第ニ刀「加入試験」
「い、今の!どうやったのでしょうか?スワードさん!?」
期待を含んだ目でこちらを見てくるリレイ。
そんなこと言われてもわからない。
「すごいです!これなら大活躍間違いなしですね、早速私たちのギルドに行きましょう!」
リレイは抉れた森と黙っている俺を他所に、テンションがぶち上がっている。
対する俺はテンションがぶち下がってきた。
「リレイ。あの……この森って、壊しても平気なとこだった?(事後報告)」
「?ええ、だって私ここに木材の採集クエストで来たので……あ、忘れていました!」
トテテ、と抉れた地面の方へ走って、色々拾ってきた。
俺は何取ればいいのかわかんないので傍観。
「かけらがひぃ、ふぅ、みぃ……はい!採集クエストクリアです!」
「よかった。じゃあ行こうか、『運命の羅針盤』に」
何もしなかった俺は彼女の顔を見れないが、それでも歩き始める。
そうして大体歩いて50m。
「……スワードさん、ギルドは逆方向です!」
「絶対もう少し前に言えたなぁ!?え何目の前に海あるのに『50m先、直進です』って指示してくるカーナビくらい酷いことしてるからね!?」
50m8秒の全力ダッシュ。
……驚きすぎて異世界にない言葉が出てくるのはご愛嬌である。
「すみません。もしやあちらに何かいい感じの木の棒を見つけたのかと思って」
「登校中にいい感じの木の棒を剣として使う小学生に見えるか俺」
気を取り直し、今度はちゃんとリレイについていく。
こうして俺たちはギルド『運命の羅針盤』への歩みを始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「つきました!」
「ここが……運命の羅針盤」
ついたのは2階建ての古びた屋敷。
どうぞー、とリレイに言われて中に入る。
「おおー!すごい」
外観と違って、内装は隅々まで清掃されている。
とても綺麗で、貴族の屋敷みたいだ。
「少しそこで待っていてください。今ギルドマスターを呼んできます」
そう言って彼女は二階に上がっていってしまった。
……借りてきた猫の気持ちというのはこういう感じなのだろう。
うん。
……地の文で話すことなくなってきたな。
「すみません、お待たせしました」
階段を降りる音とリレイの声が聞こえて、顔を上げる。
「……何していらっしゃるんですか」
「泥の部分を床に付けずに全力でリラックスする方法考えてた」
具体的には三点倒立。
デメリットは頭に血が上ること。
「とーう!そんな君には『洗浄』!これだけで服の汚れも心の汚れも洗い落とせるゾ♡」
どこからか現れたお姉さんに、いきなり魔法を使われて服が綺麗になった。
新手の通り魔?
「100万」
悲報:本物の通り魔だった。
俺に『洗浄』使う前にお前の心に使えや!
「もう、ギルドマスター!ふざけるのはやめにしてください。おかずの量少なくしますよ」
「なぬ!?」
「……へ?」
状況がよく飲み込めず突っ立つ俺。
リレイはため息をついたのち、『ギルドマスター』と呼ばれた女の人を睨みながら説明してくれた。
「この方はここのギルドリーダー『オリネ・ハートレット』です。たった今私からの信用度が10%減りました」
紹介された女の人は、橙色の長髪をなびかせながらこっちを向いた。
「よろしくね!オリネちゃんって呼んでね!後おかずは君の分から所得税として貰っとくから!」
「オリネさん!」
少量の電撃をオリネ…ちゃんに流すリレイ。
それを彼女は「あ〜肩こりが治る」と言って軽く受け流していた。
……俺よりキャラ濃くない?
