ドリームサンタ
五作目です。プロトタイプのような作品ですが、こんな設定で物語を作りたいなと思い書いてみました。
かなり短いのでぜひ読んでみてください。
「ハア、ハア、ハア……」
12月24日、クリスマスイブ。
某国のスラム街に位置する路地裏で、少女は生死を彷徨っていた。
白く輝く雪は、無情にも“生者”である少女の命を凍てつかせる。
「さむい……おなかすいた……おうちに、かえりたい……」
流す涙も冷え切ってしまった少女は、痩せ細った体を弱々しく丸め込みながら必死に生きようともがいていた。
「サンタさん……プレゼントはいらないからおねがい……たすけ……て……」
薄れゆく意識の中、少女は夢を見る。目覚めたら暖かい暖炉がある家に住んでいるのだと、そう願いながら……。
*
「ぎゃああああ!! 痛ってええ! クソがクソがクソが! クソ野郎がああああ!!」
「もう嫌だ! なんで見ず知らずのガキのためにこんなことしなくちゃならないんだよ! こんな惨めな死に方あんまりだ!」
漆黒の灰燼が空を覆う世界で、“死者”たちはその身を真っ赤に染めながら異形の怪物に立ち向かっていた。銃やナイフを振るう戦場には、命乞いと悲鳴が後を絶たないでいた。
「怯むな! 目の前の敵を殲滅し続けろ! 我々は生前侵した罪も償えず人々に不幸をばら撒いてきた屍だ! だが今、こうして“サンタ”として迷える子羊たちに幸福を与えられるかもしれないのだ! たとえ再び死する時が来ようとも、この少女を蝕んでいる悪夢を駆逐しなければならない! 我々は普通のサンタとは違う! しかし、だからこそ、残酷な運命を蹴散らし、生きる運命を送り届けることができるのだ! 生にしがみつく全てのチルドレンに愛を! 希望を! そして光を!」
全体の士気を上げたサンタは前線に戻り、悪夢という名の怪物たちに刃を向けた。
一人の死者は祈りを掲げ、懺悔する。殺人を犯した自らの業を。
一人の死者は懇願し、救いを求める。不慮の事故で起こった責任に背を向けながら。
一人の死者はナイフを握り締め、戦いに身を捧げる。己の罰を受け入れ、罪を償うために。
*
暖かい光に照らされながら、少女は目を覚ました。柔らかいものに包まれてる感触を確認しながら身体を起こすと、それは暖炉の炎だと気付いた。目の前には白い髭を生やした老人が椅子に座っていた。
「おお目が覚めたかい。いやあ良かった。街に食材を買い出しに行ってた時に偶然君を見つけてな。本当に奇跡だったよ」
「……サンタさんだ」
「ん?」
「夢の中でサンタさんが私を助けてくれたんだ! 血まみれになって、でもいっぱい頑張ってくれて! きっとそうだ! ありがとうサンタさん! おじさんも大好き!」
「え? ああ、うん、どうもありがとう」
自分を助けてくれた老人に抱きつきながら、少女は大粒の涙を流した。涙はもう冷え切ってなかった。
「サンタさん! 素敵なプレゼントをありがとう!」
*
「 」
虚空に声が響く。けれどそれを聞き届けるものは誰もいない。
識別個体名:サンタクロース。
絶望の運命を打ち砕き、子供たちに希望の運命を送り届ける使者。
彼らの存在は、誰も知らない。
終
読んでくれた皆さま、そうじゃない皆さまもあとがきを読みに来てくれてありがとうございます。
サンタが血みどろに戦う姿を描きたくてこの内容を思いついたのですが、読み返してみると結構設定がふわっとしてるな〜と自分でも思ってしまいました。
この小説のアプデ版を書くのかはわかりませんが、気長に待ってくれると助かります。




