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第一刀「追放されてカブになった男」

「スワード、もういい。今日でお前はクビだ」


早朝にA級ギルド『銀狼の咆哮』の掃除にきた俺に告げられたのは、そんな言葉だった。


「へ……クビ?ど、どうして?」


震えた声で、発言者……ギルドマスターに問う。

この人とは付き合いも長い。

魔法が使えないため10歳の頃、家族から捨てられた俺を助けてくれた恩人でもある。

そんな人がいきなりこんなことを言うなんて……。


「なぜ?単純だ、“いらなくなった“からだよ」


は?

いらない?


「そうだそうだ!おめえこの7年間ずっとギルドの雑用しかできてねえくせに!」


「バカだよねぇ、こいつ。どーんな奴でも必ず一属性持ってる魔法も持たないのに、冒険者になれると思ってんのか!?」


「いやー、今までご苦労さん家事妖精ブラウニーくん。後はメイドさんを何十人も雇うから、バイバーイ」


周りにいる『銀狼の咆哮』メンバーの冒険者たちも俺をばかにし始めた。

味方は一人もいない。


「待ってくれよ、ギルドマスター……いやケイトおじさん!一緒にS級冒険者になって魔王を倒そうって約束したじゃないか!?」


必死に訴えかける……が、そんな言葉は知らないと言わんばかりに鼻で笑われた。


「アホが。このA級ギルドにはお前の居場所はない!S級?ふざけるな、貴様のような雑魚をどうして連れていかなければならない!……見ていてイライラする。おいボーンズ、こいつをつまみ出せ」


そうしてケイトに呼ばれたのは、『銀狼の咆哮』一番の力持ち、ボーンズ。

俺の胸ぐらを掴み、入り口まで持っていってしまう。

必死にジタバタ抵抗するが、意味をなさない。


「帰ってくんなよ、間抜け」


そのまま外に放り投げられ、ドアを閉められてしまった。

道を通る人たちの目線が冷たい……。

逃げるようにして、俺はとにかく走り出した。






「はぁはぁ……」


20分くらい、全力で走っただろうか。

周りを見渡すと、どうやら森の方まで走ってきたみたいだ。


「はぁーあ!7年無駄だったかー!」


地面に突っ伏して、仰向けになる。

……よくよく考えればアイツの『お前にまだ冒険者は危険だ』という言葉だけ信じて7年雑務やらされてたのか。

あれ、もしかして俺ってバカ?


「……バカだな」


空が滲んで見える。

……あそこにいれば、魔王を倒して捨てた家族を見返せると本気で思ってた。

そんな上手い話はなかったんだ。


「クソが」


悔しい。

悔しいはずなのに、立つ気力が出ない。

ただ、流れる雲を見つめて、このまま……。


「あのー、大丈夫ですか!」


突然、綺麗な空の景色は遮られ、代わりに負けず劣らずの美少女が目の前にカットインした。

金髪ショートでメガネをかけている。


「返答がありません。こういう時、どうすればいいのでしょうか……。僧侶の方もいない。はっ!(突然の閃き)私の電気魔法で!」


「だめだめだめだめ洒落になんない」


寝そべったまま両手でできる限りのジェスチャーで彼女を止める。


「よかった、生きてますね。……でも、どうしてこんなところで寝ていらっしゃるんですか?」


至極当然の疑問。

それに応えるべく(後ついでに近くの飯屋を聞くべく)立つ……あれ、立……。


結論から言います。

沼にハマりました。


「すみません初対面でいうのもなんですが助けてください起き上がれません」


「え、あ、はい!」


〜〜少女救助中〜〜


「た、助かったけど服が全ておじゃんになった……」


服が泥だらけになった。

背中はもちろん前面も隠せないレベルでついてる。


「でも命はあります。カブさんを助けれてよかったです!」


……へ?カブ?

問題の発言をした少女を見ると『あっ』という表情と共に慌てふためいている。


「あ、いえ……ですね、その助けているときに何か『大きなカブみたいだな』と思ってしまって、それでその名前のまま呼んでいたというか、はい」


どうも、美少女にヌかれたカブです。(自己紹介)

……というギャグを思いついたけどセクハラなんで頭の片隅に置いときます。


「あー、助けてくれてありがとう。名前は?」


「私ですか?私は『リレイ・ミデンス』と申します。気軽にリレイと呼んでください」


そう言ってニコっと笑う彼女……リレイ。

かわいい。


「あなたのお名前は?」


「俺?俺はスワード・アンシェ……いや、家名は無くなったんだった。スワードだ」


あぶねー、アイツの家名を名乗りそうだったわ。

ただのスワードです。


「スワードさん、ですね。それで、どうしてそんなところに寝そべっていたのですか?」


ピッ、と沼を指で示しこちらを見つめてくるリレイ。


「あー、面白い話じゃないけど……」


「いえ!すごい気になるので!」


そこまで言われちゃしょうがない。

ということで 俺は今日何があったのかを話し始めた……。


〜〜少年説明中〜〜


「というわけで、7年信じ続けたバカが俺ってこと」


「……」


リレイが黙ってしまった。

まあ人に話すようなことでもないし、自分にも落ち度はある。

……さてと、じゃあとっとと飯屋の場所だけ……いや先に洗濯場か?


「あの!」


考え事をしていると、リレイがこちらに声をかけてきた。

……少し、告白っぽい雰囲気である。

何か体がパキパキしてきた。(泥のせい)


「うちのギルドに来ませんか!?」


「え?」


「わ、私の所属しているギルド『運命の羅針盤』……あっ一番低いD級なんですけど、人手不足で。だから、来てほしいんです!もちろん、雑用係じゃなくて冒険者として!」


俺と目を合わせながら一生懸命喋るリレイ。


「あ、でも雑用っていうか家事はみんなで分担しなきゃなんですけど……きっと!前のギルドよりも良いとこだと思わせる自信があります!……加入、いかがでしょうか?」


そう言い切って、左手を差し出すリレイ。

……本当なら、心の傷も癒えてないし断った方がいいんだろう。

けど、強い思いに俺の沈んでた心を引き上げられてしまった。


「……ああ、よろしく!」


右手で握手しようとして……あることに気づく。

俺の両手は泥だらけ。

リレイの手は綺麗。(引き上げる時は手袋をしていた)

これ、だめじゃない?


「……もう!」


行方を見失った泥まみれの右手を、彼女の左手が握る。


「よろしくお願いしますね、スワードさん!」


「……ああ、よろしく」


ということで、俺は『運命の羅針盤』に入ることにした。

……折角なので、厄落としという言い訳で森に憂さ晴らしをしてから行こう。


「リレイ、そこら辺に木の棒ない?」


「?木の棒ですか……あ、ありますよここ」


どうぞ、と手渡しされた。

大体ショートソードくらいの長さだ。


当然だが、魔法を持っていない俺なので何も起きないことは知っている。

さっきも言ったけど、まあ厄落とし的な意味でやるだけだ。

スゥー、と息を吸って納刀の姿勢。


そこから。


「こんちくしょうめぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


木の棒を空気の鞘から抜刀した。

昔親父がやっていたものの見様見真似であり、いつも練習している動き。

そこに今までの恨み辛みを乗せただけのもの。

……のはずだった。


一瞬の静寂の後。

『ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガン!!!!!!』という音がして、森の一部が消えた。

木々は薙ぎ倒され、地面は抉れている。


「え、え……」


リレイは信じられない、という目で俺と消えた部分を交互に見ている。

対して。


「え……え、えぇ……」


俺もなんでこんなことができたのか、わかっていなかった……。

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