ずっと一緒だよ
夕焼けに染まる教室、少し湿った風が私の頬を撫でる。
「葵、帰らないの?早くしないと校門しまっちゃうよ。」
梨良が私を急かす。本当に可愛らしく、愛おしい。私が恋する人。しかし、そんな彼女の笑顔とは裏腹に私は憂鬱を感じていた。だって今日も今日とて恒例のアレに耐える時間が始まるのだから。
「ねぇねぇ葵!今週の土曜日さ、お揃いの服でも買いに行こうよ!」
梨良は特大の笑顔をこちらに向けながらそう言った。だが、私はその言葉を素直に喜べなかった。
「その日は彼氏くんの誕生日でしょ?一ヶ月も前から盛大にお祝いするんだって張り切ってたじゃん。」
そう、梨良には付き合って3ヶ月の彼氏がいるのだ。これが私の絶えなければならない時間。愛する人からの惚気話だ。しかし今日はいつもと様子が違う。
「あれ?そうだっけ?まぁいいじゃん。ね、葵。土曜日一緒に遊ぼうよ?」
「うっ、も、もちろん」
しまった、また反射で許可してしまった。だが、彼女の上目遣いに耐えることができる人間などこの世に居ないのだろう。
呑気に梨良のことを考えていた私はこのときの異常なほどに歪んだ彼女の視線に気づくことは出来なかった。
次の日の夜。
明日は梨良とデートかぁ、、、ちょっと気合い入れちゃおうかな。
いや梨良は私なんて興味ないか。彼氏くんにも悪いしやっぱり断ろう。
「梨良ごめんね。土曜日なんだけど急用が入っちゃって、いけないや。また誘ってね」
よし。これでいい。これでいいんだ。だから、泣くな、私。梨良のことなんてわすれて新しい恋をするって彼と約束したんだから。
ピロンッ
あ!葵から連絡だ。なんだろう?明日の日程かなぁ、、、は?急用?梨良よりも大事な?あり得ない。だって葵は梨良のことが好きで梨良はこんなに葵を愛してるのに?なんでずっと一緒にいてくれないの?梨良知ってるんだよ?部活の男の子と仲良さそうに歩いてたの。なんで?葵は梨良のものでしょう?
あ、、、、、そっかぁ、、、、
初めからこうすればよかったんだ。
ピンポーン
あれ?今日は誰も来ないはずなんだけどな。
「はーい。今開けまーす」
ガチャ
「あれ?梨良?」
「やっぱり急用なんてなかったんだね葵?」
なんだ様子がおかしい。
「どうしたのいきなり。梨良っ」
言い切る前に何かを顔にかけられる。
「葵がわるいんだよ」
意識が遠のく。私が何?意識を手放す前に見えた梨良の目は冷たく私は初めて可愛い梨良に怖いという感情を抱いた。
頭が痛い。ここはどこ?ジャラッ 鎖?服も私のじゃない。どのぐらい時間が経ったんだろう。窓も鉄格子で塞がれてる。今が朝か夜かもわからないし、ここからは出られそうにない。
「梨良!いるんでしょう?なんでこんな事するの?」
…返事がない。この部屋にはいないのだろうか。あぁ、また眠くなってきた。
ガシャン
「かわいい私の葵。もうここからは出られないし、私からも離れられないね。私の彼氏の話にも騙されちゃって。本当にお馬鹿さん♡あぁ、でも私の代わりに彼氏なんて作ろうとするからわるいんだよ?だからこれでもう…
ずぅっと一緒だね♡?」