●55
宇宙人がくる。ノートパソコンを膝の上に広げ、真剣に語りつづける長谷川さんを見ながら、わたしは想像しようとしました。ですが未知すぎてなかなかうまくいきません。地球に未知の生命体が訪れたら、人類はどのように対処するのでしょうか。相手が侵略者ならば身を守るために争いも生まれるでしょうが、そうでなかった場合、いまの人類は平和的に接することができるのでしょうか。好戦的な種族を相手にするより、友好的な種族を相手にすることのほうが、事態はより複雑なのではないかと、わたしは思います。食べものや飲みものはどうでしょう。彼らの栄養はこの星のもので賄えるのか、あるいは彼ら自身で用意してきているのか。『宇宙戦争』で登場するインベーダーのように、地球の細菌は彼らにとって有害であったりするのでしょうか。彼らが乗ってきた宇宙船はどこに停泊するのでしょう。軌道上ならば問題なくとも、地表ならば南極でもない限り、醜い派閥争いが生まれそうです。我々人類の生活への影響はどうでしょう。訪問者たちの力の下にいまのような支配体制をつづけるわけにもいかず、国家は崩壊して異なる法や政治に置き換わるのでしょうか。新しい文明が持ち込まれ、新たな宗教が誕生するのでしょうか。わたしたちの日常は、永遠に姿形を変えてしまうのでしょうか。
長谷川さんといっしょに、金色のお菓子の空箱にリボンを飾りつけながら、わたしは考えつづけます。もしもわたしが宇宙人であったなら。そうだったなら、やがて地球を訪れる宇宙人との外交に駆り出されるでしょう。わたしは地球を代表して、彼らとの会談にのぞむ。わたしの言葉が、そのまま地球の言葉となる。相手がどんな種族であれ、意志疎通が可能なら、地球の代表はわたしが適任だと思うのです。地球人が相手のときよりも、わたしはのびのびと、健やかに会話をおこなえるでしょうし、わたし以上にUFOの存在を信じている女が、いったいどこにいるというのでしょう。彼らの存在をすんなりと受け入れられる人間が、わたしのほかにいるでしょうか。わたしは自分が宇宙人であったらと思います。そうすれば、この星にはヒースクリフのような人間もいるのだと、彼らに優しく説明することができるでしょうから。




