

ひとりだったら、たぶん今ごろ罪悪感で胃がキリキリしていた。


「……心臓、うるさいです」


彼女がぽつりと言う。


「俺も」


沈黙。

エレベーターが一階に着く音が、やけに大きい。


ビルを出ると、まだ空は明るい。


18時の空。


(明るい時間に外にいるだけで、なんか人生ちゃんとしてる気がするの単純すぎないか?)


「あの……」


美咲が少しだけ距離を詰める。


「コーヒー、飲みます?」


それは業務報告か?

作戦会議か?

それとも――


俺は腕時計を見る。18時07分。


「行きましょう」


今日は、まだ一日が終わっていない。


そしてなにより――

ひとりじゃないのが、こんなに心強いなんて知らなかった。


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