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☀️38

 そしてわたしは気づいた。わたしは自分の生活や未来のために生きれるような女ではないのだ。わたしの時間や労力は、そんなもののために消費されるようにはできていない。律子さんの苦しみを想うと、彼らの苦しみを想うと、胸になにか温もりのあふれたものが芽吹きはじめた。一度は折れたもの、壊れたものが、ふたたび力を取り戻す。わたしは彼女を支えるように語りかけた。


「たとえそんな日がくるんだとしても、わたしは律子さんを恨まないよ。律子さんはただ、だれかに助けてほしかったんだよね。ひとりじゃ抱えきれなくなってたんだよね。流れ星が永遠に見えなくなって、どうしようもなく悲しくなっちゃったんだよね」


 律子さんはうつむき、重ねられた手を見つめた。日が暮れて、夜の気配が窓の隙間から忍びこみはじめていた。


「あたしは大丈夫だよ」わたしは静かに言った。「ひとり暗く寂しい夜に、彼の声を聞いていると、心が落ち着くの。それにだれかのお話を聞くのって、あたしはいつでも好きなんだ。ほかのひとの目を通して、隠された世界の神秘を見るの。きっと物語がなければ、あたしは庭先のマーガレットを美しいと思うこともできないんだよ」


 律子さんは「ごめんね」とつぶやき、わたしたちはしばらく寄り添ったまま、お互いの温もりに身を浸らせていた。部屋が完全に夜に支配された頃、律子さんは立ち上がってわたしを見た。


「ほんとうに、無理はしないで」ささやくように彼女は言った。


 わたしたちは視線を交わしあい、お互いそこに穏やかな理解と緩やかな歩みを見た。律子さんは最後にもう一度微笑んでから部屋をあとにした。

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