「どうも、俺はスワードと申します。ここのギルドに入りたいんですが」
「……200万」
「200万!?」
200万に跳ね上げられた。
もう少し印象に残る挨拶が良かったか……。
「んんっ。はい、ということでオリネさん。こちらの方の加入を」
「ちょいまち、リレイちゃん」
加入を促すリレイの言葉を遮るオリネちゃん。(慣れてきた)
そして、俺の方をじっと見つめている……。
と思えば、急にこんなことを言い始めた。
「よっし、入隊?入団?まあいいや加入試験を行いまーす!」
「オリネさん!?私たちの時そんなのなかった……」
「はいはーい、ストップ。たまには趣向を変えようってことよ!じゃあついてきて、スワードくん。リレイちゃんはここにいてね!」
ついてきて、と手でジェスチャーをされ言われた通りにする。
そうして屋敷を出て、裏手の大きな建物に入った。
中には少しの訓練用武器がちらほらある。
「ここはうちの修練場。結構暴れても平気だから安心して」
そう言って立ち止まり、こちらを振りかえるオリネちゃん。
加入試験って、実力を見る的なことなのだろうか?
「単刀直入に聞くよ。さっきの轟音……森を抉ったのは君だね?」
まずい。
「アッハハハハ!いや別に咎めようとはしてないよ。あれはバレなきゃ平気平気。私が聞きたいのはその前段階。森、どうやって抉ったの?」
訓練用の木の剣を放り投げられ、慌ててキャッチ。
「私に見せてよ。君の実力」
……やり方わかんないのに!?
頭の中がフル回転で動く。
できるだけあの時を再現しようと思い出す。ついさっきのことだ。
そうだ、俺は今までの恨み辛みを乗せて……抜刀術を使った。
「……抜刀術」
型を再現する。
腰を低く、剣を納刀して……ただ断つもの一点に集中する。
「オリネちゃん、行きます」
足を踏み込み、捻りを加えて、全力で振る!!!
「抜ッ刀ォ!!!!!」
振り抜いた。
同時に、ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガァン!!!!!という轟音が響く。
砂煙がすごい。
「ケホっ、ケホっ……え、オリネさん!じゃない、オリネちゃん大丈夫ですか?」
「……」
返事がない。が姿はかろうじて見えた。
慌てて駆け寄って……。
修練場の壁に、斬撃みたいな斜めの穴が空いていた。
「あ」
これは、修繕費のパターンか。
あるいはギルド加入拒否パターンだろうか。
縋るような目で固まっているオリネちゃんの顔色を窺っていると、突然彼女が口を開いた。
「君、今のって……抜刀術だよね。どこで習った?」
さっきまでのおちゃらけがない、静かな言葉。
そんなに気になるだろうか。
「父の剣技なんです。途中で家追い出されちゃったし、ギルドでも修行できなかったけど……この動きだけは練習していたんです、16年!」
「16、年?」
「はい、一才の頃から剣をこの型で振っていたらしく……今は一日2000回くらい振ってますかね。その時はこんな現象なかったんですけど。……で、修繕費の方は」
「…修繕費は後で伝えるよ……ともあれ、合格だ。うちのギルドにおいでよ」
よっしゃぁ!
まるで『あれ、俺なんかしちゃいましたか』という気分だぜ!
実際は建物を壊したので金を払う羽目になっているんだけどなぁ!?
「先に行ってて、多分リレイがこっちに来るだろうから説明もよろ。私はここ片付けてから行くぜぇ」
袖を捲ってやる気のオリネちゃん。
……まじで申し訳ない気持ちになるが、これ以上いても迷惑なだけだろう。
後ここれ失敗して費用を増やしたくない。
「じゃあ、失礼します」
俺は斜めの穴から出て、屋敷の方へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……あちゃー、これはすごいね」
修練場に一人残されたオリネは、残骸を見てつい声が漏れる。
ここの修練場は昔“初代勇者”が使用していた場所だと言い伝えられている。
作られた当時から一回も修復されていない。
それを、彼はただの斬撃でぶち抜いてしまった。
「でも彼は勇者じゃない」
瓦礫を自身の魔法で片付けながら、そう呟いた。
今代の勇者はあの子……ならあれは一体?
疑問とともに、時間がすぎてゆくのだった……。




